十牛図 (Jugyuzu)
十牛図(じゅうぎゅうず)は、禅の悟りにいたる道筋をウシを主題とした十枚の絵で表したもの。
中国宋代の禅僧、廓庵(かくあん)によるものが有名。
以下の十枚の図からなる。
ここで牛は人の心の象徴とされる。
またあるいは、牛を悟り、童子を修行者と見立てる。
尋牛(じんぎゅう)
- 牛を捜そうと志すこと。
悟りを探すがどこにいるかわからず途方にくれた姿を表す。
見跡(けんせき)
- 牛の足跡を見出すこと。
足跡とは経典や古人の公案の類を意味する。
見牛(けんぎゅう)
- 牛の姿をかいまみること。
優れた師に出会い「悟り」が少しばかり見えた状態。
得牛(とくぎゅう)
- 力づくで牛をつかまえること。
何とか悟りの実態を得たものの、いまだ自分のものになっていない姿。
牧牛(ぼくぎゅう)
- 牛をてなづけること。
悟りを自分のものにするための修行を表す。
騎牛帰家(きぎゅうきか)
- 牛の背に乗り家へむかうこと。
悟りがようやく得られて世間に戻る姿。
忘牛存人(ぼうぎゅうぞんにん)
- 家にもどり牛のことも忘れること。
悟りは逃げたのではなく修行者の中にあることに気づく。
人牛倶忘(にんぎゅうぐぼう)
- すべてが忘れさられ、無に帰一すること。
悟りを得た修行者も特別な存在ではなく本来の自然な姿に気づく。
返本還源(へんぽんげんげん)
- 原初の自然の美しさがあらわれてくること。
悟りとはこのような自然の中にあることを表す。
入鄽垂手(にってんすいしゅ)
- まちへ... 悟りを得た修行者(童子から布袋和尚の姿になっている)が街へ出て、別の童子と遊ぶ姿を描き、人を導くことを表す。
巻子、画帖など、また掛幅1幅に10描いたものもある。
頌を加えたものは少なく、ほとんどが絵のみで、文字をまじえない。
中国伝来のものもあるが、日本の室町時代以後の禅僧、また絵画の各派の画人によって制作されたものが多い。
廓庵の十牛図