東南院 (奈良市) (Tonan-in Temple (Nara City))
東南院(とうなんいん)は、東大寺の東南方向(現在の東大寺図書館付近)にあったとされる真言宗の拠点寺院。
正確には東大寺東南院。
「東大寺東南院旧境内」として国の史跡に指定されている。
起源と歴史
真言宗空海の開創と流布されるが、実際には醍醐寺開山に尽力した聖宝の創設とされる。
聖宝は醍醐寺において三論宗・真言宗兼学を標榜していた。
その後も醍醐寺は密教である真言宗(東密)と顕教の三論宗を兼学せしめたが、東南院も三論宗と機軸としながら、真言宗を学ぶ僧侶も受け入れた。
ここから、東大寺は華厳宗と三論宗を兼学する寺院として位置づけられるに至る。
中世において多くの東大寺別当を輩出したため、東大寺の根本宗ともいうべき華厳宗を継承する尊勝院とならび、東大寺の二大院家として存立していた。
だが、その実体がいまだ不明な尊勝院に対して、後年東大寺別当関連史料を豊富に皇室へ献上したことからも判明する通り、東南院のほうが優勢であった。