牛頭天王 (Gozu Tenno)
牛頭天王(ごずてんのう ゴーシールシャ gośīrşa)は、もともとはインドの神で祇園精舎の守護神である。
後に日本の神スサノオと習合した。
単に天王といえば、牛頭天王をさすことが多い。
概説
頭に牛の角を持ち、夜叉のようであるが形見かけは人間に似ている。
前出の通り、祇園精舎の守護神であるとされるが、東方・浄瑠璃世界の薬師如来の垂迹ともされる。
またあるいは新羅の牛頭山に由来する神仏ともいわれる。
『釈日本紀』内の『備後国風土記』逸文には武塔天神の太子として登場し、牛頭天皇と表記され、八大竜王の一、沙竭羅竜王の女を妃として8人の王子を生んだという。
日本では、猛威ある御霊的神格を持っていることからスサノオと習合し、京都祇園の八坂神社に祀られ除疫神として尊崇された。
また同時に疫病神の一面を併せ持つ神ともされる。
疫病を撒き散らすと同時に親切に迎え入れた農民に対しては万病に効く術を授けたとも言われている。
平安時代に都市部で信仰されるようになり、祇園御霊会(祇園祭)において祀られるようになったとされる。
牛頭天王・スサノオに対する神仏習合の信仰を祇園信仰といい、中世までには日本全国に広まった。
広峯神社・八坂神社・津島神社・氷川神社およびその分社で祀られていたが、明治の神仏分離でこれらはスサノオを祀る神社となった。
ただし、天王神社など牛頭天王を祭神とする神社は今でも奈良県京都府新潟県など全国各地に点在している。
天王洲アイルの「天王洲」など、各地にある「天王」のつく地名の多くは牛頭天王に因むものである。
蘇民将来子孫之門
昔、牛頭天王が老人に身をやつしてお忍びで旅に出た時、とある村に宿を求めた。
このとき弟の巨丹将来は裕福なのに冷淡にあしらい、兄の蘇民将来は貧しいのにやさしく迎え入れてもてなした。
そこで牛頭天王は正体を明かし、「近々この村に死の病が流行るがお前の一族は助ける」とのたまった。
果たせるかな死の病が流行ったとき、巨丹の一族は全部死んでしまったのに、蘇民の一族は助かったという。
現在でも八坂神社などでは赤い地の紙に金色の文字で「蘇民将来子孫之門」という札を配布しているが、その由来はこの故事を基にしている。
何故赤い紙に金色の文字かというと陰陽道で「疫病神が嫌う色」とされているからである。