大日如来 (Dainichinyorai)
大日如来 (だいにちにょらい)、サンスクリット マハー・ヴァイローチャナ (mahaavairocana)は、密教において宇宙そのものと一体と考えられる汎神論的な如来(法身仏)の一尊。
その光明が遍く照らすところから遍照、または大日という。
三昧耶形は、金剛界曼荼羅では宝塔、胎蔵曼荼羅では五輪塔。
種子 (密教)(種字)は金剛界曼荼羅ではバン(vaM)、胎蔵曼荼羅ではアーク(aaH)またはア(a)。
概要
大毘盧遮那成仏神変加持経(大日経)の教主であり、大日経の説く胎藏曼荼羅中台八葉院九尊の主である。
また金剛頂経の説く金剛界曼荼羅五智如来の中心。
空海の開いた真言宗において、究極的には修行者自身と一体化すべきものとして最も重要な仏陀である。
不動明王は、密教の根本尊である大日如来の化身、あるいはその内証(内心の決意)を表現したものであると見なされている。
後期密教を大幅に取り入れたチベット仏教でも、大日如来は五仏(五智如来)の中心として尊崇される。
チベット仏教では、宝飾品を身に纏わずに通常の如来の姿で表現されたり、あるいは多面仏として描かれることもある。
像形は、宝冠をはじめ瓔珞などの豪華な装身具を身に着けた、菩薩のような姿の坐像として表現される。
これは古代インドの王族の姿を模したものである。
一般に如来は装身具を一切身に着けない薄衣の姿で表現されるが、大日如来は宇宙そのもの存在を装身具の如く身にまとった者として、特に王者の姿で表されるのである。
印相は、金剛界大日如来は智拳印を、胎蔵界大日如来は法界定印を結ぶ。
アフラ・マズダー起源説について
大日如来(摩訶毘盧遮那仏、マハー・ヴァイローチャナ)の成立の起源を、ゾロアスター教の善の最高神アフラ・マズダーに求める学説がある。
太陽の属性と智の属性、火を信奉することを根拠としているが、ゾロアスター教と密教は教義に大きな差がある。
そのアフラ・マズダーは、ミタンニ・ヒッタイトにおける契約の神ヴァルナを起源とする学説もある。
この説は昔からヴァルナが光明神ミスラとのセットであること、彼がアスラであることを前提としているが、それ以外には主だった類似性は見られない。
また、大日如来をインド神話のアスラ神族の王ヴィローチャナに求める学説もある。
この名が華厳経の教主の毘盧遮那仏(ヴァイローチャナ)と類似することから、毘盧遮那仏から発展した大日如来とも同一視する学説もある。
その説は、チャーンドギヤ・ウパニシャッドの説話を根拠としているようだ。
ただ、インドの叙事詩「マハーバーラタ」では、ヴィローチャナとは太陽神のことであり、必ずしもヴィローチャナという言葉がアスラ王のみを意味するわけではない。
また、太陽神としてのヴィシュヌもこの異名を持つため、すぐさま起源とは言えない。
アスラ王やゾロアスター教の最高神を大日如来の起源とするこの説は、いまだに結論がついていない。
(実際、他の神々の起源も名の類似性以外に大きな根拠がないことが多い。)
真言
金剛界:オン・バザラ・ダド・バン
胎蔵界:オン・アビラ・ウン・ケン
作例
岐阜・横蔵寺 (揖斐川町)像、鎌倉時代。
京都・東寺講堂像、現存像は室町時代の再興。
奈良・円成寺像、平安時代末期、運慶作。
国宝。
奈良・唐招提寺像、平安時代前期。
和歌山・金剛峯寺像、平安時代前期、元西塔本尊。