平安仏教 (Heian Bukkyo)
平安仏教（へいあんぶっきょう）とは、平安時代に創始された仏教の宗派である。
具体的には真言宗、天台宗の二宗をさすことが多い。
場合によっては融通念仏宗も含める。
桓武天皇による平安遷都（794年）の背景の一つには、奈良仏教（南都六宗）の専横の問題があった。
孝謙天皇が僧・道鏡を寵愛し、あわよくば道鏡が天皇にまでなろうとして和気清麻呂に阻止された経緯があり、朝廷の保護の下、力を持ちすぎた奈良仏教の影響を排除することが長岡京、平安京への遷都の一つの動機である。
桓武天皇は奈良仏教に対抗しうる新しい仏教として、最澄が唐から持ち帰った天台宗や空海が持ち帰った真言宗を保護した。
特に最澄は奈良仏教に対抗意識を持っており、法相宗の僧侶・徳一と激しい論争をした。
一方、空海は奈良仏教に対し、融和的な態度をとった。
その特徴は一つは山岳仏教である。
奈良仏教が都市仏教であったのに対し、最澄は比叡山に延暦寺を、空海は高野山に金剛峯寺を開いた。
もう一つの特徴は加持祈祷を行なう密教を持っていたことである。
真言宗の密教は東密、天台宗の密教は台密と呼ばれ、覇を競った。
これにより、平安仏教は皇室や貴族の現世利益をかなえる宗教という性格を強くした。
基本的に皇室や藤原氏などの貴族仏教としての性格を持つ。
平安中期になると、天台宗の源信らにより死後の阿弥陀如来による救いを説く、浄土教が大きな力を持ってくる。
宇治平等院鳳凰堂は当時の貴族の浄土信仰の代表的遺構である。
融通念仏宗もその文脈で出てくる。
やがて、平安末期に法然の専修念仏が広まるともはや貴族仏教ではなくなり、民衆全体への広がりを見せ、鎌倉新仏教のさきがけとなって行った。