無量寿経 (Muryoju-kyo Sutra)

『無量寿経』(むりょうじゅきょう)は、大乗仏教の経典の一つ。

原題は『スカーバティービューハ』(サンスクリット:Sukhāvatīvyūha)で、「極楽の荘厳」という意味である。
サンスクリットでは同タイトルの『阿弥陀経』と区別して、『大スカーバティービューハ』とも呼ぶ。

サンスクリット原典、チベット語訳、中国語訳(中国語訳)が現存する。

日本では、一般に『仏説無量寿経』(康僧鎧訳)の事をさす。
詳細は下記の仏説無量寿経を参照のこと。

なお国語国字問題(当用漢字・常用漢字・教育漢字)により現表記となる。

中国語訳

中国語訳は、12訳あったといわれ、現在に伝わっているものとして、5つの訳本が現存し、7つの訳本は、欠本になっている。
五存七欠十二訳と呼ばれる。
現存するうち、「漢訳」・「呉訳」・「魏訳」の訳者に関しては諸説ある。

仏説無量清浄平等覚経

『仏説無量清浄平等覚経』4巻 後漢の支婁迦讖(しるかせん)訳…「漢訳」

『大正新脩大蔵経』(以下、『大正蔵』) 第12巻 P279~P299。

原文の経題の表記は、『佛説無量清淨平等覺經卷第一』、『佛説無量清淨平等覺經卷第二』、『佛説無量清淨平等覺經卷第三』、『佛説無量清淨平等覺經卷第四』 後漢月支國三藏支婁迦讖譯。

略称は、『清浄平等覚経』、『平等覚経』が用いられる。

西晋の竺法護(じくほうご)訳、曹魏の白延(はくえん〈帛延とも〉)訳との説もある。

阿弥陀如来の本願は、「四十八願」ではなく、「二十四願」である。

主な引用先…善導:『観無量寿経疏』、源信 (僧侶)…『往生要集』、法然:『選択本願念仏集』、親鸞:『顕浄土真実教行証文類』、『愚禿鈔』、作者不詳:『安心決定鈔』。

仏説阿弥陀三耶三仏薩楼仏檀過度人道経

『仏説阿弥陀三耶三仏薩楼仏檀過度人道経』2巻 呉 (三国)の支謙訳…「呉訳」

『大正蔵』第12巻 P300~P317。

原文の経題の表記は、『佛説阿彌陀三耶三佛薩樓佛檀過度人道經卷上』、『佛説阿彌陀三耶三佛薩樓佛檀過度人道經卷下』 呉月支國居士支謙譯。

別称には、『大阿弥陀経』がある。

後漢の支婁迦讖訳とする説もある。

阿弥陀仏の本願は、「四十八願」ではなく、「二十四願」である。

主な引用先…源信…『往生要集』、法然:『選択集』、親鸞:『教行信証』。

仏説無量寿経

『仏説無量寿経』2巻 魏 (三国)の康僧鎧訳…「魏訳」

中国語訳のうち日本の浄土教諸宗において主に用いられるのは、康僧鎧が訳したとされる『仏説無量寿経』2巻である。
浄土教諸宗において「無量寿経」といえば、特に注意書が無い場合は、康僧鎧訳の『仏説無量寿経』を指す。

浄土教日本の根本聖典の一つで、『観無量寿経』(畺良耶舎訳)、『阿弥陀経仏説阿弥陀経』(鳩摩羅什訳)とともに「浄土三部経」と総称される。

浄土真宗の宗祖である親鸞は、特にこの経典を重んじ、浄土真宗の最重要経典である。

別称に、『大無量寿経』(略して『大経』)、上下巻の2巻からなるため『双巻無量寿経』(『雙巻無量壽經』)、『双巻経』(『雙巻經』)とも呼ばれる。

『大正蔵』第12巻 P265~279。

原文の経題の表記は、『佛説無量壽經卷上』・『佛説無量壽經卷下』 曹魏天竺三藏康僧鎧譯。

訳者に関しては、様々な説がある。
一般の経典には、「曹魏天竺三蔵康僧鎧訳」と書かれている。

「魏訳」の特徴として、「自然」「無為」「清浄」など、曹魏・西晋時代の老荘ないし道教と共通する用語が多く見え、それらの影響が強く反映されている。

内容

上巻
序分に王舎城の耆闍崛山において、優れた比丘や菩薩たちに対して、釈迦が五徳の瑞相をあらわし説かれた。

正宗分には、ある国王が世自在王仏のもとで出家し法蔵菩薩と名乗った。
偈文(「讃仏偈」)を作り師を讃嘆し、諸々の仏の国土の成り立ちを見せて欲しいと願いを述べた。
その仏国土より優れた点を選び取り、発願(ほつがん)し、五劫の間思惟して行を選び取った。

願と行を選び取った法蔵菩薩は、師に向かい48の願(四十八願)を述べた。

続けてこの願の目的を述べ重ねて誓った(「重誓偈(三誓偈)」)。

そして兆戴永劫にわたり修行し、願が成就し、無量寿仏(阿弥陀仏)と成り、その仏国土の名が「極楽」であると説かれる。

願が成就してから十劫が経っていて、阿弥陀仏の徳とその国土である「極楽」の様子が説かれる。

下巻
極楽浄土に生まれたいと願う者は皆、仏になることが約束され、阿弥陀仏の名号を聞信し喜び、心から念ずれば往生が定まると説かれる。

その者たちは、上輩・中輩・下輩に分けられ、それぞれの往生の方法が説かれる。
修行もやり遂げられない、善行も戎も守りきれない下輩の者は、たとえわずかな回数でも、一心に念ずれば往生がさだまると説かれる。

そして釈尊は、偈文(「東方偈〈往覲偈〉」)を読み、教えを聞き、阿弥陀仏を敬い、「極楽」への往生を勧める。

さらに浄土に往生した聖なる者たちの徳を説かれる。

次に釈尊は弥勒菩薩に対して、煩悩のある世界(穢土)に生きる衆生の苦しみの理由を、三毒・五悪(殺生〈せつしよう〉・偸盗〈ちゆうとう〉・邪淫〈じやいん〉・妄語〈もうご〉・飲酒〈おんじゆ〉)によると示し、誡める。

続けて弥勒菩薩に、そのままではその苦しみから逃れられない事を説き、「極楽」に往生する事が苦しみから逃れる方法であると説かれる。

それは、ただ無量寿仏の名を聞いて、たった一度でも名を称えれば(念仏)すれば、功徳を身に供える事ができると説いた。
この教えを聞いたものは、後戻りする事は無い(必ず往生できる)と説かれる。

流通分には、無上功徳の名号を受持せよとすすめ、時が流れ一切の法が滅しても、この経(『無量寿経』)だけは留めおいて人々を救いつづけると説かれる。

無量寿如来会

『無量寿如来会』2巻 唐の菩提流支訳…「唐訳」

『大正蔵』第11巻 P91~P101。

原文の経題の表記は、『大寶積經卷第十七』「無量壽如來會第五之一」、『大寶積經卷第十八』「無量壽如來會第五之二」 大唐三藏菩提流志詔譯。

略称は、『如来会』が用いられる。

阿弥陀仏の本願は、「魏訳」と同じ「四十八願」である。

主な引用先…親鸞:『教行信証』、『浄土文類聚鈔』、『愚禿鈔』、『浄土三経往生文類』、『一念多念文意』、『如来二種回向文』、『親鸞聖人御消息(善性本)』、蓮如:『正信偈大意』。

仏説大乗無量寿荘厳経

『仏説大乗無量寿荘厳経』3巻 宋 (王朝)の法賢(ほっけん)訳…「宋訳」

『大正蔵』第12巻 P318~P326。

原文の経題の表記は、『佛説大乘無量壽莊嚴經卷上』、『佛説大乘無量壽莊嚴經卷中』、『佛説大乘無量壽莊嚴經卷下』 西天譯經三藏朝散大夫試光祿卿 明教大師臣法賢奉詔譯。

略称は、『荘厳経』が用いられる。

阿弥陀仏の本願は、「四十八願」ではなく、「三十六願」である。

欠本とされている7つの異訳本

『無量寿経』2巻 後漢の安世高(あんせいこう)訳とされる。

『仏説無量清浄平等覚経』2巻 曹魏の白延訳とされる。

『仏説無量寿経』2巻 西晋の竺法護訳とされる。

『仏説無量寿至真等正覚経』1巻 東晋の竺法力(じくほうりき)訳とされる。

『新無量寿経』2巻 東晋の仏陀跋陀羅訳とされる。

『新無量寿経』2巻 東晋の宝雲(ほううん)訳とされる。

『新無量寿経』2巻 宋 (南朝)の曇摩蜜多(どんまみった)訳とされる。

[English Translation]