聖観音 (Sho Kannon)
聖観音(しょうかんのん)、サンスクリットアーリヤ・アヴァローキテーシュヴァラ (aarya avalokitezvara) は、仏教における信仰対象である菩薩の一尊。
「正観音」ともいい、六観音の一つでもある。
観音菩薩(観世音菩薩、観自在菩薩)像には、さまざまな形態のものがあるが、このうち、多面多臂などの超人間的な姿ではない、1面2臂の像を指して聖観音と称している。
正観音と書くこともある。
大慈の観音として、六観音の役割では地獄道を化益するという。
三昧耶形は初割蓮華(綻び始めたハスの花)。
種子 (密教)(種字)はサ(sa)、キリーク(hriiH)など。
像容と持物
観音像には十一面観音、千手観音、如意輪観音など、多面多臂の変化(へんげ)観音と、こうした超人間的な姿ではない、1面2臂の観音像とがあり、後者を指して「聖観音」または「正観音」と称する。
密教では聖観音、十一面観音、千手観音、如意輪観音、馬頭観音、准胝観音(じゅんていかんのん)(または准胝観音に代えて不空羂索観音)を「六観音」と称している。
聖観音の像容は、前述のように1面2臂の菩薩形で、持物(じもつ)は左手に蓮華を持つのが一般的だが、必ずしも一定していない。
観音像の標識としてもっとも見分けやすいものは、頭上、頭髪部の正面に化仏(けぶつ)と称する阿弥陀如来の小像を置くことで、この点は千手観音など他の観音像にも共通した特色である。
「観音」か「聖観音」か
1面2臂の観音像がすべて「聖観音」と呼称されているわけではない。
阿弥陀三尊のうちの左脇侍像として安置される観音像については、単に「観音菩薩像」と言うのが普通で、「聖観音」と称するのは、独尊像として祀られる場合にほぼ限られている。
また、1面2臂の独尊像でも「聖観音」と呼ばれていない例が多々ある。
たとえば、奈良・法隆寺には「百済観音」、「夢違観音(ゆめちがいかんのん)」、「救世観音(くせかんのん)」と通称される国宝の観音像3体があるが、これら3体とも国宝指定の際の正式名称は「観音菩薩立像」であり、正式名称としても通称としても「聖観音」とは言わない。
奈良時代を中心に盛んに造られた、いわゆる小金銅仏のなかには、頭上に阿弥陀化仏を有することから、明かに観音像であるとわかるものが多いが、これらについても通常「聖観音」とは言わず、単に「観音(菩薩)像」と言っている。
「聖観音」と一般に呼ばれ、寺院側でもそのように称している像のうち、著名なものとしては、奈良・薬師寺東院堂の本尊像(奈良時代、国宝)、奈良・不退寺本尊像(重文)、京都・鞍馬寺像(重文)などが挙げられる。