護摩 (Goma)
護摩(ごま)とは、サンスクリットのホーマを音訳して書き写した語である。
インドでは紀元前2000年ごろにできたヴェーダ聖典に出ているバラモン教の儀礼で、仏教には釈尊入滅約500年後に発生した大乗仏教の成立の過程でバラモン教から取り入れられた、と考えられている。
そのため、護摩は密教(大乗仏教の一派)にのみ存在する修法であり、釈尊の直説に近いとされる上座部仏教には存在しない。
おもに真言宗、天台宗で行われる。
護摩の炉に細長く切った薪木を入れて燃やし、炉中に種々の供物を投げ入れ、火の神が煙とともに供物を天上に運び、天の恩寵にあずかろうとする素朴な信仰から生まれたものである。
火の中を清浄の場として仏を観想する。
護摩壇に火を点じ、火中に供物を投じ、ついで護摩木を投じて祈願する外護摩と、自分自身を壇にみたて、仏の智慧の火で自分の心の中にある煩悩や業に火をつけ焼き払う内護摩とがある。
また、その個別の目的によって一般的には次の五種に分類される。
護摩の種類
1. 息災法(そくさいほう)…災害のないことを祈るもので、旱魃、強風、洪水、地震、火事をはじめ、個人的な苦難、煩悩も対象。
2. 増益法(そうやくほう)…単に災害を除くだけではなく、積極的に幸福を倍増させる。
福徳繁栄を目的とする修法。
長寿延命、縁結びもその対象。
3. 調伏法(ちょうぶくほう)…怨敵、魔障を除去する修法。
悪行をおさえることが目的であるから、他の修法よりすぐれた阿闍梨がこれを行う。
4. 敬愛法(けいあいほう)…調伏とは逆に、他を敬い愛する平和円満を祈る法。
5. 鉤召法(こうちょうほう)…諸尊・善神・自分の愛する者を召し集めるための修法。
野外の護摩法要
野外において修される護摩法要を、柴燈・採燈(灯)(さいとう)護摩というが、真言系当山派では、山中で正式な密具の荘厳もままならず、柴や薪で檀を築いたので「柴燈」とし、天台系本山派では、真言当山派の柴燈から採火して護摩を修するようになったので「採燈」という。
また、新宗教の一つでありつつも真言系当山派の法流を汲む真如苑では、すべての因縁業苦を焼き、一切を救うことから、「ひとしく、まとめて、ととのえる」という意味を持つ「斉燈」の字を当てている。
ごまかすの語源説
「誤魔化(ごまか)す」とは、不利益を被らないように取り繕うという意味だが、「護摩」が語源という説がある。
この言葉は江戸時代以降から見られる言葉であるが、これはただの灰であるのに、空海(弘法大師)の修法した護摩の灰と称し偽って売り歩いた輩が横行したことから、紛(まぎ)らかすと同じ接続詞である「かす」がついて「誤魔化す」となったという説である。
しかし、誤魔化すの語源はこの説以外にも、護摩木は火にくべるため何が書いてあったか分からないから『護摩化す』、とか、「胡麻菓子(ごまかし)」の中が空洞になっていることから、や、胡麻をかければ不味い菓子の味がごまかせるから、という説もある。