道元 (Dogen)

Infobox Buddhist

道元(どうげん)は、鎌倉時代初期の禅僧。
曹洞宗の開祖。
晩年に希玄という異称も用いた。
同宗旨では高祖と尊称される。
諡は、仏性伝東国師、承陽大師_(僧)。
一般には道元禅師と呼ばれる。

日本に歯磨き洗面、食事の際の作法や掃除の習慣を広めたといわれる。
最初にモウソウチク(孟宗竹)を持ち帰ったとする説もある。

生い立ち

道元の出生には不明の点が多いが、内大臣土御門通親(源通親あるいは久我通親)の嫡流に生まれたとする点では諸説が一致している。
定説では京都木幡の松殿山荘で通親と太政大臣松殿基房(藤原基房)の娘藤原伊子の子として生まれたとされているが、近年の研究では定説では養父とされている堀川通具の実子とする説が有力になりつつある。
また、通親の子、源通宗または久我通光を父親とする説もある。
伝記である『建撕記』によれば、3歳で父(通親)を、8歳で母を失って、異母兄である堀川通具の養子になった。
また、一説によれば両親の死後に母方の叔父である松殿師家(元摂政内大臣)から松殿家の養嗣子にしたいという話があったが、世の無常を感じていた道元が断ったとも言われている。

浄土真宗の開祖親鸞とは、互いに母方の縁戚にあたり面識があったとする説があるが確証はない。
著作『正法眼蔵』の「生死」の巻は、親鸞に向けて書かれたものであるとする説がある。

活動

建暦3年(1213年) 比叡山の母方の叔父良顕を訪ねる。

建保2年(1214年) 天台座主公円について出家し、仏法房道元と名乗る。

建保3年(1215年) 園城寺の公胤の元で天台宗教学を修める。

建保5年(1217年) 建仁寺にて栄西の弟子明全に師事。

貞応2年(1223年) 明全とともに博多から南宋に渡って諸山を巡り、曹洞宗の天童如浄より印可を受ける。

安貞2年(1228年) 帰国。

天福 (日本)元年(1233年) 京都深草に興聖寺を開く。

この頃、比叡山からの弾圧を受ける。

寛元元年(1243年)7月 越前国の地頭波多野義重の招きで越前志比荘に移転。
途中、朽木村の領主佐々木信綱の招きに応じ、朽木村に立ち寄る(興聖寺 (高島市)の由来)

寛元2年(1244年) 傘松に大佛寺を開く。

寛元4年(1246年) 大佛寺を永平寺に改め、号も希玄と改める。

この頃、執権北条時頼、波多野義重らの招請により教化のため鎌倉に下向する。
鎌倉での教化期間は半年間であったが、関東における純粋禅興隆の嚆矢となった。

建長5年(1253年) 病のため永平寺を弟子の孤雲懐奘に譲り、俗弟子覚念の屋敷(京都市高辻通西洞院通)で死去、享年54(満53歳没)。
死因は瘍とされる。

思想

成仏とは一定のレベルに達することで完成するものではなく、たとえ成仏したとしても、さらなる成仏を求めて無限の修行を続けることこそが成仏の本質であり(修証一如)、釈迦に倣い、ただ坐禅にうちこむことが最高の修行である(只管打坐)と主張した。

鎌倉仏教の多くは末法思想を肯定しているが、正法眼蔵随聞記には「今は云く、この言ふことは、全く非なり。
仏法に正像末(しょうぞうまつ)を立つ事、しばらく一途(いっと)の方便なり。
真実の教道はしかあらず。
依行せん、皆うべきなり。
在世の比丘必ずしも皆勝れたるにあらず。
不可思議に希有(けう)に浅間しき心根、下根なるもあり。
仏、種々の戒法等をわけ給ふ事、皆わるき衆生、下根のためなり。
人々皆仏法の機なり。
非器なりと思ふ事なかれ、依行せば必ず得べきなり」と、釈迦時代の弟子衆にもすぐれた人ばかりではなかったことを挙げて、末法は方便説に過ぎない、と末法を否定した。

著書

『正法眼蔵』(しょうぼうげんぞう)
『正法眼蔵,正法眼蔵随聞記 日本古典文学大系81』(西尾実ほか校注.岩波書店,1965年)
『現代語訳正法眼蔵(一)~(一二)』(西嶋和夫訳.金沢文庫,1970年)
『正法眼蔵(一)~(四)』(水野弥穂子校注.岩波文庫,1990年)
『正法眼蔵』(石井恭二訳、河出文庫、2004年)
『永平広録』(石井恭二訳、河出書房新社、2005年)
『永平清規』
『典座教訓』(てんぞきょうくん)
『典座教訓 赴粥飯法』(中村璋八ほか全訳注.講談社学術文庫,1991年)
『赴粥飯法』(ふしゅくはんほう)
『正法眼蔵随聞記』(しょうぼうげんぞうずいもんき)懐奘編 - 道元の講義録。

『正法眼蔵随聞記 新校註解』(大久保道舟校註.山喜房仏書林,1958年)
『正法眼蔵随聞記』(古田紹欽訳注.角川文庫,1960年)
『正法眼蔵随聞記』(和辻哲郎校訂.岩波文庫,1982年改版)
『正法眼蔵随聞記』(水野弥穂子訳.ちくま学芸文庫,1992年)
『正法眼蔵随聞記 現代語訳』(池田魯参訳.大蔵出版,1993年)
『正法眼蔵随聞記』(山崎正一全訳注.講談社学術文庫,2003年)
『道元禅師全集』鏡島元隆監修,春秋社刊。

参考文献
里見弴『道元禅師の話』(岩波文庫)
竹内道雄『道元』吉川弘文館(人物叢書) 1962
高橋新吉『道元禅師の生涯』宝文館 1963
圭室諦成『道元』新人物往来社 1971
今枝愛真『道元 坐禅ひとすじの沙門』日本放送出版協会(NHKブックス) 1976
菅沼晃『道元辞典』東京堂出版 1977
鏡島元隆・玉城康四郎編『講座道元』全6巻 春秋社 1979-81
玉城康四郎『道元』春秋社 1996
司馬遼太郎「道元」『越前の諸道』街道をゆく18、朝日新聞、49~61頁。

司馬遼太郎「山中の宗僧」(同上所収)63~76頁。

司馬遼太郎「寶慶寺の雲水」(同上所収)77~89頁。

司馬遼太郎「寂円の画像」(同上所収)91~104頁。

立松和平『道元禅師』東京書籍、2007

[English Translation]