狛犬 (Komainu)
狛犬(こまいぬ、中国語:石獅子、英語:imperial guardian lion)とは、犬に似た想像上の獣の像である。
神社や寺院の入口の両脇、あるいは本殿・本堂の正面左右などに1対で置かれている。
なお、厳密には「獅子・狛犬」と呼ぶのが正しいとされている。
名称の由来
名称は高麗(こま、異国)の犬という意味とされる説がある。
これは朝鮮経由で入ってきたためであるとされる。
だが、実際の起源はインドという説が有力である。
また、朝鮮に狛犬の文化は無く、高麗とは音から来る当て字で「高麗の犬」という意味ではなく、あくまで「狛犬(こまいぬ)」という想像上の神獣であり、同じく対になる獅子も当時の日本人はライオンを見たことが無い。
そのため、これも獅子=ライオンではなく「獅子(しし)」という神獣であると考えられる。
一般的には、向かって右側の像は「阿形(あぎょう)」で、角はなく口は開いている。
そして、向かって左側の像は「吽形(うんぎょう)」で、1本の角があり口を閉じている。
両方の像を合わせて「狛犬」と称することが多いが、厳密には、角のない方の像を「獅子」、角のある方の像を「狛犬」と言い、1対で「獅子狛犬」と称するのが正しいとされている。
昭和時代以降に作られた物は、左右共に角が無い物が多い。
これらは本来は「獅子」と呼ぶべきものである。
寺社での狛犬
各地の寺社境内で見かける狛犬には石製や銅製のものが多いが、神社本殿内に置かれたものには木造の場合もある。
延喜式神名帳巻第46の左右衛門府に、大儀日にじ像を会員門左に置き終了時に本府に返却する。
右府は右に置くと記述されるように平安時代にさかのぼる。
当時の獅子狛犬像としては、奈良・薬師寺の鎮守八幡宮の木像(重要文化財)が著名である。
ただし、この薬師寺像は、左右とも角がなく、正式には「獅子1対」と呼ぶべきであろう。
重要文化財指定の狛犬は他に、滋賀・大宝神社、京都・高山寺、広島・厳島神社などのものが著名である。
狛犬は中国や大韓民国にも同様の物があるが、阿吽(あ・うん)の形があるのは日本で多く見られる特徴である。
これは金剛力士の影響を受けたと考えられ平安時代には既に定着していた。
ただし、日本の狛犬は近世から現代にかけて、各地の寺社に膨大な数が造られており、形態にもさまざまなバリエーションがある。
例えば、イノシシや龍、キツネの形の像が同様の役割を果たしていることもある。
これらをあわせて神道では神使(しんし)と呼ぶ。
この神使は神社(祀られる神)によって特定の動物が採用されている場合が少なからずある。
稲荷神社に狐、春日神社に鹿、弁財天には蛇などが代表的な物である。
また、土地の伝承などに基づくものもある。
例えば、遠野常堅寺では河童伝説に基づき狛犬の場所に河童像が置かれている、など。
一般的には、守るべき寺社に背を向ける形で置かれる。
だが、まれに寺社の方を向いている物もある。
また、稀に対をなしていないものも存在する。
夫婦の狛犬
左右の狛犬をして夫婦であると主張する寺社も存在する。
「狛犬が獅子の姿形をしている以上、たてがみを持つのは当然雄である。
つまり、狛犬同士がつがいとなることはあり得ないため、生物学的にはこの主張は誤り」とする見解がある。
一方で、「子狛犬あるいは子獅子をあやしているものや授乳しているものもあるため、夫婦で正しい」とする見解もある。
厳密に正しい・正しくないで争うことに意味はないが、夫婦肯定説・夫婦否定説の両説がそれぞれ主張されている。
狛犬以外の想像上の獣の像
カイチ
シーサー
ケルベロス
スフィンクス