神典 (Shinto scripture)
神典(しんてん)とは日本の神道において信仰の根拠とされる文献の総称である。
概要
日本の神道には、仏教における経典や、キリスト教の聖書、イスラム教のコーランのように明確な教義を示す正典は存在しないが、正統な信仰の規範とすることができると広く認められる一群の文献が存在する。
これら「神道における古典」を神典と総称している。
神典と呼ばれる文献は主として平安時代までに成立したもので、神代における神の事績を記すとともに、その内容において仏教や儒教の影響が少ないものに限られている。
また、中近世の諸流神道家による著作は各流派における教義を示したもので、客観性に欠けるために神典の範囲からは外されている。
日本十進分類法では中分類「170 神道」の下に小分類「173 神典」を設けている。
なお、契沖はこれらの文献を「神代ヨリ有ツル事ドモ記セルノミ」に過ぎないので、神道の根本を知るためには朝廷日本の朝廷における公式行事(特に祭祀)や諸神社における祭祀に注目すべきであると説き、後者については 柳田國男以降の民俗学にその精神が受け継がれている。
神典とされる文献
一般に神典とされる文献には以下のようなものがある。
『古事記』
『日本書紀』
『風土記』
『皇太神宮儀式帳』、『止由気宮儀式帳』
『古語拾遺』
『先代旧事本紀』(『旧事紀』)
『高橋氏文』
これ以外に、『万葉集』、『律令』、『続日本紀』以降の六国史、『新撰姓氏録』、『延喜式』、『令義解』、『令集解』、『釈日本紀』といったものに収録されている神道関係の古記録等も神典とされる。