アパート (Apart (Apartment))
アパート(apart)とは、建物の内部を複数に区切り、それぞれを独立した住居として居住者に賃貸する集合住宅。
英語「アパートメント()」を元にした和製英語。
同種の共同住宅のうち、比較的大規模・豪華なものは「マンション」と称されることが多い。
概要
日本では関東大震災後に同潤会アパートが建設された。
鉄筋コンクリート造の集合住宅は都市居住の中でも質の高いものであったが、のちに木造で質の低い賃貸の集合住宅にもアパートという名称が付けられるようになった。
差別化を図るため、マンション(本来は邸宅の意味)という名称がよく使われるようになった。
不動産取り引きの通称として、構造的な区分からは木構造 (建築)、軽量鉄骨造、で建築された建築物を指す。
これに対し、マンションは鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄骨造、もしくはその他の構造で建築されたものを指す。
これらでは集合住宅の性質上、隣室へ室内で立てた音が伝わりやすい。
騒音による隣人間のトラブルもしばしば起こっており、このほかにも火災や水漏れ等の被害が隣家・階下に伝播する等して問題となるケースも聞かれる。
なお、米軍統治の歴史があり、気候の関係上木造や鉄骨造の家屋の少ない沖縄では、鉄筋コンクリート造の集合住宅も一般にアパートと呼ばれており、マンションという用語は主として日本本土の資本により近年建造された高層住宅に対してのみ用いられる。
日本のアパート
階数的には木造、軽量鉄骨造の構造上の制限により2階建てなどの低層住宅が多い。
マンションには低層住宅、中高層住宅、高層住宅、もしくは超高層住宅があり、階数による区別はないが、一般的な概念としては中高層住宅、高層住宅の住宅用途の建物をマンションと呼ぶ場合が多い。
建物規模、敷地規模および戸数の観点から前項の一般的な概念によるマンションに比べてアパートは2〜3階建ての小規模・低層が多く、建築設備的にエレベーターが設置されたアパートは稀(まれ)である。
建築基準法上はマンションと同じ共同住宅に区分されるもののほか、2階建以上でも長屋住宅に区分されるものがあり、両者は共有通路の要否で異なる。
(共有通路を経なければ各戸に入れないのが共同住宅)
尚、古い表現として2階建までのアパートを「コーポ」と称することもある。
関西地方ではかつて、水まわりの独立したアパートのことを文化住宅と呼称した。
下宿屋・風呂なしアパート
最近はあまり見かけないが、かつて学生に多く利用された下宿屋という住居の形態がある。
原則として管理者である大家との同居であり、個室として提供される部屋に下宿人が住む形式である。
一般にトイレや風呂、台所などの水まわりは共同で、賄いとして食事の提供が行われることもある。
家賃は総じて安価である傾向が強い。
なお下宿営業は、旅館業法に規定される宿泊施設であり、施設を設け、一月以上の期間を単位とする宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業をいう(旅館業法第2条第5項)。
初期のアパートは、こうした宿所の各部屋に玄関を設け、独立した住居へと発展させたものと考えられる。
昭和20年代から30年代に多く建てられた玄関共有、内廊下、風呂なし(銭湯を利用)、共同の便所、台所、洗濯場という形態である。
古いものでは郵便箱や食堂なども共同で、各々の部屋はあくまでも個人が寝たりくつろぐ場所に過ぎない傾向も見られた。
こうした古いタイプの共同住宅に関しては、漫画では松本零士の大四畳半シリーズ(『男おいどん』など)にも登場する。
福谷たかしの「独身アパート・どくだみ荘」はまさにこの種のアパートが舞台となっている。
昭和中期より活躍している漫画家には、当時の漫画はあまり儲からなかったため、下宿やアパート生活経験者も少なからずいるようだ。
(→トキワ荘)
また、日雇い労働者たちの寄せ場のある地区にはドヤと呼ばれる簡易宿所も多く見られる。
そのほとんどは2~3畳程度の個室で、かつてのアパートの特徴を備えているところも多い。
2005年に前後して、地方からなにも持たずに首都圏に仕事にやってくる人が安価に泊まれるところとして、ふたたびこうした宿が注目を浴びているようである。
ネットカフェや個室ビデオ店の延長として、レストボックスと呼ばれるビルの一室をゲストハウス風に改造した施設も誕生している。
「あくまでも事務所貸し」として宿泊を認めないところもある。
が、朝日新聞が2005年7月11日に報じた所では、従来よりオフィス街でブルーカラー労働者の通勤範囲外で労働者空白地帯だった所に、ビル清掃・解体工事など一定の労働力確保を必要とする業者が、自社で管理する空きビルのフロアに多段式ベッドを入れるなどして簡易宿泊施設に改装、労働力の獲得に成功しているという。
英国のアパートメント
ヨーロッパでは地盤が磐石で、また19世紀より産業革命で都市部への人口集中がおこったため、これらの労働者へ住居を提供するためにアパートメントが発達し、また当時の建物が改築こそされてはいるがそのまま現存・利用されている。
イギリスではこのアパートメントは、通りに沿って建てられた2〜3階建ての建物が、横方向には隣家と完全にくっついて、さながら帯のように成ってしまっているため、必然的に建て増しは垂直方向にのみ行われた。
この結果、木造・モルタル壁などの4〜5階建ての集合住宅がロンドン市内には普遍的に見られ、これらは幾度もの所有者の変更により、住宅・商店・宿泊施設(BB(Bed Breakfastの略)と呼ばれる安宿など)に利用されている建物もある。
中にはかつての複数戸の横の壁を打ち抜いて連結し、番地的には複数戸から成る一軒の建物や、逆に従来の建物を中で仕切って二軒に分割した物もあるようだ。