メスリ山古墳 (Mesuriyama Tumulus)

メスリ山古墳(めすりやまこふん)は、奈良県桜井市に所在する古墳時代前期初頭の前方後円墳である。

概要

この古墳は、磐余の地に接した初瀬川の左岸にあり、桜井茶臼山古墳(墳丘長208メートル、外山(とび)茶臼山古墳ともいう)らと共に鳥見山古墳群に属する。
特徴的なのは、埋葬施設の副石室がまるで遺品庫の様相を呈していることである。
箸墓古墳のほうが、年代的に先行する。

『記・紀』や『延喜式』などに陵墓としての伝承がないので、大王墓から外す考えもある。

規模・形状

墳丘長224メートル(復元すると250メートルとする説もある)。
陪墳群が見られない。

後円部の頂に竹垣を巡らしたように埴輪の囲いがしてある箇所は、長辺約11.3メートル、短辺約4.8メートル、想定された高さ1メートルを下らない長方形の壇がある。

特殊器台・特殊壺は、高さ2.4メートル、径1.3メートルで日本最大である。
埴輪も出土している。

埋葬施設

後円部頂上の中央に木棺を納めた主石室にあたる竪穴式石室がある。
盗掘によりほとんど遺物を残していない。

主石室の横にあった副石室は、長さ6メートル、幅70センチメートル、高さ60センチメートルで盗掘を免れている。
合掌式の石室で、内部には遺骸がなく、武器ばかりが埋納されていている。
このため、格納庫、遺品庫であったと考えられる。

副葬品

奈良県の前期古墳の埋納品の一端がしのばれる。

主石室は、遺体を埋葬し、玉石製品では翡翠の勾玉、碧玉の管玉、貝輪を真似た石製の腕輪類、ミニチュア化した石製の椅子、櫛、合子などを納めた。

副石室は、副葬品を納め、212本の茎式鉄矛、これらの鉄矛は、約半数ずつ石室の両端に鋒(きつさき)を向け合った形になっていた。
いずれも長柄をつけていたと想像される。
集団戦に用いられる武器である。
鉄剣形の槍先にした鉄矛は、朝鮮半島南部や北九州でも出土していて、当時の武器の中心になっていた。
この武器は日本列島で大流行し、日本でも鍛造技術が駆使されたことは間違いない。
236本の銅鏃、50本の石鏃、鉄弓1本、鉄製矢5本が見つかっている。
鉄弓や鉄矢は、実用性ではなく、武器本来の機能である威嚇用である。
木製の弓もあったであろうと思われる。
鉄剣、鉄刀それぞれ1本。
さらに、斧(鉄斧14)、手鎌(19)、鑿、やりがんな(51)、刀子、鋸などの農耕具。

[English Translation]