破風 (Hafu (Gable))
破風(はふ)は、切妻造や入母屋造などにできる、妻側の三角形部分の造形。
妻壁や破風板などを含む。
寺院や城郭建築などで大きく発展が見られた。
通常、一般住宅の妻壁部分には、板張や漆喰などで仕上げられ、母屋には小さな破風板や化粧板金が付けられるが、城郭建築や寺院建築の妻壁には、格子や漆喰、また「豕扠首(いのこさす)」などの化粧材を見せることもある。
幅の広い破風板に漆喰や黒漆などを塗布し、懸魚という飾り板を取り付けることが多い。
破風板に飾り金具を付けるとさらに華美になる。
破風の形式
破風には入母屋破風や唐破風などの種類がある。
以下に書き出した。
入母屋破風
入母屋屋根にできる破風。
破風の代表的なもの。
城郭建築(天守)や武家様式の建物などで多く見ることができる。
特に大きなものは大入母屋ともいい、破風板や懸魚もあわせて大きくなる。
二条城御殿、姫路城大天守が代表的。
千鳥破風
切妻破風を葺き降ろしの屋根に直接置いて造られる。
主に天守建築に見ることができる。
古くは、大きな屋根などで、窓の開口が難しくなった階層などに出窓のように突起して屋根を被せたもの(破風部屋)で、時代が下がるにつれて単に飾りというだけのものとなり、小屋裏に部屋さえも持たなくなることが多くなった。
比翼破風・比翼入母屋破風
元は、大入母屋から作り出されたと考えられ、主に天守建築で見られる。
規模の大きな天守に多く見られ、初期のものは、大入母屋の代わりに、比翼入母屋破風を造り、不整形な平面からの歪みを整えた。
時代が下がると、層塔式天守や御殿の屋根に千鳥破風で全くの飾りとして付けられるようになる。
唐破風
唐破風は、日本特有の形式で、切妻のむくり屋根の先に独特のフォルムの破風板が付けられる。
城郭建築や、近世の寺院などで多く見られる。
装飾性は非常に高い。
大きな邸宅の玄関としてつけられることもあり、現在の和風住宅でも稀に付けられることがある。
唐破風には向唐破風と軒唐破風の二つの形式がある。
向唐破風は、出窓のように独立して葺き下ろしの屋根の上に千鳥破風のようにして造られる。
出窓として造られるものもあるが全くの飾りとして造られることも多い。
軒唐破風は、軒の一部にむくりをつけるか、むくりをつけた切妻に付けて造られる。
寺社建築などでも見ることができる。
切妻破風
切妻に造られる破風。
比較的シンプルに造られることが多く大規模なものは造られることが少ない。
破風の部位
破風板(はふいた)
破風とは元々破風板の事を指していったと考えられている。
建物のデザインにあうように、反りやむくりを付けたり、全くの直線に造ることもある。
溝や彫刻を施すこともある。
木材で造られることが多いが、住宅建築ではプラスチック製のものもある。
懸魚(げぎょ)
懸魚は、破風板の下に取り付けられる装飾を目的に付けられる彫刻を施した板のこと。
板の中央付近に四葉(しよう)や六葉(ろくよう)と呼ばれる花形の彫刻、板の両端に鰭(ひれ)と呼ばれる彫刻をつけることが多い。
発祥地と考えられている中国では垂魚とも呼ばれている。
読みは、一般的に「げぎょ」といわれるが「けんぎょ」と読むこともある。
蛙股・笈形(かえるまた・おいがた)
蛙股は、蛙の股のような造形から呼ばれる。
妻飾りにも用いられ、装飾と構造部材の役割を持ち、「透し」や「板」という種類がある。
中国では駱峰、朝鮮では、華版といわれる。
古くはシンプルなものが多く、近世、特に江戸中期以降では股の内側に彫刻を施すことがあり、時に、はみ出して造られたものもある。
笈形は、蛙股の中央に瓶のような形をした短い束を立てたようなもの。
機能は蛙股とほとんど同じである。
双方とも、破風に限らず付けられる。
近世以降では、唐破風によく見られる。