楼閣 (Rokaku (a multi-storied building))
楼閣(ろうかく)とは、重層の建築物をいう。
たかどの、高楼のこと。
塔と類義であるが、塔は本来仏塔を指し、entower の訳語としての塔は近代に入っての用法である。
それ以前の高層建築は一般に楼閣、高楼という呼称が用いられていた。
中国
「楼」(=樓)とは重層の建物、「閣」とは御殿や櫓など高所の建造物を意味し、これらを総称して楼閣という。
中国では国家的大事業の記念や政治的示威の目的をもって、多くが河畔、臨海に建設された。
また、城門には望楼が併設されるのが常であったため、これらも貴重な楼閣遺構として見ることが出来る。
木造のものとして最古の遺構は984年、遼代に建立された独楽寺観音閣(天津市薊(けい)県)である。
河畔に佇む楼閣の大廈高楼たるさまは多くの詩家にも好まれ、李白の「黄鶴楼送孟浩然之広陵」や、崔顥(約704年-754年)の「黄鶴楼」など興趣に富んだ佳作を生むこととなった。
鼓楼
鼓楼(ころう)は時報を告げるために用いられた楼閣で南京市のものが著名。
(→鼓楼)
中国の著名な楼閣
黄鶴楼(湖北省武漢市)
滕王閣(江西省南昌市)
岳陽楼(湖南省岳陽市)
以上は「江南の三大名楼」と呼ばれている。
これに蓬莱閣を加えて「中国四大名楼」という。
蓬莱閣(山東省蓬莱市)
真武閣(広西チワン族自治区)
煙雨楼(浙江省嘉興市)
鎮海楼(広東省広州市)
閲江楼(江蘇省南京市)
日本
本邦における楼閣建築の始まりは弥生時代の望楼(見張り台)に求められる。
しかし一般的には重層の建築物はほとんど利用されず、外見上重層である仏塔も一階のみに部屋を設け二階以上は屋根だけをかける場合が多かった。
貴族の邸宅に見られる寝殿造、書院造も平屋建てを前提とした様式であった。
室町期以後、禅宗の隆盛とともに大陸風の楼閣寺院、茶室が出現する。
重層建築は意匠として重要であったほか、眺望が利く高層部は天下を睥睨する意図も併せ持っていた。
京の鹿苑寺、慈照寺はその代表であろう。
一方、軍事的必要性、及び戦国大名の一円支配強化から望楼を起源とする「天守」(天守閣)が現れ、城郭建築の象徴として一世を風靡することとなる。
他方、寺院における楼閣建築も本邦独自の発展を見せ、西本願寺の飛雲閣など優れた木造楼閣が現れることとなる。
近世に至ると都市部の旅館(旅籠)では土地の有効利用の目的もあって二階に客間を設けるものが多くなる。
老舗旅館の「○○楼」や「○○閣」といった名称はその名残であろう。
明治維新を迎えると浅草凌雲閣(浅草十二階)など煉瓦造のものが現れるが、これはもはや「高層ビル」といっていいものであろう。
鹿苑寺
慈照寺
飛雲閣(西本願寺)
以上を「京の三閣」といい、これに
呑湖閣(どんこかく、芳春院〈大徳寺塔頭〉)
を加えて「京の四閣」といい、
東福寺伽藍(でんねかく、東福寺)
を加えると「京の五閣」と称される。
聴秋閣(三渓園)
栖鳳楼(せいほうろう) 平安京大内裏にあった四楼の一つ。
森陣屋にある茶屋
慣用句
空中楼閣 - 実現不可能なことから架空のことを意味する。
あるいは蜃気楼のこと。
砂上の楼閣 - 一見立派であるが基礎が柔らかいためすぐに崩壊してしまうこと。
摩天楼 - 天にもとどきそうな高い建物のこと。
超高層ピルのことを俗にそういう。