かき氷 (Shaved Ice (Flavored with Syrup))

かき氷(かきごおり、欠き氷)とは、氷を細かく削るか、砕いてシロップ(またはシラップ)等をかけた冷菓。
日本の夏の風物詩、夏の季語。
夏氷とも言う。

概要

かき氷とは、削った氷にシロップ等をかけた氷菓である(近年は削ったというよりも砕いたような切片状の氷がまん延しており、「これでは砕き氷だ」という意見もある)。
餡やコンデンスミルクをかけたものもある。

広義には、出来合いの市販品としてカップ入りのアイスクリームと同様の器に細かく砕いた氷と各種シロップを混ぜたものも指す。
市販品では、袋入りもある。
また、近似品としては甲子園球場名物となっているかち割りもある。

かき氷を売っている店では、氷旗(白地に赤い文字で「氷」と書かれた幟(のぼり))を掲げていることが多い。
夏季に社寺の境内で催される祭礼や縁日などでは綿飴・たこ焼き・焼きそばとともに代表的な縁日物(えんにちもの)の一つである。

歴史

史実上の記録は平安時代に清少納言の『枕草子』「あてなるもの」(上品なもの、良いもの)の段に、「削り氷にあまづら入れて、新しき金鋺(かなまり)に入れたる」と記述されている。
金属製の器に氷を刃物で削った削り氷(けずりひ、文中では「けつりひ」)に蔓草の一種であるアマヅラ(あまかづら・あまづら、ツタの樹液またはアマチャヅルの茎の汁と思われる)をかけたとの意味である。

1869年(明治2年)、神奈川県横浜市にある馬車道で初めての氷水店が開店する(日本においてアイスクリームを発祥させた店でもある)。

1882年(明治15年)頃に博物学者のエドワード・S・モースが、かき氷を食べたことを自著に記している。

昭和初期に氷削機が普及し、一般化する。

種類

同一のものであっても地域によって呼び名や盛りつけ方が異なる。

シロップ類

イチゴシロップ:赤色のシロップ

メロンシロップ:緑色のシロップ

レモンシロップ:黄色のシロップ

ブルーハワイ:青色のシロップでカクテルのブルーハワイを連想させる。
トロピカルフルーツ各種を添えることも多い。
ハワイアンブルーと呼ぶこともある。
レモン・オレンジ等の香料が使われ、ソーダに近い風味のものが多い。

水(すい):砂糖水(さとうすい)を略して水と言い、砂糖を煮詰めて作る無色のガムシロップをかけたもの。
「氷水(こおりすい)」・「みぞれ」・「せんじ」・「甘露(かんろ)」と呼ばれることがある。

レインボー:いろんな色のシロップをかけた多色のもの。

濃縮乳酸菌飲料:カルピスなどの濃縮液。
地域によってはそのまま「カルピス」と呼ばれることがある。

コーヒー:濃く淹れたコーヒー。
シロップや加糖練乳とともにかける。

黒蜜黒糖を湯で溶かしたもの。
台湾のかき氷では一般的。

加糖練乳:コンデンスミルク、単独でかけるよりもトッピングにされることが多い。

梅酒:一応「大人だけ」と書いてあるが、適当である。

イチゴシロップなどは、無果汁で着色料で色を付けたものがほとんどだが、果汁や果肉を混ぜたものも一部には存在する。

アイスクリーム:かき氷の上のトッピングとしてアイスクリームを乗せる場合もある。

宇治金時(うじきんとき):銘茶として名高い宇治茶を連想させる抹茶に砂糖と水を加え、茶筅で泡立てたシロップをかき氷にかけ、アズキの別称の金時(きんとき)を載せたもの。
つぶ餡のばあいは、抹茶の上に載せるようにかけ、漉し餡の場合はボール状にして添えることが多い。
下部に埋設することもあり、この場合単なる宇治氷と区別がつかない。
金時のアズキ色とかき氷の白、抹茶の緑の対比をさせるためにアズキの上に抹茶をかけることはない。
勿論、宇治だけのものもある(抹茶だけ)、また、宇治にミルクをかけたものを「宇治時雨」と呼ぶことがある。
組み合わせのバリエーションは相当考えられる。

氷小豆(こおりあずき):前記、水をシロップとしてアズキを載せたもの。

酢だまり氷(すだまりごおり):山形県山辺町周辺に伝わる酢醤油(酢溜まり)をかけた氷。
イチゴシロップなどとともにかけられる。
第二次世界大戦後の貧しい時期に、シロップなどが手に入らず何もかけないかき氷が食べられていた。
その頃にところてんなどに用いられていた酢醤油をかけ始めたとされる。

あかふく氷(あかふくごおり):伊勢路の夏の風物詩の一つ。
かき氷に赤福餅ならではの餡と餅、抹茶仕立てのシロップをかけたもの。
ほうじ茶が添えられる。
1961年(昭和36年)7月に三重県の伊勢名物である赤福餅を「赤福アイス」の名称で氷菓として海水浴客に供したのが興りとされる。
夏季には氷旗とは異なり赤福の赤い文字と青い氷の文字が書かれた看板が店先に置かれる。
餡はこし餡で、餅については白玉団子より柔らかく、ゆでた後に搗いた餅が入っている。

白くま(しろくま):発祥の鹿児島県、および九州でよく見られる名物氷菓。
ミカンやパイナップルの缶詰などの果物を盛り込み、アズキを乗せ、練乳をかけたもの。
この組み合わせでカップ入りの氷菓やアイスキャンディーも作られている。

ぜんざい:沖縄県の名物氷菓。
アズキなどをシロップで煮たものの上にかき氷をかけている。
しかし元来、「ぜんざい(善哉)」の語は関西などでつぶしあんの汁粉を指す。

白雪(しらゆき):プレーンのかき氷。
「プレーンはかき氷ではなくかち割りだ」とする人もいるが、中には愛好家もいる。

雪くま(ゆきくま):夏の猛暑で知られる埼玉県熊谷市で、町おこしの一環として、地元の水を利用したかき氷を考案し、市内の飲食店でオリジナルかき氷を競作した。

みかん氷・パイナップル氷:横浜スタジアムで売られているかき氷。
缶詰みかんもしくは缶詰パイナップルを乗せ、その上に缶詰のシロップをかけただけの、シンプルなもの。

作り方

作り方の一例を示す。
これらシロップのかけ方や量は地域差がある。

あらかじめかき氷を入れる器を冷凍庫などで冷却しておく。

器にかき氷器を用いてかき氷を若干載せ、シロップをレードル(甘露尺)一杯分をかける。

続けて、かき氷器を用いてかき氷を盛る。
この時、器は斜めに満遍なく回転させ山盛りになるように盛りつける。

シロップを1-2杯程度かける。

各種盛りつける果物や添え物などのトッピングを載せる。

呼称

かき氷:もっとも一般的に普及している呼び名。
東京方言の「ぶっかきごおり」から。
近畿で「かちわり(ごおり)」、奥羽で「こおりみず」など様々。

フラッペ (Frappe) :本来はクラッシュドアイスにリキュールなどの酒類を注いだ飲料。
日本ではかき氷にシロップをかけたものを指す事が多く、かき氷と同一のものとなっている。
和風喫茶や甘味喫茶ではかき氷と呼び、喫茶店やパーラーなどの和洋折衷または洋風の飲食店ではフラッペと呼ぶことが多い。
なお、岸和田市などの大阪府泉南では、かき氷屋さんが「かき氷にする?フラッペにする?」と聞いてくることがあり、その際、フラッペを選択すると、かき氷を手でぐっと押し固めたものにシロップをかける。


和風:涼しさを演出する透明なガラスや切子(きりこ)の広口の器を用いることが多い。
氷が溶けにくいように、肉厚の陶器の丼が用いられることもある。
明治時代には水呑コップや小圷などの汎用のコップが使われていた。
明治の終わり頃から氷コップと呼ばれる専用のガラス器も使われるようになり、この器は大正時代から昭和の戦前頃まであぶり出し技法などを駆使した独特の発達を遂げた。

洋風:器を手で持ったときに手の体温で氷が溶けにくいように細い脚が付いたガラス器を用いることが多い。

発泡スチロール:露店での販売では発泡スチロールの器がよく使われる。

コップ:露店での販売では紙コップが用いられる場合がある。
スムージーに近い、シロップや果汁の多い物もガラスコップ(グラス)に盛られる場合がある。

かき氷器

天然氷を刃物の刃先で削ぎ落としたのが始まりとされ、この方法は現代でも日本料理で用いられている。
さらに簡便な方法としては、野菜を薄切りにするスライサーを用いても同様のことができる。
その後、鉋の刃を上にしたカツオブシを削る鰹箱(かつばこ)、または前述のスライサーのような状態にした大鉋の上で滑り止めとして布巾などを被せた氷を滑らせ、削り落ちてきたものをすくうようになる。
1887年(明治20年)に氷商の村上半三郎が特許を取得して公に知られるようになった。

現代のかき氷器は鉋状の刃のついた台座の上で氷の塊が回転し、氷をスライス状に削りながら氷の塊を繰り下げていく仕組みをもつ。
氷削機、かき氷メーカー、フラップメーカー、ブロックアイスシェーバー、ブロックアイススライサーなどと呼ばれる。
英名はIce block shaver。

かき氷器には粉雪のように細かい粒子のかき氷を削り出すことができるものと氷の薄い切片状のかき氷になるものがある。
この要因として用いる氷の違いが挙げられる。
近年、小型で高性能ながらアイスストッカー付きのキューブアイス用製氷機が出回ってきたことや各種電化製品の普及により、かつては氷を入手するために必須であった氷商への依存度が激減した。
加えて重さ一貫(約3.75キロ)の角氷と言われるブロックアイスを扱う氷商も減少傾向にあることから、長い時間をかけて空気を抜きながら凍らせた角氷の入手は難しくなってきている。
さらに天然氷のように冬の間に暴露で凍らせておき需要があるまで氷室(ひむろ)でストックできる生産者も減ってきている。
このためかき氷器の製造メーカーはブロックアイス用からキューブアイス用に移行し、粉雪状のかき氷と薄い切片状のかき氷に二分された。

業務用は、古くは鋳物のフレームに大きな手回しハンドルが本体横に付いたものが主流であった。
後に氷を回転させるモーターが剥き出しで取り付けられているものに代わっていき、近年ではモーターを内蔵したスタイルに移行している。
併せてキューブアイス用のかき氷器が製造され、粉雪状ではなく細かい氷の粒のかき氷が普及するようになった。
現在でも手回し式のものはレトロ調として販売されている。

家庭用は手回しのものが多く、専用の円筒形の製氷皿で作った氷を用いる。
近年では一般的な製氷皿で作るキューブアイスを用いてもかき氷を作ることができる機種がある。
主に子供向けとして需要が高いため、安全面から金属製の刃は用いられないことも多い。
またペンギンや白熊など寒冷地の動物を模した形状のものも発売されている。

その他

夏氷の日:日本かき氷協会が、かき氷の別名である夏氷の読みであるなつごおりを7, 2, 5と語呂合わせして7月25日を夏氷の日として制定。

冷蔵庫の発達しない時期などは衛生的に優れないことがあった。

水を凍らす前に水に砂糖を溶かしてから凍らすと出来た氷がサラサラになっておいしくなる。

各国のかき氷

日本より暑い時期が長い台湾やフィリピンでは、年中食べられている。
中国語では「」(バオビン、、)という。
台湾語では「」(ツォーピン)ともいう。

アメリカではshaved ice(剃り氷)、snow cone(円錐形の雪)と呼ばれる。

芒果冰(マングォビン、):2004年(平成16年)ごろから流行した、マンゴーの切り身をたっぷり乗せ、マンゴーシロップと加糖練乳をかけたもの。
台湾台北市の「冰館」(ピングァン、)という店から台湾各地に広がり、日本にも上陸した。
マンゴーだけでなく、イチゴと2種盛り合わせたものも人気がある。
また、水ではなく、牛乳を氷らせたもので作るタイプのかき氷「雪花冰(シュエファービン、)」もある。
ちなみに台湾のかき氷()は、上に乗せる具の名前の後に「冰(氷)」という字を付けていう事がふつうである

八寶冰(バーバオビン、):かき氷の上に甘い煮豆をはじめ、多くの具を盛り合わせた物をものを台湾では「八寶冰(八宝氷)」という。
好みで果肉、ジャム、蜜煮の果物、QQと呼ばれる弾力のある団子、ライスヌードル、ナッツ、加糖練乳、鶏卵などが選べる。

刀削冰(ダオシャオビン、):台湾の別のタイプのかき氷。
手で包丁を持って削るので、粗い氷に近いものができる。
各種シロップと練乳をかけて食べる。

ピンス(朝鮮語:氷水、):大韓民国のかき氷。
代表的なのがパッピンス()。
代表的なのがパッピンス()で、名前には小豆(パッ)が付いているが、日本の氷小豆とは異なる。
湾の八寶氷同様に、小豆餡、缶詰フルーツ、餅などの具が豊富に盛られおり、味付けによくきな粉を使う点と、ピビンパ同様に食べる前に徹底的に混ぜるのが特徴的。
他に小豆抜きで、フルーツを乗せたクヮイルピンス(果実氷水、)など、いろいろな種類がある。

ハロハロ (Halohalo) :フィリピン風の、豆の餡、ナタ・デ・ココ、アイスクリームなど、豊富な具を乗せたかき氷。
Halohaloはタガログ語でごちゃまぜを意味する。

タッチェー:ベトナムのかき氷。
緑豆やココナッツ入りの白玉ぜんざい(チェー/che)がかき氷の上にかかっている。

シーフードかき氷:台湾には塩味のエビなどシーフードをトッピングしたかき氷を出す店がある。

コバルトアイス:蜂楽饅頭が出しているかき氷。
コバルトミルクと呼ばれる場合もある。
主に熊本県をはじめとした九州付近では知られている。
ブルーハワイと加糖練乳をかけたもの

[English Translation]