卵かけご飯 (Tamago Kake Gohan (egg-sauce over rice consisting of boiled rice topped or mixed with raw egg and optionally soy sauce))
卵かけご飯(たまごかけごはん)は、生の鶏卵と飯を混ぜ、少量の醤油等で調味して作る飯料理である。
卵を生のまま用いること、主食の飯と混ぜて食べることなどから、日本特有の食文化とされる。
呼称・表記
卵かけご飯には、さまざまな呼称・表記のバリエーションが存在する。
「卵ぶっかけご飯」、「卵ご飯」、「卵かけかけご飯」、「卵かけ」、「たまご飯」、「ぼっかけご飯」、「TKG(-Tamago Kake Gohan)」、などとも呼ばれる。
なお、「卵」の字に「玉子」が当てられることもある。
これは料理関係の用語に総じていえることである(鶏卵を参照)。
代表的な作り方
卵かけご飯の作り方は好みに応じて多様性がある。
準備
生卵
- 1個
飯
- 適量(約茶碗1杯)
醤油
- 適量(約小さじ一杯弱)
代表的な作り方
小鉢などに割り入れた生卵をよく溶きほぐし、醤油で調味する。
飯を茶碗に盛り、箸で飯の上に適当な窪みを作る。
溶きほぐした卵を飯に作った窪みに流し込み、卵と飯とを混ぜ合わせる。
この作り方では、飯に醤油が直接染み込まず、卵白や黄身をしっかり混ぜることができる。
カラザが気になる場合には、取り除くことも容易になる。
また、別の作り方として、下記のような方法もある。
飯を茶碗に盛り、箸で飯の上に適当な窪みを作る。
そこへ卵を直接割り入れ、飯と共にかき混ぜた後、醤油で調味する。
茶碗に卵を割り入れて溶きほぐし、醤油などで調味しておいてから、飯をよそう。
茶碗に盛った飯を醤油で調味し、飯の上に作った窪みに直接卵を割り入れてほぐす。
飯と卵と醤油を、口の中で溶け合わせながら味わうことができる。
この料理は簡単な作り方であるものの、かき混ぜる際に飯の量が少なかったり、窪みが大きすぎたりすると卵とのバランスが崩れるなど、食感が変わることがある。
また、窪みを作る際に窪みをあまりに小さくしすぎると溢れることもある。
更にかき混ぜる速さ・強さ・時間は好みに応じて異なり、白身を完全に切ったサラっとした状態から卵黄が割れているだけの状態まで幅広い。
温度も重要であって、食感と味に影響する。
飯の温度が高く、卵も室温になっていれば、卵は半熟状態になる。
したがって、粘性が増し、甘みが増す。
逆に、飯と卵の温度が低いほど、粘性が下がる。
炊きたての飯を使うと卵のタンパクが熱のために変性し半熟状態になりやすい。
これを嫌う人は、炊き上がった後炊飯器でしばらく保温され粗熱の取れた飯を使うか、飯を茶碗によそって窪みを作ってからある程度冷めるまで時間を置いたものを使うとよい。
温度には、飯の量と卵の大きさも影響する。
生卵の卵黄と卵白を分離し、黄身のみを用いる作り方もある。
卵白の水っぽさがないため、濃厚な卵の風味が楽しめる。
残った卵白は捨てるのが一般的だが、そのまま飲んだり、メレンゲ (菓子)にして食べる者もいる。
ただし卵白にはコレステロールを抑える成分が含まれているとされているため、黄身と同時に摂取した方が健康によい。
調味には醤油のほか、めんつゆ(素麺つゆ)などを用いることもある。
調味の詳細は、卵かけご飯食べ方を参照のこと。
食べ方
味つけは、一般的には醤油を用いることが多い。
ただ、その調味についても、次のようにいくつかの方法があり、食べ方にも多様性がある。
醤油を適宜注ぎ足し、味加減を確認しながら食べる方法。
少々の塩加減の多寡は気にせずに、目分量で醤油を加えて食べる方法。
朝採りの卵が入手できた場合などは、まず調味せずに、一口食べて卵の香ばしい陽の匂いを楽しんだ後、醤油で調味して食べる。
好みに応じて、後述のトッピングや調味料を用いる。
また、卵の黄身だけを醤油に数分間漬けて載せて食べる方法もある。
ホテルや旅館等で提供される典型的な和朝食には、片口(かたくち)と呼ばれる小鉢に、割っていない卵が入れられ、もしくは、既に卵が割り入れられて、供されることがある。
この卵は、生卵のまま飲みこむか、または卵かけご飯に用いる。
和朝食には卵の他に、飯と味噌汁、漬け物、水産加工品(鯵の干物や乾燥海苔、もしくは海苔の佃煮)、卵焼き、および納豆等が配膳されることが多い。
そこで、卵と飯、納豆を合わせ、卵納豆飯として食べる場合もある。
また最近は、生卵ではなく、白身が凝固した半熟卵や、黄身がやや固まり白身はやわらかい温泉卵が供される傾向もある。
これは、一度火を通すことで生卵が苦手な人も食べやすくなり、洋朝食にも用いることができるため、また、供食側も扱いやすくなり、温泉卵という名前で温泉気分を出すこともできるため、広く用いられるようになった。
卵かけご飯は時間が経つと卵の水分を米粒が吸い込む為、食感が悪くなり、個人差はあるものの、大抵の人は食べにくく感じる。
愛好家の多くは、飯に卵をかけてから3分、早くて1分以内、遅くても5分以内には平らげてしまうだろう。
勢いよく、一気にすすりこむ食べ方が好まれるが、のどを詰まらせ易いため、個々人がちょうど良い速度を体得することが重要である。
もちろん、ゆっくり食べても食感を気にしなければ何ら問題は無い。
食べ方の種類
その作り方は好みによって各種存在する。
(テレビ東京:和風総本家等参考)
直かけ派。
卵をご飯に直接かけ、そこに醤油を適量かけて食べる食べ方。
ご飯に窪みをつけてそこに落とす派。
何もせずそのまま落とす派。
卵ののせ方ではなく、醤油のかけ方にこだわる食べ方。
卵のみならずご飯にも醤油をかける派。
卵のみ、もしくはご飯にのせた卵に穴を開け、そこに注ぎ込む派。
上記を組み合わせた食べ方。
後かけ派。
器に卵を割って、そこに醤油や他の調味料を混ぜ込んでからご飯にかける食べ方。
醤油を適量入れ、よく混ぜてからかける派。
醤油を入れた後、軽く混ぜてからかける派。
醤油に砂糖を加え、すき焼きの割り下に卵を混ぜたような味にしてからかける派。
醤油のみならず、おかかなどを加えてからかける派。
器に卵を割ってかき混ぜてからご飯にかけ、最後に醤油をかける食べ方。
卵のどの部分を使用するのか派。
全卵を使用する派。
黄身だけを使用する派。
(白身だけかける派は確認出来ていないが、存在する可能性は捨てきれない。)
卵にご飯投入派(卵かけご飯の逆パターン:生卵とご飯の食事の1例)
卵を溶いて調味料を入れ混ぜた器にご飯を入れる派。
厳密には卵かけご飯とは呼べない。
「卵ご飯」と呼ぶべきである。
様々な卵かけご飯
卵かけご飯は飯と生卵のほのかな甘みと醤油の塩辛さとコクを味の基調としている。
日本国内で流通している米はジャポニカ米であり、長粒種のインディカ米やジャポニカ種とインディカ種の中間のジャバニカ米に比べて小粒で長さも短く短粒種米と呼ばれている。
米専用の炊飯器で炊くとジャポニカ種特有の粘り気が現れ、澱粉のアルファ化度が高くなり淡い甘味がある。
炊いた米には若干の粘り気があることに加えて温かくても冷めていても複数回噛んでいるうちに甘味が増す。
最近は、様々な薬味やトッピング、また醤油以外の調味料を使う場合がある。
地産地消の地鶏などを扱う焼き鳥屋では通常は知らされていない裏メニューの品目に地卵や有精卵を用いた玉子かけ飯を加えている店がある。
加えて醤油の代わりに焼き鳥のたれをかけたものもある。
裏メニューに通じた常連は卵と飯をそれぞれ単品で注文し、客自らが好みの作り方と食べ方で好評を得ている。
その他、牛丼や寿司のマグロユッケなどでも生卵と飯を使う。
寿司の場合、通常軍艦巻では、そのサイズに合わせるため鶏卵ではなく、うずらの卵を用いる。
地域的な食べ方であるが、大阪などの関西では、カレーライスのトッピングとして生卵を乗せることが少なくない。
これは、大阪市にある自由軒の「名物カレー」(インデアンカレー)という、飯とカレールーを混ぜたものの上に、生卵をのせたものが原型で、カレーと飯が混ざっていない一般的なカレーライスにも波及したものである。
さらにウスターソースを加える場合も多い。
このような食べ方の背景として卵かけご飯の存在があったことが指摘できる。
日本以外では、大韓民国の石焼きビビンバやユッケなどによく似た形式を見る事が出来る。
だがこれは、石焼きの器に白飯と味付けした具を載せそこに生卵を入れてかき混ぜてしまうため、実際は生卵を食べるとは言いがたい。
中華人民共和国の香港や広東省、広西チワン族自治区にはボウチャイファン(ボウチャイファン:ボウは「保」の下に「火」と書く)と呼ばれる肉や野菜をトッピングする土鍋飯があり、このオプションの具として卵を追加できるシステムとなっている。
しかし、これも炊きあがり直前に生卵を載せるものの、食べる際には半熟以上に固まっているため、生卵を食べるとは言いがたい。
ただ、この料理にかけられる、ごま油、オイスターソース、醤油をほぼ同量ずつ混ぜた、たれは卵かけご飯に使用しても悪くない。
生卵は冷凍保存できないことから、南極観測隊では年に一度の御馳走として卵かけ御飯が振舞われた。
トッピング
卵かけご飯は総じてビタミン類が少ないため、栄養バランスを考慮すると浅漬け等の漬物類を多くとると良い。
また、納豆やとろろ芋等とともに食べる場合は十分咀嚼するよう留意する。
味付け海苔、海苔、青海苔
- 少量であってもカルシウムや各種ミネラルを多く含む。
ふりかけ
- 海苔等の香ばしさが加わり、最適な味を探すのも楽しい。
ゴマ
- ビタミンEが豊富である。
刻んだ漬物
- ビタミンC、食物繊維が豊富。
ちりめんじゃこ(しらす干し)
- カルシウムが豊富。
卵
- イクラなど
- ビタミンEが豊富である。
納豆
- ビタミンKが豊富である。
大根おろし、ニンジン
- 前者は薬味代わり、後者は甘みが出る。
醤油などの調味料が必要。
ビタミンC、ビタミンAが豊富。
刻んだネギまたはワケギ
- ビタミンCが豊富。
ウナギ
- 早く言えば、うな丼の下に卵かけ飯、醤油でなくウナギ蒲焼のたれ。
ダイコンの葉の炒め物
- 胡麻油で炒め、出汁醤油で味付けたもの
その他鰹節、ヤマノイモ、とろろ昆布、梅干し、明太子、チーズ、キムチ、塩昆布の細切り、なめたけなども考えられる。
玉子かけご飯専用醤油
玉子かけご飯にかける醤油(熊本市の濱田醤油が開発)
おたまはん(雲南市の株式会社吉田ふるさと村が開発)
ポン酢醤油
- 特に柚子の香りの高いものなどを醤油の代わりに用いる。
さっぱりとしていて、鶏卵の臭みも多少抑えられる。
バター
- ビタミンAを含み、栄養素の補完としてスプーン1杯に相当する約10g程度を加えると良い。
魚醤(しょっつる、ナムプラーなど)
その他のバリエーションとして塩、蕎麦つゆ、麺つゆ、味噌、マヨネーズ、うま味調味料、ウスターソース、オイスターソース、胡麻油、XO醤、豆板醤、山葵、カレー、七味唐辛子、ラー油、すき焼きのタレなどが挙げられる。
現代の料理として
一般的に日本では、原材料を加工調理した食品を「料理」として位置づける傾向があるため、単に飯の上に卵をかけた卵かけご飯は「料理」ではないとする意見がある。
例えば、納豆をかけただけの納豆飯を「料理」と呼ぶ人は少ない。
その一方、生食の極致とも言えるシロウオの踊り食いは食材に何ら手を加えていないが、高級料理の逸品として食通に広く知られている。
生魚を切っただけの刺身もまた、完成された日本料理として、世界的に認知されている(刺身については、高度な技巧を要する調理法との指摘もある)。
料理研究家栗原はるみは、2004年に発刊した外国人向けの料理書『ジャパニーズ・クッキング』で、卵かけご飯を紹介している。
このように、調理を施すか、複雑な調理方法を用いるか否かによる「料理」の定義は定かではない。
日本国内では、最も簡単で手早く食べることのできる料理品目の一つとして知られており、特に朝食メニューとして、多くの日本人が一度は口にしたことのある品目である。
生卵を熱い飯に掛けて食べるという特性上鶏卵独特の生臭さが目立ち、好き嫌いの分かれる料理でもある。
日本人の一般的な食習慣では、起床から出勤・登校するまでの気忙しく限られた時間内にとる必要のある朝食は、三食の中で、最も質・量ともに軽い品目で済ませる。
昼食は、健康を考えて調理された栄養バランスの優れた手作りの弁当、もしくはコンビニエンスストアや弁当屋で販売している弁当や、ファーストフード店で購入した食品(ジャンクフードとみるむきもある)を友人や会社の同僚・取引先と会食するなど、家族以外の人々と摂ることが多い。
夕食は、一家団欒で家族全員がその日の出来事などを話し、朝食や昼食に比べて時間をかけて、多くの量を食べることが多い。
卵かけご飯が朝食時に摂られることが多い理由は、第一に短時間で食べ終わることができる点である。
この理由は、飯に生卵を加えることで、炊いた米特有の弱い粘り気が減り、米粒一つ一つが分離して流動化し、流し込むように掻き込んで食べることができるためである。
このため、たとえば前日の酒量がたたって、食欲不振で昼食までの間に必要とする量が摂れない気分の時でも、流し込むように食べることができ、多くの量を摂ることができる利点がある。
一般的な日本食では、味噌汁と惣菜の品数を「一汁一菜(いちじゅういっさい)」のように表現する。
飯茶碗一膳の飯の量を消費する時間は、一般的な食事作法・習慣から考えると、惣菜としてのおかずを順々に一口ずつ食べて、全品を平らげながら食べ終わることから、飯茶碗一杯分の飯の消費は、食事時間とほぼ同じ傾向がある。
また、手軽さ、安さ、栄養などの面から、就職や進学等で一人暮らしをはじめる際に、好んで食べられる場合がある。
現在では、コンビニエンスストアや外食産業、外食産業が盛んなため、往時ほどではないが、根強い人気を誇る。
近年、鶏卵の価格は1個10数円と安いため、昼の定食を食べる客には、サービスとして、生卵を無料で食べられるように置いている食堂も少なくない。
卵を取る客は、ほとんど卵かけ飯として食べる(味噌汁に入れる、丸呑みする、などの例外もある)。
2008年には、岡山県美咲町に、卵かけご飯を中心のメニューとした定食店が開店した。
美咲町は卵かけご飯を日本で最初に食べたとされる岸田吟香の出生地でもある。
歴史
日本において、鳥類が産む卵を食用とするようになったのは比較的新しく、卵かけご飯を食べるようになったのは明治時代である。
日本は周囲を大海に囲まれ山が多いという地理的条件から、全長が短く流れの速い川が多く、淀みなく流れ有毒な細菌が繁殖しにくい水に恵まれていた。
このため、魚介類等の刺身を始めとして旬の山菜を生のままでも清潔に調理することができ、生食する料理が少なからず存在する。
その一方、牛や馬などの大型哺乳類は、農耕の重要な労働力として家畜化され、食用にすることは少なかった。
一部の哺乳類は山河の守り神や神仏の使いとして崇められていた。
食用にする際は、長い耳を羽根に見立て味が鳥に類似していることから、鳥類の一種としてのウサギや、海に棲むクジラを魚類として認識していたことから、山鯨としてのイノシシのような一部を除き、主に鳥類や魚介類を摂ってきた。
平安時代以降、卵は神仏に供えるものであり、食べると罰が当たるとされていた。
一般的に鶏卵を食べるようになったのは、江戸時代とされる。
近代に入った1877年頃、日本初の従軍記者として活躍し、その後も数々の先駆的な業績を残した岸田吟香(1833年 - 1905年)が卵かけご飯を食べた日本で初めての人物とされ、周囲に卵かけご飯を勧めた。
その後、生卵は第二次世界大戦後の食糧難の時期を経て、高度経済成長期に至る直前までは希少価値があり、病人食や虚弱体質の栄養補給として用いられることが多かった。
一般庶民が卵を気兼ねなく口にできるようになるのは、高度経済成長期以降である。
卵の生食
現代日本では卵を生食できる食品として認知されているが、日本以外のほとんどの国では卵を生食する食習慣は無い。
卵を食す場合は、完全に火を通した調理が一般的である。
日本以外の文化圏で育った人にとって、生卵を食する習慣はカルチャーショックであり、時にはゲテモノ食と映る可能性もある。
アメリカ映画の『ロッキー_(映画)』では主人公が複数の生卵を飲み干すシーンがあるが、日本人と日本人以外では受け止め方が異なる可能性がある。
また、香港映画の『少林サッカー』では、ぼろ靴の上で潰れた生卵を吸うシーンでいじましさを演出している。
元来生卵はサルモネラ食中毒などを起こしやすく、安全に食べられる地域は日本など一部に限られている。
例年海外では、卵の生食で食あたりする日本人が少なくない。
生食を前提にしている日本では、鶏卵農家が卵の完全洗浄など衛生管理全般が行き届いているが、それでもサルモネラ食中毒が近年増加傾向にあり、一定の注意が必要である。
サルモネラ属菌は、主にはニワトリの腸管におり、卵を産んだ後に糞便等から卵の殻に付着することが多い。
日本ではGPセンターで次亜塩素酸ナトリウムにより卵を殺菌処理している。
生卵を食べる場合は、「ひび割れた卵」や「割れた卵」、「割ってから2時間以上経過した卵」を使用するのは危険である。
このような情報は厚生労働省や各地の保健所からインターネットを通じて広報されている。
ただし、産卵後の汚染以外に、菌を保持している親鶏から卵巣や卵管を経由して菌が卵の中に付着する感染経路もある。
従って、卵を生食する限りサルモネラ菌を完全に予防することは不可能である。
米国国内の鶏卵業者は アメリカ食品医薬品局 や 世界保健機関 等の加熱処理のガイドラインに従って生食を前提にした飼育をしていない。
割り入れた生卵は低温殺菌したもの・卵白と卵黄を分けたもの・各種栄養素を添加したもの等を牛乳パック様の容器に入れられて店頭に並ぶ。
これらの多くは冷凍保存が可能である。
また、殻付きでは低温殺菌して白身が半ば固まった卵がパック入りで販売されている。
特に防疫に注力しているオーストラリアではオーストラリア国内に持ちこめない食品として卵や卵製品が検疫検査局の品目として挙げられている。
一部の東南アジア諸国では卵の外部はもとより内部にも細菌の存在が確認されている。
卵の輸入制限は各国の国内鶏卵業者への保護を目的とする他にも鶏卵が有する各種細菌がもつ食品衛生上の観点からも重視されており、各国で輸入規制対象物品に指定されていることが多い。
日本の検疫では四類感染症まで輸入規制できるが、サルモネラ食中毒は四類感染症ではなく、他の事由が必要となる。
諸外国では鶏卵を生食する例は皆無に等しく、卵かけご飯は日本独特の食品流通と衛生管理を背景にしている。
栄養素
鶏卵にはコレステロールが多いと言われ敬遠気味にされる事が多く、過去に於いて高脂血症などの症状の患者の食事としては敬遠された事実がある。
しかし、近年ではコレステロールの制限を行う高脂血症患者にも卵を勧める医師もいる。
これは、高脂血症患者には太り気味の者が多く、これらを是正する為には、良質のタンパク質が必要とも言われているからである。
もっとも、卵食を勧められるのはあくまで薬の服用や食餌療法により、血中コレステロール値がきちんと制限されている患者に限られる。
また、勧められるとはいっても高脂血症患者が卵を無制限に食べてよいわけではなく、少なくとも健常時と同じ感覚で摂取するのは好ましくない。
患者個々の状態により制限される数は異なるが、1日1個程度を目安に摂取するとよい。
鶏卵に含まれる蛋白質の栄養価は理想的とされ、アミノ酸スコア(蛋白質の栄養素としての価値を計る基準として、蛋白質を構成するアミノ酸のうち必須アミノ酸の組成により決定される)が最大値の100になっている。
いっぽう、白米中に含まれる蛋白質はリシン、およびスレオニンの含量が低く、アミノ酸スコアも60とあまり良好とは言えない。
そのため、ここに卵を加えることでその栄養価を多少なりとも高める効果が期待できる。
主に、悪玉コレステロールの多いのは黄身部分であるが、反面、白身はそれを打ち消す善玉コレステロールが多いとも言われている。
また、全蛋白質のうち65%程度が卵白中に含まれている。
卵黄に含まれる蛋白質に比べ、卵白のそれは栄養素としての質はやや劣るものの、卵かけご飯における栄養面の改善効果は黄身のみを用いる方法よりも、全卵を用いる方が高いといえる。
以下の表に、卵かけご飯の各栄養価を示した。
卵食は太ると思われ気味であるが、明らかに間違いである。
朝食において良質のタンパク質や炭水化物を摂取する事は、1日の生活に於いてエネルギーの燃焼効率が良いと言われ、間接的には規則正しい食生活にも繋がり体重の軽減に役立つと見られている。
卵かけご飯はこれらの栄養価が含まれているため簡易な朝食としては優れた料理とも言える。
しかしなお、いくつかの栄養素で著しい欠乏が認められるため、適宜、副菜の摂取、後述のトッピング、強化米を飯に加えるなどして栄養バランスを調整補完する必要がある。
また、生卵白中のアビジンは、ビタミンB群のビオチンと強く結合する性質があり、ビオチンの吸収を阻害する。
生卵の大量摂取でビオチン欠乏症を引き起こす可能性がある。
卵はM玉1個として60g。
飯としては中学・高校生の学校給食における標準をもとに110gとして評価した。
表の1日当たりとは卵かけご飯を三食食べた際の指標として掲げてある。
下表は諸外国の人々が日本人同様に卵かけご飯を食べた場合の栄養比較として、栄養情報基盤データベースシステムの統計値を元にして最も多く栄養所要量を摂取する世代を一覧化したものである。
アレルギー
一般によく知られているように、鶏卵は食物アレルギーの原因となる頻度が最も高い食品である。
乳幼児によく見られるものの場合、主に卵白に含まれる蛋白質のうちのいくつかが強いアレルゲン活性を示すことが知られており、これらの活性は加熱によって多少軽減されることも知られている。
卵を生のまま食べる形態となる卵かけご飯、特に栄養価として改善効果がより高いと思われる全卵を用いた卵かけご飯は鶏卵アレルギーを持つものにとって最も過酷な摂取条件となる。
基本的に卵アレルギーは重篤な症状を示す傾向があり、この場合、卵かけご飯を食べることはできない。
なお、鳥飼育歴のある女性を中心に、成人になってから鶏卵アレルギーを示すことが希にある。
この場合、卵黄に含まれる蛋白質が主たる原因となっている。
実験的には、生の状態に近いアレルゲン活性を低減させた卵白が作られている。
現在でも研究が進められている低アレルゲン性卵白の製造が可能になった。
低アレルゲン化卵が実用化されれば、アレルギーの寛解を導く食品として卵かけご飯を利用するようになる可能性はあるかもしれない。
米も食物アレルギーの原因となる事が知られている食品の一つであり、アレルゲンは糠の部分に含まれている事がわかっている。
程度にもよるが、米アレルギーの症状が軽い場合、無洗米あるいは低アレルゲンをうたった米ならば摂取可能な場合がある。
通常の醤油は、アレルギー源となる事で知られる大豆あるいはコムギを原料として使用しており、これらに対してアレルギーを起こす事がある。
この場合、ゴマ、アワ、ヒエあるいはキビといった雑穀を原料とした醤油を使う事で、アレルギー症状の発現を抑えられる場合がある。
食中毒
卵の生食はサルモネラ菌による食中毒のリスクを含む。
詳しくは厚生労働省のに表示されているが、特に卵の生食においては以下のような注意が必要である。
きれいでひび割れのない新鮮な卵を用いる
持ち帰った卵はすぐに冷所で保管する
食べる直前に殻を割る
また、同文書には「食品工場等は、殻付き卵の輸送、配達及び貯蔵は、10℃以下で行うべきである。」との記述があるが、これは消費者側で全て確認することは出来ない。
スーパーの特売など冷蔵されない状態で売られている卵を買うときや、野菜などと共に配達される卵を入手したときは、卵の状態について特に注意すべきだろう。
膵臓炎と生卵の関係
生の状態での卵の白身を食すと、消化酵素のアミラーゼが多く分泌される。
慢性、急性にかかわらず、膵臓炎の治療後に栄養があるからと生卵を食すと、腹痛を引き起こす恐れがある。
膵臓炎が完治するまで控えたほうがよい。
関連イベント
2005年10月28日・29日・30日
島根県雲南市において卵かけご飯の魅力を語り合うシンポジウム「《第1回》日本たまごかけ飯シンポジウム」が開かれた。
これは卵かけ専用の醤油「おたまはん」を同市の第三セクター「吉田ふるさと村」が開発したことに起因するものである。
シンポジウムの内容は歴史や魅力について語り合うものであり、卵かけご飯にまつわる思い出や料理法が募集された。
その中で「卵かけご飯の日」が10月30日に制定された。