朱雀門の鬼 (Ogre of Suzaku-mon Gate)

朱雀門の鬼(すざくもんのおに)は、平安京の朱雀門に棲んでいたといわれる鬼。
多くの鬼が現れたといわれる古代平安の都でも最も恐れられたが、一方では笛をたしなむなどの芸才もあったといわれる。

概要

平安時代初期の文人・紀長谷雄にまつわる怪奇譚『長谷雄草紙』に、朱雀門の鬼と長谷雄にまつわる逸話が以下のように記述されている。

すごろくの名手でもある長谷雄のもとに、あるときに妙な男が現れて双六の勝負を申し込んだ。
長谷雄は怪しみながらも、勝負を受けて立った。
勝負の場として長谷雄が連れて来られたのは朱雀門であった。
男は何の手がかりもなく門をするすると昇り、昇れずにいた長谷雄を担ぎ上げて楼場に昇った。
この男こそ、朱雀門の鬼が化けた姿であった。

長谷雄は勝負に全財産を賭け、鬼は絶世の美女を賭けると言った。
双六は長谷雄が勝ち続けた。
勝負に敗れた鬼は後日、美しい女性を連れて長谷雄のもとを訪れ、百日間この女に触れてはならないと言い残し、女を置いて去って行った。

長谷雄は最初は言いつけを守っていたものの、80日が過ぎる頃には我慢できなくなり、ついにその女を抱いた。
たちまち女の体は、水と化して流れ去ってしまった。
その女は、鬼が数々の人間の死体から良いところばかりを集めて作り上げたものであり、百日経てば本当の人間になるはずだった。

さらにその3か月後、長谷雄の乗る牛車のもとにあの鬼が現れ、長谷雄の不誠実を責めて襲い掛かった。
長谷雄が天の助けを一心に念じると、天から「そこを去れ」との声があり、鬼は消えるように去って行ったという。

[English Translation]