沢庵漬け (Takuan-zuke)
沢庵漬け(たくあんづけ)は、ダイコンを糠と塩で漬けた漬物。
「たくあん」「たくわん」などとも呼ばれる。
製法
伝統的な製法では、よく曲げられるほどまで日干しにしたダイコンを糠と塩、さらに風味付けにコンブや唐辛子、カキノキの皮などを加えて漬ける。
色は無着色だと主に薄褐色だが、ウコンやクチナシで黄色に着色したものの方が一般的である。
現在流通している大多数の沢庵漬けでは、日干し大根の代わりに塩や糖液に漬けて水分を除いた塩押し大根や糖絞り大根を使用することが多い。
そのため、伝統的な沢庵とは食感が異なる。
また、甘味料やうま味調味料などを配合した調味液で調味したり、人工着色料で色づけするなどして加工されることもある。
これは時代が下るにつれて消費者の嗜好が変化し、より低塩分な漬物を求めるようになったことの帰結でもあるのだが、そのため、近年の食品工業的なたくあんに対しては、主に高齢層から、甘い、食感が悪いなどという意見が見受けられる。
昔食べた、昔ながらの塩辛い沢庵を懐かしむ意見も多い。
歴史
一説には沢庵宗彭が考案したものという言い伝えがあるが、確たる証拠はなく異説もある。
元々『「じゃく」あんづけ』と呼ばれており「混じり気のないもの」という意味であったが、後に沢庵宗彭の存在が出てきたことにより、「じゃくあん」→「たくあん」→「沢庵和尚の考案したもの」という考え方が広まったという説もある。
また、「たくわえづけ」が転じたものという説もある。
沢庵宗彭が創建した東海寺 (東京都品川区)では、「初めは名も無い漬物だったが、ある時徳川家光がここを訪れた際に供したところ、たいそう気に入り、『名前がないのであれば、沢庵漬けと呼ぶべし』と言った」と伝えられている。
なお東海寺では禅師の名を呼び捨てにするのは非礼であるという考えから、『百本』という呼び名を用いている。
雑学
日干し大根を用いた伝統的な製法の沢庵は、古くなった場合塩抜きして油いためにしたり、たくあんの煮物などの料理に使用することがある。
和食料理店などで、おかずの一品として沢庵が二切れ付いてくる事がよくあるが、この沢庵を二切れ出すという習慣は、江戸時代から始まったといわれている。
侍が世の中の中心だった江戸時代、沢庵はおかずに欠かせない定番で、当時、侍に沢庵を一切れ、もしくは三切れだけ出すのはタブーだった。
それは、沢庵を一切れだけ出した場合、侍は「一切れ(人を斬れ)と申すのか!」と怒り出し、また、三切れ出した場合は「三切れ(身斬れ、つまり腹を切る)と申すのか!」と怒り出すためである。
そこから、沢庵を二切れ出すという習慣が生まれたという。
ただしこの理由は江戸を中心とした武家政権が確立された地区の習慣だとする説もある。
関西では沢庵付けを三切れ出す事は縁起を担ぐ(三方)ものとされ、関西の丼専門店ではあえて三切れの沢庵付けを出す店もある。
大韓民国にも沢庵漬けがある。
日本統治時代に持ち込まれたもので、日本語のたくあんが朝鮮語式発音に変わった「タカン」またはそれに相当する固有語の造語である「タンムジ」という。
タンは甘い、ムは大根、ジは漬けものの意味。
味は甘酸っぱい傾向があるもののほぼ同じ。
朝鮮固有のチャンジという漬物もあるが、これは名前通り(チャン:塩辛い)味が非常に塩辛い。
また韓国では日本料理店のみならず、洋食を供するレストランでも沢庵漬けが出されることがあるが、これは洋食そのものが日本から伝わったものであるために定着した現象である。