粥 (Kayu)
粥(かゆ)は、米(粳米)、アワ、ソバなどの穀類や豆類、芋類などを多目の水で柔らかく煮た料理。
高齢者を中心に「お粥さん」と呼ぶ者も多い。
粥の上澄み液を重湯(おもゆ)という。
概要
穀類、水、熱源と鍋ひとつがあれば簡単に調理できる料理である。
粥は消化が良く、体も温まるため、胃腸が弱っている時や風邪などの病気の際に食べる事が多い。
また、離乳食としても用いられる。
精進料理の主食としても欠かせない。
朝食に食べる人も少なくなく、ホテルのレストランなどでも朝食に出す場合がある。
日本以外もシンガポール、マレーシア、タイ王国など東南アジアでも一般的な食事である。
また、中華人民共和国や朝鮮半島などアジアだけではなくヨーロッパやアフリカにも粥がある。
フランスのブルターニュ地方では古くからそば粥が庶民の常食とされていた。
中欧や北欧では、最も量の多い食事を昼に食べる習慣があると夕食は粥で軽く済ませることも多い。
ドイツでは、オートミール、ソバ、米、セモリナなどの粥を穀物のスープと呼び、バター、砂糖、シナモン、レーズン、果物のコンポート、種実類などを加えて食べる。
ロシアにもカーシャという粥がある。
砂糖を入れて甘く作った牛乳粥は南アジア、西アジア、中近東、ヨーロッパ、北アフリカにかけての広い地域で見られる。
例えばスペイン語圏の各国では「アロス・コン・レチェ」として、主に子どもが喜ぶおやつとしてよく食べられている。
粥の水分を少なくすればプディング、多くすればスープに近くなる。
江戸時代に引越し蕎麦の風習が始まるまでは、引越しの際には粥を近所に配っていた。
調理法による分類
入れ粥
一度通常の水分量で炊いたご飯を使う粥。
ご飯の倍程度の量の白湯を加えて炊きなおして作る。
余りご飯を粥にして食べる場合などの調理法である。
易しく作れるがおねば(粘り気のある汁)が出易く、炊き粥にくらべると味が落ちる。
炊き粥
生米から炊いて作る粥で、米と水の分量比により呼称が異なる。
後述する茶粥の場合はかき混ぜても米が崩れにくい。
しかし、白粥の場合は炊くときにかき混ぜると米が崩れ、おねばが出て味が落ちる。
したがって、あまりかき混ぜない方がよい。
吹きこぼれない程度の強火で、米が自然に対流するように炊くのが良いといわれる。
水分量による分類
(注:同じ呼称でも米と水の分量比が異なったものが複数存在するようである。詳しい人による詳細を希望)
全粥
米の5倍量の水で炊く。
七分粥
米の7倍量の水で炊く。
五分粥
米の10倍量の水で炊く。
三分粥
米の20倍量の水で炊く。
具や味付けによる分類
白粥(しらがゆ)
米を水で炊くだけで、具を入れていないもの。
味も付けないことが多いが、少量の塩を加える場合がある。
漬け物、梅干し、塩辛、しらす乾し、佃煮、落花生など、さまざまなものを付け合わせに食べる事が多い。
黒米粥(くろまいがゆ)
黒米を水で炊いたもの。
茶粥(ちゃがゆ)
米をほうじ茶で炊いたもの。
牛乳粥(ぎゅうにゅうがゆ)、ミルク粥(ミルクがゆ)
米を牛乳で炊いたもの。
甘くするとライスプディングになる。
霰粥(あられがゆ)
米の粥の上に出汁を張り、鯛などの魚の切り身を乗せたもの。
芋粥(いもがゆ)
米の粥にヤマノイモまたはサツマイモを入れて煮た粥。
カーシャ(ロシア語:Каша)
エンバク、米、セモリナ、ソバ、キビなどから作るロシアや東ヨーロッパの粥。
ブブル(bubur)
白米や黒米で作るマレーシアとインドネシアの粥。
米の他に、豆のものもあり、甘いものもある。
ジョーク、カーオ・トム
卵、ショウガなどで味付けしたタイ王国の米の粥。
肉が入ることもある。
ポリッジ(英語:enPorridge)
穀類を水や牛乳などで炊いた粥。
生クリーム、バター、砂糖などを加えて食べる。
オートミールとセモリナのポリッジ(クリーム・オブ・ウィート)が最も一般的である。
その他にコムギ、オオムギ、米、トウモロコシの粉、エンドウマメの粉などもポリッジになる。
グリュエル(英語:enGruel)
ポリッジよりも薄く水だけで炊いた粥または重湯のこと。
ポレンタ(Polenta)
粗く挽いたトウモロコシの粉を水またはだし汁に溶き、かきまぜながら煮た北イタリアの粥。
トウモロコシ粥はクロアチアではジュガンツィ(žganci)、ルーマニアではママリガ(enMămăligă)、北アメリカではマッシュ(enMush (maize)) と呼ばれている。
ウガリ(Ugali)
トウモロコシやキャッサバの粉から作るアフリカ東部、南部、北部の料理。
水分が多いと粥状になる。
パップ(enPap (food))
トウモロコシの粉などから作る南アフリカの粥。
アロス・コン・レチェ
砂糖を入れて甘くしたスペイン語圏の牛乳粥。
中国の粥と呼び名等
中国では全般に用いる「粥(ジョウ)」の他、米のものを「大米粥(ダーミージョウ)」、「稀飯(シーファン)」、「糜(ミー)」なととも呼ぶ。
三分粥のような薄いものはスープ扱いで「米湯(ミータン)」、「撩命湯(リャオミンタン)」などと呼ぶ地域もある。
地域によって、どの程度まで煮込むかの違いもある。
広東省では半分形が無くなる程度まで煮込むことも多い。
中華粥の場合、日本の粥より米が原型を残していない場合が多い。
中華粥(ちゅうかがゆ)
中国風の米の粥。
白粥の他、ニワトリや干し貝柱(茹でたホタテガイやタイラギの貝柱を天日乾燥したもの)などの出汁で炊くことが多い。
水分量は五分粥と同程度。
具入りのものも各種あり、魚、カキ (貝)、牛肉、鶏肉、するめ、モヤシ、落花生、皮蛋、鶏卵などさまざまなものを用いる。
ショウガやネギを薬味にし、油条を付け合わせとする。
粟粥(あわがゆ)
中国の華北でよく食べられているアワを使った粥。
中国語で「小米粥(シャオミージョウ)」などという。
山西省では、「稀粥」というと粟粥を指し、「稠粥」または「乾粥」というとご飯のように炊いた粟を指す。
緑豆粥(りょくとうがゆ)
中国と朝鮮半島でよく食べられているリョクトウを使った甘くない粥。
中国語で「緑豆粥(リュードウジョウ))」という。
小豆粥(あずきがゆ)
中国と朝鮮半島で食べられているアズキを使った甘くない粥。
中国語で「紅豆粥(ホンドウジョウ))」、朝鮮語で「パッチュク」()という。
パッチュクには白玉団子が入ることがある。
八宝粥(はっぽうがゆ)
中国で一般的な、米の粥に豆類、ナツメなど8種類の材料を加えた、甘い粥。
行事食
七草粥(ななくさがゆ)
芹(セリ)、薺(ナズナ)、御形(ゴギョウ)、繁縷(ハコベ)、仏の座(ほとけのざ、コオニタビラコ)、菘(すずな、カブ)、蘿蔔(すずしろ、ダイコン)の7種類の野草(春の七草)茹でて刻み、米の粥に混ぜ込んだもの。
1月7日に食べる習慣がある。
小豆粥(あずきがゆ)
別名桜粥(さくらがゆ)。
柔らかく煮た小豆を米とともに炊き込んだもの。
小正月(1月15日)に食べる習慣がある。
小正月に食べる場合は鏡開きをした餅をいれる。
朝鮮半島の小豆粥パッチュクは冬至に食べる。
臘八粥(ろうはちがゆ)
中国で、12月8日 (旧暦)に食べる、米、豆、クリ、ナツメ、ナッツなどの具入りの粥。
粥を使う料理
粥鍋(粥底火鍋 チョッダイフォーウォー)
広東省の順徳料理の名物。
出汁ではなく、粥の中に各種の具を入れて、煮ながら食べる寄せ鍋。
レトルト食品
- レトルトパックに入れた各種粥がある。
フリーズドライ粥
- 湯を加えると粥ができるインスタント食品
缶詰
- 缶入りの各種粥がある。