膾 (Namasu)
膾(なます)は、魚介類や野菜類、果物類を細く(あるいは薄く)切ったものを、酢を基本にした調味料で和えた料理。
正月の縁起物としても食される。
日本の膾は独自に発生、発達したものである。
日本でも古くは「なます」と言えばこの「膾」を意味していたが、院政期以降、魚介類や野菜を刻み調味料を合わせて食す料理である「和え物」と同一視されるようになった。
後には野菜だけを用いた「精進なます」のようなものも生じた。
現在「なます」の調味料として用いられるものとしては、甘酢、二杯酢、三杯酢、ゆず酢、たで酢などがあるが、古くは煎り酒(鰹節、梅干、酒、水、溜まりを合わせて煮詰めたもの)なども用いられた。
正月の御節料理としては、ごく細く切ったダイコンとニンジンを甘酢で漬け、ユズの皮で香りをつけた紅白膾(こうはくなます)が用いられることが多い。
これは繊切りのダイコンとニンジンを、縁起の良いとされる紅白の水引に見立てたもの。
赤と白を源氏と平家の旗に見立て、源平膾(げんぺいなます)とも呼ばれる。
魚介類や野菜類を酢味噌で和えた料理である「ぬた」も膾の一種である。
紅白膾の作り方
ダイコンとニンジンを長さ5cmほどのごく細い繊切りにする。
切る前に皮を剥く方法もある。
切ったダイコンとニンジンに塩をふり、しんなりしたら固く絞って水気をとる。
この際、ダイコンとニンジンを別に漬けたり、重石をのせて漬ける方法もある。
酢、砂糖(食塩、水を入れる方法もある)を混ぜて、鷹の爪と共に漬ける。
(まず半量で漬けてから水気を切り、二度漬けする方法もある)
ユズの皮を細かく切り混ぜる。
ことわざ・慣用句
ことわざや慣用句での「膾」は、古代中国の切り分けた生肉や生魚による料理を意味することが多い。
「羹(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹く」
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つまり、一度失敗した事に懲りて無益な用心をすること(「羹に懲りたる者、あえを吹く」と同意。
”あえ”とはあえもの、刺身の意味)。
「人口に膾炙(かいしゃ)する」
- 膾と炙(あぶり肉、直火による焼き肉)はいずれも多くの人が喜んで食べることから、物事が多くの人の間で話題になることをいう。
「膾(なます)に叩く」
- 膾は細かに切り刻むことから、転じて大勢で人を滅多打ちにすることを指す。
起源説等
「膾(音読みで「カイ」)」は本来、古代中国において、切り分けた獣肉に調味料を合わせて生食する料理を指した。
魚肉を用いて同様の調理をしたものは「鱠」、また「魚膾」ともいった。
日本語「なます」の語源は不明であるが、「なましし(生肉)」「なますき(生切)」が転じたという説がある。
一般には「生酢」と解されているが、先述したように、古くは調味料として必ずしも酢を用いるとは限らなかったので、民間語源の類であるという説がある。
朝鮮半島では、「膾」または「鱠」を「フェ」と呼ぶ。
フェには刺身状の料理が含まれる。
例えばユッケは「肉膾」と書き、膾の一種とされる。
また素材は生肉や生魚とは限らず、家畜の内臓に火を通して野菜類と和えたフェもある。