蚊遣器 (Kayariki (a mosquito repellent stick holder))
蚊遣器(かやりき)は、蚊取り線香を燃やす際、その上や中で香を燃やすことで線香を安定して燃焼させ、灰の飛散を防いで後処理を容易にする道具。
端的には蚊取り線香用の灰皿である。
その形や色は様々で、陶器などで精巧に(あるいは素朴に)作られたものは、夏の風物詩の一つ。
線香という小さいながらも火を扱うものであるため、陶器・金属など耐火性が高く耐燃性の素材で製造される。
中でも陶器で作られたものが古くから一般的であり、ブタを模った「蚊遣豚(かやりぶた)」がその代表的な形状の一つで、三重県四日市市の萬古焼のものなどがある。
他の素材では、最近ではガラス繊維などを利用して耐火性を確保するものも存在する一方、ただ単に金属の皿一枚を基盤として作成された単純なものもある。
蚊取り線香をまとめて複数購入する際に販売業者から無料で、そのような金属製の蚊遣器がサービスされることもある。
駆除を手段とした蚊よけが蚊取り線香のみであった時代には重要な役割を果たしていたが、電気蚊取り機の普及以降、線香と共に一般家庭における役割を縮小している。
しかし電気が使えない夏のキャンプなどアウトドアにおける活動には未だに重宝される。
また実用品としての利用が少なくなったとはいえ、夏の風物詩としての価値はなくなっておらず、鑑賞用として現在でも蚊遣豚など、様々な蚊遣器が作成、使用されている。
構造と特徴
蚊遣器は蚊取り線香を燃やす道具であり、まず線香の安定した燃焼を確保しなければならない。
このため多くの蚊遣器は線香に十分な酸素を供給できる構造になっている他に、線香がその中に設置される際、線香の一端のみを固定し、その他の線香の部位が蚊遣器本体に接触しないように保持している。
これはもし線香の燃焼部位が比熱容量の高い陶器や熱伝導性の高い金属と接触してしまうと、燃焼に必要な熱がそちらに移動して火が消えてしまうからである。
例外として、熱伝導性の低いガラス繊維等を利用したものではこの心配はなく、着火部位が蚊遣器本体に接触しても消火されない。
この性質に着目して、着火した蚊取り線香をガラス繊維の網で両端から挟み込み固定することで、傾斜や振動に対応し、蚊取り線香を容易に持ち運び可能にしたものも存在する。
野外での作業時に携帯できるよう作られた蚊遣器には、ベルトなどに蚊遣器を引っかけるための金具がついている。
また、そのように蚊遣器をぶら下げた時にも熱くないように、蚊取り線香を挟み込む面の外側に網状の覆いがついている。