ウメ (Japanese plum (Ume))

ウメ(梅、学名:Prunus mume)は、バラ科サクラ属の落葉高木、またはその果実のこと。

概要

別名に好文木(こうぶんぼく)、春告草(はるつげぐさ)、木の花(このはな)、初名草(はつなぐさ)、香散見草(かざみぐさ)、風待草(かぜまちぐさ)、匂草(においぐさ)などがある。

江戸時代以降、花見といえばサクラということになっている。
しかし奈良時代以前に「花」といえば、むしろ梅を指すことの方が多かった。
梅が次第に桜によって駆逐されはじめるのは、平安時代中頃からのことである。

天文 (日本)14年(1545年)4月17日 (旧暦)に当時の天皇が、京都の賀茂神社に梅を奉納したと『御湯殿上日記』にある。
それにちなみ、「紀州梅の会」が新暦の6月6日を梅の日に定めている。

特徴および品種
アンズの近縁種であり、容易に交雑する。
野梅系(やばいけい)の果実は小型であり、果実を利用する豊後系(ぶんごけい)(肥後系(ひごけい)とも呼ばれる)ではアンズとの交雑により大型化している。
ただし、完熟しても果肉に甘味を生じることはない。

花芽はモモと異なり、一節につき1個となるため、モモに比べ、開花時の華やかな印象は薄い。
毎年2月から4月に5枚の花弁のある1センチメートルから3センチメートルほどの花を葉に先立って咲かせる。
花の色は白、またはピンクから赤。
葉は互生で先がとがった卵形で、周囲が鋸歯状。
果実は2センチメートルから3センチメートルのほぼ球形の核果でみの片側に浅い溝がある。
6月頃に黄色く熟す。
七十二候の芒種末候には「梅子黄(梅の実が黄ばんで熟す)」と、ある。
梅には300種以上の品種があり、野梅系、紅梅系、豊後系の3系統に分類される。
梅の実を採るのは主に豊後系である。

薬効と毒性

花を観賞するほか、果実を梅干し、梅酒、梅酢やジャムなどにして食用とする。
また甘露梅やのし梅などの菓子や、梅肉煮などの料理にも用いられる。

漢方薬では燻蒸(くんじょう)して真っ黒になった実を烏梅(うばい)といい、健胃、整腸、駆虫、止血、強心作用があるといわれる。
中国では話梅(広東語 ワームイ)と呼ばれる干して甘味を付けた梅が菓子として売られている。

バラ科の葉や未成熟の青い果実、核の中の種子には青酸配糖体が含まれ、未熟な種子や腸内細菌の酵素により、シアン化物を生成する。
これが胃酸によりシアン化水素毒性を発揮すると、痙攣や呼吸困難、さらには麻痺状態になって死亡するといわれている。
シアンの生成は胃酸や胃の消化酵素によるものではないので、大量の種子をかみ砕いた場合を除いて誤摂取による中毒の危険は限られる。
アンズの種子による重症例がある一方、幼児が青梅の果肉を囓った程度では心配ないとされる。
また、梅酒の青い実や梅干しの種の中身などは、アルコールや熱により酵素が失活し、毒性は低下している。

クエン酸をはじめとする有機酸などを多く含むので健康食品としても販売されている。

日本における作付けと収穫

農林水産省が平成20年(2008年)11月に公表した統計によると、日本全国で作付面積は1万7400ヘクタール、収穫量は12万2000トン、出荷量は10万3600トンである。
収穫量の都道府県別では、北から青森 1930トン、群馬 6800トン、福井 1270トン、山梨 2100トン、長野 1990トン、奈良 2020トン、和歌山 6万7600トン、徳島 822トンである。

語源

「ウメ」の語源には諸説ある。

ウメには大きな薬効があるため、「u(見たこともない)+me(本当に大切な)」でウメと呼ばれた。

中国語の「梅」(マイあるいはメイ)。
伝来当時の日本人は、鼻音の前に軽い鼻音を重ねていた(現在も東北方言などにその名残りがある)ため、meを/mme/(ンメ)のように発音していた。
これが「ムメ」のように表記され、さらに読まれることで/mume/となり/ume/へと転訛する。
一方で、今も「ンメ」のように発音する方言もまた残っている。
ただし/ume/が先にあって、唇音の/u/が次にくる唇音の/m/に同化 (音声学)する音韻過程により/mme/へと変化したとする説も存在する。

他にも幾つかの異説があり、現在のところ、どれもまだ定説となるには至っていない。

家紋

梅紋(うめもん)は、ウメの花を図案化した日本の家紋である。
その一種で「梅鉢(うめばち)」と呼ばれるものは、中心から放射線状に配置した花弁が太鼓の撥に似ていることに由来している。
奈良時代に模様として用いられはじめ、菅原道真が梅の花を好んだことにより天満宮の神紋として用いられ始めたと考えられている。

図案
図案は、「梅(うめ)」、「梅鉢(うめばち)」、「捻じ梅(ねじうめ)」、「実梅鉢(みうめばち)」などがある。
「匂い梅(においうめ)」や「向う梅(むこううめ)」などの写実的な図案の梅花紋と、「梅鉢」などの簡略的な図案の梅鉢紋に大別される。

使用
「梅」は、太宰府天満宮、「星梅鉢」は北野天満宮が用いている。
武家では、菅原氏の末裔や美濃斉藤氏の一族が菅原天神信仰に基づいて用いた。
主に、加賀前田氏の「加賀梅鉢」や相良氏の「相良梅鉢」などがある。

ウメにまつわる言葉

「桜伐(き)る馬鹿、梅伐らぬ馬鹿」
春先に咲く代表的な花であるサクラと梅のふたつを対比しつつ、栽培上の注意を示したもの。
桜はむやみに伐ると切り口から腐敗しがちであり、剪定には注意が必要。
一方、梅の樹は剪定に強く、むしろかなり切り詰めないと徒枝が伸びて樹形が雑然となって台無しになるばかりでなく、実の付き方も悪くなる。
花芽は年々枝先へと移動する結果、実が付く枝は通常数年で枯れ込んでしまう。
実の収穫を目的とするのであれば、定期的に枝の更新を図る必要があるからである。

「東風〔こち〕吹かば にほひおこせよ梅の花 主なしとて 春な忘れそ」(菅原道真)
道真が大宰府に左遷されるとき、道真の愛した庭の梅の花に別れを惜しんで詠んだ歌。
後に庭の梅木が道真を追って大宰府に飛んできた、という「飛梅」がある。

「桃栗三年、柿八年、柚(ゆず)の馬鹿野郎十八年、梅はすいすい十六年」
種を植えてから実を収穫できるまでの期間を指す民謡。
本来は「桃栗三年柿八年」で一つの諺。
「物事は簡単にうまくいくものではなく、一人前になるには地道な努力と忍耐が必要だ」という教訓である。

全国の天満宮

- 梅がシンボルになっている。

みかさ梅林邦梅園(北海道三笠市)

- 北海道最大の梅園であり、約1万本が植栽されている

平岡公園(北海道札幌市清田区)

- 広さ6.5ヘクタールの敷地に約1,200本の梅がある。
紅梅種と白梅種との比率は約6:4

水戸偕楽園(茨城県水戸市)

- 約3千本の梅がある日本庭園。
日本三名園の一つ、また関東三大梅林の一つ

筑波山(茨城県つくば市)

- 約3千本の梅がある、日本百名山の一つ

吉野梅郷(東京都青梅市)

- 約2万5千本の梅がある

府中市郷土の森博物館梅園(東京都府中市 (東京都))

- 広さ17ヘクタールの敷地内に、約60種、1100本の梅がある。

秋間梅林(群馬県安中市)

- 約50ヘクタールの敷地に35,000本を超える梅がある。

越生梅林(埼玉県越生町)

- 関東三大梅林のひとつ

熱海梅園(静岡県熱海市)

- 関東三大梅林のひとつ

岩本山公園(静岡県富士市)

- 400本程度しかないが、富士山との撮影ポイントとして有名。

青谷梅林(京都府城陽市)

- 約1万本の梅がある。
広さ20ヘクタール、鎌倉時代からの歴史

月ヶ瀬梅林(奈良県奈良市)

- 日本国指定名勝。
旧添上郡月ヶ瀬村の梅林。
約1万3千本の梅がある。
樹齢600年の古木が存在。

賀名生梅林(奈良県五條市)

- 南北朝時代の和歌にも詠まれる、約2万本の梅林

綾部山・室津(兵庫県たつの市)

- 瀬戸内海を「ひとめ2万本」と称される

南部梅林(和歌山県みなべ町)

- 「一目100万本、香り十里」と称される南高梅の梅林

岩代大梅林(和歌山県みなべ町)

- 広さ30ヘクタール、梅木2万本の南高梅の梅林

千里梅林(和歌山県みなべ町)

- 熊野古道の千里の浜を見おろす丘にある約6千本の南高梅の梅林

紀州田辺梅林(和歌山県田辺市)

- 30万本の梅木、大蛇峰山麓にある

阿川梅の里(徳島県名西郡神山町)

- 30ヘクタールの敷地に1万6千本の鶯宿梅の梅林

梅関連の施設

道の駅みなべうめ振興館・うめ振興館(和歌山県)
紀州梅干館
- 梅干しの企業博物館
農林水産総合技術センターうめ研究所(和歌山県)
全国梅サミット

[English Translation]