京都アニメーション (Kyoto Animation)
株式会社京都アニメーション(きょうとアニメーション、英語表記:)はアニメーションの企画・製作およびアニメーション制作に関する技術指導を主な事業内容とする日本の企業である。
略称は「京アニ」。
概要
1981年設立、1985年7月12日有限会社として法人化。
1999年、株式会社に組織変更。
一部のポストプロダクション工程は社外で行う必要があるため、京都府宇治市の本社近郊とは別にオフィスを東京都港区 (東京都)に置く。
また、演出など一部のメインスタッフは、京都と東京を往復する事も多いと言われる。
福利厚生として社宅を整備しており、自社のアニメスクールもある。
2000年代において、もっとも注目を集めたアニメーション制作会社の一つであり、元請制作では『AIR (ゲーム)』 『CLANNAD (ゲーム)』のような美少女系をはじめ、『フルメタル・パニック!』シリーズのような本格ロボット物、『涼宮ハルヒの憂鬱』のような学園コメディー物、『らき☆すた』のようなギャグ作品に至るまで幅広くこなすなど、作品クオリティーには非常に高い定評がある。
設立
旧虫プロダクションで色彩設定仕上げ経験のある八田陽子が、1981年に近所の主婦らと、竜の子プロダクションやサンライズ (アニメ制作会社)の仕上げの仕事を始めた。
八田が結婚して移り住んだ京都府宇治市に由来して「京都アニメスタジオ」と名乗っていたが、のちに「京都アニメーション」に改称、夫の英明を社長に据え、1985年に有限会社として法人化される。
元は仕上げの工程を行う仕上専門会社であったが、1986年に作画部門を設立し他社の動画の下請けを始めている。
1987年のタツノコプロ制作のテレビアニメ『赤い光弾ジリオン』では、実質的な制作を行ったとされ、同作品のプロデューサー石川光久がアイジータツノコ(後のProduction I.G)を設立する際には出資を行った。
体制確立後
やがて1990年代半ばから、演出・作画・仕上げ・背景・撮影などを自前で行う体制を整え、テレビアニメのグロス請けを行うようになった。
一時期4ヶ所のスタジオを構えた時期もあり、またゲームソフトのパッケージデザインやそのソフトに関連したコミック版も請け負っていた。
1992年にはシンエイ動画からの受注で、内田春菊原作のテレビアニメ『呪いのワンピース』を演出から仕上げまで初めて社内スタッフだけで制作した。
この頃には既に質の高い仕事で評判になっていた。
その後、長らく主要取引会社であるシンエイ動画、サンライズ (アニメ制作会社)、ぴえろなどの下請けを行った。
アニメ監督の杉井ギサブローによると、その評判から仕事の依頼が絶えず、発注する元請けの制作会社では、京都アニメーションに仕事を依頼するためにスケジュール調整を行うことがあったという。
元請制作後
2003年、初の元請制作のテレビアニメ『フルメタル・パニック!フルメタル・パニック? ふもっふ』を制作し、2005年には『AIR (ゲーム)』を手がけた。
AIRは当時のアニメ界としては、他を圧倒するほどの作り込みと巧みな演出が話題を呼び、京都アニメーションの名はアニメファンの間でブランド化した。
以後、自社元請制作に専念するようになり、『AIR』以降、ゲームブランドKeyが製作した恋愛アドベンチャーゲームをテレビアニメ化し、『Kanon (ゲーム)』、『CLANNAD (ゲーム)』、『CLANNAD 〜AFTER STORY〜』と毎年1作ずつ制作している。
同じく2005年、フルメタル・パニックシリーズの続編『フルメタル・パニック!フルメタル・パニック! The Second Raid』を制作し、これもヒットした。
さらに2006年の『涼宮ハルヒの憂鬱 (アニメ)』は同年上半期最高の話題作となり、2007年放送した『らき☆すた (アニメ)』も『涼宮ハルヒの憂鬱』同様、ヒット作となっている。
2009年に『となりの801ちゃん』を制作する予定だったが、諸般の事情で中止になった。
制作環境
制作体制
地方プロダクションであり近場に外注を出せる制作会社が無い事もあって、演出、作画、仕上げ、美術、撮影、デジタルエフェクトまでのプロダクション作業を社内で行なえる体制を構築しており、外注による分業体制を取るプロダクションに対して、スタッフのコミュニケーションが密に取れることが特徴となっている。
作画・仕上げ・美術の工程を国内の複数社に委託することは少なく(作画は関西の制作会社、美術は『CLANNAD』制作時に、『涼宮ハルヒの憂鬱』『らき☆すた』で美術監督を務めた田村せいきが所属するアニメ工房婆娑羅に発注することがあった)、編集・音響を除く工程の一部が子会社のアニメーションDoならびに協力会社の大韓民国のアニメスタジオ「Studio Blue(旧:Ani Village)」よって賄われている。
現在のところ、他社へのグロス出しは『フルメタル・パニック? ふもっふ』を除いて行われていない。
スタッフ
ゲーム作品(ここではKey作品)のアニメ化にあたっては、強制ではないがアニメを制作するスタッフ全員で原作ゲームをプレイしている。
設定制作、制作進行をそれぞれ「設定マネージャー」「制作マネージャー」と呼称する。
社屋
本社屋にスキャン・動画検査などを行うデジタル映像開発室を備える。
デジタルペイント・作画などの作業は別棟スタジオにて行われる。
『らき☆すた』の21話において、主人公達が同社を訪れた際、「作品数を絞っているので本社の見た目は普通の建物ぐらいでいい」という会話をしていた。
2008年2月、京都市伏見区桃山町(宇治市六地蔵との境界付近)に建設していた新スタジオ(第1スタジオ)が完成した。
2008年度以降は2005年に完成した宇治市内の本社と、本社から徒歩圏内にあるスタジオ(第2スタジオ)とともに、一駅で行ける新スタジオでもアニメーション制作を行っている。
ハイビジョン対応
マスタリング時点で『涼宮ハルヒの憂鬱』までは、ハイビジョン制作には非対応だった為、16:9の標準画質映像(Standard Definition:SD)画質で制作していた。
そのため2005年にBS-TBSで放送され、2006年にはBlu-ray Discで発売されるなど高精細度ビデオ(High Definition:HD)での映像フォーマットが使用された『AIR』でも、SDで制作しアップコンバートでHD化したものであった。
HDでの制作は2006年の『Kanon』からであるが、BS-iはHDの素材をSDにダウンコンバートした後、HDにアップコンバートしなおしたものを放送した。
HDのまま放送しないのはDVDの売り上げ増や、次世代DVDが普及した後にHDリマスター版で再び売り出す事を狙ったものと言われており、故意に画質を落とし放送するのはTBS(および子会社のBS-i)で多用される手法である(その一方で系列局の毎日放送(MBS)や中部日本放送(CBC)制作作品では近年になってHDマスターでの放映を実施している)。
原作の再現度
元請制作作品は『空を見上げる少女の瞳に映る世界』を除き、アドベンチャーゲーム(Key作品)・ライトノベル・コミックなどを原作としているが、それらの作品はいずれも基本は原作に忠実であり、その上でサプライズ的な要素を付加させるといったストーリー展開を貫いている(『涼宮ハルヒの憂鬱』では原作小説の地の文まで再現している)。
『AIR』『Kanon』『CLANNAD』は東映アニメーションもアニメ版を制作しているが、東映が独自の解釈でオリジナル要素が強いのに対し、京都アニメーションでは原作に忠実な点が高く評価される一因となっている。
ストーリー以外でも、原作のCGやイラストと近い作画を制作し、Key作品においては原作に使用されている主題歌・BGMを多用している。
アニメーションDo
2000年4月7日に京都アニメーション大阪スタジオを法人化し、新たに設立された関連会社として「アニメーションDo(商号:有限会社アニメーションドゥウ)」がある。
大阪府大阪市中央区 (大阪市)にオフィスを構える。
独自にシンエイ動画から『あたしンち』『ジャングルはいつもハレのちグゥ』などを請ける他は、京都アニメーションが請ける作品の作画を協力することが主な業務だった。
京都アニメーションが自社元請け制作に一本化してからは、同社のグロス請けに専念。
立場上としては京都アニメーションの事業所の一つとなっている。
そのため、劇場版『クレヨンしんちゃん (アニメ)』では、アニメーションDoのスタッフも京都アニメーションの一員としてクレジットされている(テレビシリーズでは設立後も京都アニメーション名義)。
外部スタッフ
基本的に、原作がゲームブランドKeyの作品と、原作がライトノベル・漫画である角川書店の作品を交互にアニメ化させている。
Key作品のアニメ化にあたっては、Keyファンであり『AIR (ゲーム)』アニメ化の話を持ち込んだアニメーション脚本家の志茂文彦が脚本を勤め、同じくKeyファンで京アニの主監督を勤める石原立也がタッグを組んで制作を行っている。
なお『フルメタル・パニック!』の原作者・賀東招二と関係が深く、アニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』の放送順第11話「射手座の日」、『らき☆すた』の第5話「名射手」、第12話「お祭りへいこう」、第22話「ここにある彼方」の脚本は賀東が担当した。
『涼宮ハルヒの憂鬱』の放送順第9話「サムデイインザレイン」は、アニメ版オリジナルエピソードを原作者の谷川流が書き下ろし、脚本まで担当している。