和佐範遠 (WASA Norito)
和佐 範遠（わさ のりとお）は、江戸時代前期の紀州藩士。
日置流竹林派（ちくりんは）の弓術家であり、通し矢の天下一。
出生
寛文3年（1663年）、和佐実延の子として、紀伊国和佐村禰宜（現在の和歌山県和歌山市和佐）に生まれた。
父実延は、日置流竹林派（ちくりんは）の佐武吉全の弓術の弟子だった。
範遠も紀州竹林派吉見経武（法名：順正）に師事し弓術を学んだが、技量が優れていたので藩より稽古料を給された。
貞享2年（1685年）11月、父は借金で問題を起こし禄を召し上げられたが、範遠は許された。
天下一
貞享3年（1686年）4月27日、京都三十三間堂で通し矢種目を試み、総矢数13,053本の内、通し矢8,133本で天下一になった。
この記録は以後破られることはなかった。
範遠は記録達成の功績により知行300石に加増された。
その後貞享5年（1688年）には綱教附の射手役となり200石を加増された。
元禄8年（1695年）には頭役並となった。
この間、元禄2年（1689年）3月には師の吉見順正から印可を得た。
失脚
宝永6年（1709年）3月13日、安藤陳武に預けられ田辺城 (紀伊国)に幽閉された。
失脚の理由は、「同僚鳥居幸次郎の妻に艶書を遣わした」とも「弟の半六の女性問題」ともいわれている。
正徳 (日本)3年（1713年）3月24日、失意のうちに、病に罹り田辺城内の長ヶ蔵で死去。
享年51。
遺跡は長男和佐貞恒が継いだ。
和佐家は以降も代々藩の弓術師範役となり存続した。
範遠の愛用した和弓が、浄恩寺に2つ保管されている。
一つは享保3年（1718年）に範遠の子が納めたもの。
もう一つは範遠の250回忌を記念して子孫が納めたもので三十三間堂の通し矢に使用されたと伝わっている。
逸話
貞享3年（1686年）4月27日の京都三十三間堂での通し矢種目の際、前日暮れ六つ（午後6時）から開始したが、翌朝ごろ調子が悪くなり通し矢が少なくなった。
そこに当時の天下一の記録保持者星野茂則が現れ、範遠の左手を小刀で切ってうっ血を治したところ調子を取り戻したという。