姥ヶ火 (Ubagabi (the mysterious fire of an old woman))
姥ヶ火、姥火(うばがび)は、河内国(現・大阪府)や丹波国(現・京都府北部)に伝わる怪火。
鳥山石燕の妖怪画集『画図百鬼夜行』、寛保時代の雑書『諸国里人談』、江戸時代の怪談本『古今百物語評判』、井原西鶴の雑話『西鶴諸国ばなし』、『河内鑑名所記』などの古書に記述がある。
概要
『諸国里人談』によれば、雨の夜、河内の枚岡神社に、大きさ約一尺(約30センチメートル)の火の玉として現れたとされる。
この火の玉が飛び回る光景を目にした者は、1人残らず驚かずにはいられなかったという。
正体はある老女の死後の亡霊とされた。
生前に平岡神社から灯油を盗んだ祟りで怪火となったのだという。
河内に住むある者が夜道を歩いていたところ、どこからともなく飛んできた姥ヶ火が顔に当たった。
よく見たところ、それは鶏のような鳥の形をしていた。
やがて姥ヶ火が飛び去ると、その姿は鳥の形から元の火の玉に戻っていたという。
このことから妖怪漫画家・水木しげるは、この姥ヶ火の正体は鳥だった可能性を示唆している。
この老女が姥ヶ火となった話は、『西鶴諸国ばなし』でも「身を捨て油壷」として記述されている。
それによれば、姥ヶ火は一里(約4キロメートル)をあっという間に飛び去ったといい、姥ヶ火が人の肩をかすめて飛び去ると、その人は3年以内に死んでしまったという。
ただし「油差し」と言うと、姥ヶ火は消えてしまうという。
丹波国(現・京都府北部)にも、桂川 (淀川水系)に姥ヶ火が現れたという伝承がある。
『古今百物語評判』によれば、かつて亀山(現・京都府亀岡市)近くに住む老女が、子供を人に斡旋するといって親から金を受け取り、その子供を保津川に流していた。
やがて天罰が下ったか、老女は洪水に遭って溺死した。
それ以来、保津川には怪火が現れるようになり、人はこれを姥ヶ火と呼んだという。
『画図百鬼夜行』にも「姥が火」と題し、怪火の中に老女の顔が浮かび上がった姿が描かれている。
「河内国にありといふ」と解説が添えられていることから、これは、河内国の伝承を描いたものとされる。