宗十郎頭巾 (Sojuro-zukin)

宗十郎頭巾(そうじゅうろう-ずきん)は男性用の頭巾の一種。
武家の男子がもっぱら着用した。

概要

その起源は澤村宗十郎 (初代)が元文元年江戸中村座で梅の由兵衛を演じた際に創案した茶の錣頭巾にあるとされ、これが当時大いに流行したところから宗十郎頭巾の名が行われた。

形状は宗匠頭巾のごとく一枚の布で頭部を覆うものであるが、額の上に大きな菱形の飾り布(錣)がついているところに特徴がある。
口元から顎を覆う横布は顎の下に引下げて顔をあらわにすることも可能な構造になっており、色は黒、茶、紺などの系統が多い。

演劇における宗十郎頭巾

歌舞伎では『青砥稿花紅彩画』浜松屋の日本駄右衛門や『三人吉三廓初買』お竹蔵のお坊吉三等のように、武家方などの落ちついた年配りの男が微行の際に用いることが多い。
坂本龍馬が平井加尾に送った有名な書簡においても、加尾に男装をさせて勤王活動を行わせるために、宗十郎頭巾を用意するように記しており、当時の宗十郎頭巾に対する一般的な感覚を知ることができる。

しかし宗十郎頭巾の名をもっとも高からしめたのは大佛次郎作『鞍馬天狗』である。
シリーズ第三作「宗十郎頭巾」以降、主人公鞍馬天狗こと倉田典膳のトレード・マークとなり、ことに嵐寛寿郎の映画によってこのイメージは不動のものとなった。
鞍馬天狗の宗十郎頭巾は、単に微行姿であるのみならず、正体を隠した正義の味方であるというその設定によるものであろうが、子供たちに絶大な人気を誇った。
この映画の影響によって、以降時代劇における白面の正義の味方と宗十郎頭巾とは切っても切り離せない関係になってゆく。

チャンバラ遊びでは、鞍馬天狗に扮するため、子供たちは競って風呂敷を利用して宗十郎頭巾の真似をしたが、錣の部分がうまくつくれないのが常であった。
本来宗十郎頭巾は一枚の布でできているわけではなく、錣は縫製によってつくられているために、風呂敷で真似ること自体がもともと不可能なのだが、このためにかえって宗十郎頭巾は子供たちの憧憬の的ともなることになった。

俗称

俗に「鞍馬天狗の頭巾」または形状から「イカ頭巾」などと呼ばれることもある。

宗十郎頭巾と映画

昭和11年、嵐寛寿郎主演の映画に『宗十郎頭巾』がある。
なお、嵐寛寿郎は1927年(昭和2年)から1956年(昭和31年)まで40本もの『鞍馬天狗』に主演している。

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