悪代官 (Akudaikan (cruel bailiff))

悪代官(あくだいかん)とは、領民を圧制で苦しめたり、不正行為を働いたりした代官の代名詞的な表現。
実際の歴史の中では、「悪代官」と言われるような代官はさほどいなかった(代官江戸時代における代官も参照のこと)とされる。
しかし、フィクションの世界(時代劇)においては悪党の総元締め的な「ストックキャラクター」として登場する。
特に勧善懲悪型の時代劇においては、大きな威圧感と強面ぶりを示しながらも、最後には必ず主人公(またはその仲間)に成敗される存在として欠かせない役どころである。
またそのイメージがステレオタイプ化され、広く浸透し、親しまれるようになった。

なお、現代においても不正を行ったり強引な手法が目立つ首長や官僚、役人等を比喩する場合に使われることがある。

歴史的な背景

現代人が抱くイメージに反し、「悪代官」と言われる代官はいたことはいたが、実際には問題が発生すれば時に切腹もあるなど厳しく管理されており、多くの場合即座に更迭されていた。

代官が「悪」のイメージを持つようになった理由はいくつか挙げられる。

時代劇における悪代官

勧善懲悪型の時代劇においては、主人公(またはその仲間)のヒーロー性を高めるために、存在感があり、かつ視聴者にも分かりやすい悪役が不可欠である。
「弱きを助け、強きを挫く」ためには一定の権限や立場が必要である。
また倒幕以降について回るようになった「悪」のイメージも手伝って、代官が悪役として登場することが多くなった。

21世紀初頭には勧善懲悪型の時代劇が少なくなってきたこともあり、また悪とされる側の事情や人間的な側面が描かれるようになってきたため、典型的な悪代官自体登場が減っている。

「○○屋、お主も悪よのう」

悪代官の代表的なイメージのひとつが、「お主も悪よのう」という台詞である。
ステレオタイプな場面設定としては、夜、悪代官の屋敷において悪徳商人(廻船問屋とされることが多い)との謀の際に、悪徳商人から袖の下(小判を詰めた菓子箱など)を渡された状況が挙げられる。
悪代官といわれてこの台詞を連想する人も少なくないが、実際はドラマではあまり使用されていない。
時代劇の悪代官役で知られる俳優の川合伸旺によると、これは田口計と共演したコマーシャルメッセージ撮影時にアドリブとして生まれた。
それが採用された結果視聴者にインパクトを与え、定着したとのことである。
なお、この台詞につづく悪徳商人の台詞は、「いえいえ、お代官様ほどでは...」が代表的である。

その他の悪代官のイメージ

主人公(庶民に成りすました高貴な人物)がその正体を明かした時の反応は作品によって異なるが、大抵は以下のどちらかに分れる。

「おっ、恐れ入りました......」
「まことの××様がこのような場所に来られるはずがない。」
「××様の名をかたる狼藉者だ。」
「出合え出会え!」

後者の場合は言うまでもなく手下共々主人公たちに成敗される結果となるが、前者でも後日厳罰に処される運命が待っている。

また、ごくまれにだが、相手の正体を知った上で「ここで消してしまえば...」と口封じに走る生粋の悪党もいる(暴れん坊将軍に登場した悪老中など)。

[English Translation]