時代劇 (Jidaigeki (Period Drama))

時代劇(じだいげき)とは、日本の歴史における各時代的背景などを取り入れた演劇や映画、テレビドラマなどである。

歴史上にありえた日本の事件や日本史の人物を登場させることも多いが、その人物像をはじめ慣習、風俗、効果音、台詞、言語においても大胆にフィクション化され、大衆受けするように加工されている。
主人公の視点が現代の正義感に合致するよう描かれている。

概要

どこまでの時代を扱った作品が「時代劇」と呼ばれるかに明確な定義はないが、明治維新までを扱った作品がそう呼ばれることが多い。
逆にあまりにも時代がさかのぼると、「時代劇」と呼ばれないことがある(神代や卑弥呼を扱った弥生時代など)。
おおむね、平安時代から明治維新までを扱った作品が「時代劇」と呼ばれることが多い。

時代小説との区別がそうであるように、時代劇よりもノンフィクションに近いものを「歴史劇(史劇)」と呼ぶことも考えられる。
とはいえ、実際には日本以外のものを「歴史劇」、日本国内のものを「時代劇」と呼び分けていることが少なくない。
英語圏では、日本の時代劇に相当する劇を Period piece または period drama などと呼んで、これらは「時代劇」の意味を持つが、剣劇を中心とする日本の時代劇のことは jidaigeki と呼んで区別することが多い。

沿革

時代劇は、明治に文学の世界で大衆文学が流行し、映画の製作が京都に撮影所が設けられて始まる。
「旧劇」と呼ばれるものから発展した。
その中心は剣劇(いわゆるチャンバラ時代劇)であり、いずれも大好評を博した。

太平洋戦争降伏後に日本が連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)の占領下に置かれる。
その占領政策により、日本刀を振り回す剣劇(チャンバラ時代劇)は軍国主義的であり、敵討ちなど復讐の賛美がアメリカ合衆国に対する敵対心を喚起する要素があるとして一時製作が制限された。
(犯人を推理する展開を描写の中心とする『捕物帳』ものに付いては小説の執筆や映画公開が許された)

1953年、日本でのTV放送スタートと同時にTVで放送するための時代劇(テレビ時代劇)の製作もはじまる。
1963年には日本放送協会が現在まで放送を継続する長寿時代劇シリーズ・大河ドラマの放送も開始。
以後、膨大な時代劇が生み出され、今日に至る。
テレビ用時代劇は他のテレビ番組が急速にビデオ撮影による収録に切り替わっていく中、1990年代後半までは映画用写真フィルムによる撮影を主流とし、"ドラマ"というよりは"映画"的なコンテンツとして特異な地位を確立していた。
これはテレビ時代劇と刑事ドラマと特撮ヒーロー番組に言える特徴であった。

近年、若者層の視聴率が取りにくい事や現代劇に比べ制作費がかかる(時代考証、およびそのための資料引用に関する許諾、大道具・小道具等の制作や調達、ロケ地の確保やそれに伴う許諾、化粧・鬘・衣装等の製作費用や手間...等)。
それに加え、製作関係者の後継者不足や人材育成の不足、作品がマンネリズムに陥っている。
それらゆに、テレビ向けに製作・放映されることは敬遠されるようになってきた。
この傾向は一時代の時代劇俳優として一役を買った萬屋錦之介が死去した1997年頃より特に顕著となっている。
しかし映像コンテンツとしての需要は高く、再放送枠や衛星放送系有料放送、DVD・磁気テープ販売の分野においては重宝されている。

時代考証
時代考証については1960年代まではお歯黒、引眉を行う場合が多かったが、すでに過去の習慣であり、また、お歯黒、引眉が不気味と思われる、等、現代人に受け入れられにくい。
そのため、現在ではお歯黒、引眉に該当する役柄でもお歯黒、引眉をすることは一部の役を除きないといって良い。
また、本来ならふんどしであるべき男性の下着がステテコになったり、元禄時代の物語なのに髪型が幕末仕様だったりするなど、雑な部分も多い。
その一方で、女性の日本髪の鬘は以前は全鬘が一般的だったがハイビジョン収録の一般化に伴い生え際が自然に見える部分鬘を使うようになった。
また、日本刀の打刀では斬撃、抜刀、納刀など元来ほとんど音がしないため、それまで無音であった。
しかし、映画『七人の侍』などのころから効果音が必ず入れられるようになった。
乗馬のシーンでは映像的な見栄えを優先して西洋馬が使用される。
また代官、目明し、同心、小者など役職、屋台など風俗については厳密な考証なしに描写されている。

時代劇の分類
メディアによる分類
演劇
時代劇映画
テレビ時代劇

内容による分類
剣劇(チャンバラ時代劇):剣(日本刀)による殺陣を主軸とするもの。
時代劇の大多数を占める。

剣術・武士道や忠誠などをテーマとしたもの
股旅もの(任侠もの)
捕物帖(勧善懲悪)もの:テレビの時代劇は、これが主流。
悪人サイドが家老や藩主やその跡取りといった場合は実在しない藩になる。
水戸黄門シリーズは藩主まで悪人になることはないため実在の藩が登場する。

征夷大将軍もの(副将軍ものを含む)、奉行もの
「鬼平犯科帳」は奉行ものであるが、勧善懲悪よりもドラマ性や風俗描写を重視しており、下記の文芸ものの要素が高い。

岡っ引もの、同心もの、十手もの
義賊もの
合戦もの:戦国時代 (日本)の合戦や大名の興亡を描いたもの。
『影武者 (映画)』やNHK大河ドラマ、TBS『関ヶ原 (テレビドラマ)』など。

文芸もの:小説などの文学作品を脚色したもの(ただし、剣劇を除く)。

江戸文学の映画化:西鶴一代女・近松物語・西鶴一代男など大映の時代劇に多い。

江戸市井もの(東映「冷飯とおさんとちゃん」など)
江戸時代以外を舞台とするもの。

平安時代もの:源氏物語・雨月物語・山椒大夫・恋や恋なすな恋など
女性を主役としたもの(剣劇を除く)
大奥もの
セクシー時代劇・ポルノ時代劇
特撮もの:舞台設定は時代劇であるが、変身ヒーローや悪の巨大組織・怪人など特撮の要素を盛り込んだ作品
大人向け作品:『渋川伴五郎』など
子供向け特撮:『大魔神』、「仮面の忍者 赤影」、「快傑ライオン丸」、「変身忍者_嵐」など
ハイパー時代劇:厳密な時代考証をいっさい無視し、西部劇・サイエンス・フィクションなど、あらゆるジャンルの要素をミックスした作品。
上記の"特撮もの"に近い存在(「五条霊戦記」・「ZIPANG」など)

※広義では忍者映画(忍者もの)も時代劇に含める場合があるが、基本的には分けて扱うことが多い。

(本項では戦国時代~江戸時代上の(実在・架空を問わず)有名な忍者が登場する作品のみを"時代劇"として記載した)

製作者や風潮による分類
マキノ時代劇:歌舞伎調の美しい殺陣を持つ、初期の時代劇。

ナンセンス時代劇:荒唐無稽さを売り物にした戦前の時代劇。

東映時代劇:戦後に一世風靡した東映の時代劇群。
江戸時代を舞台にしたものが多い。

大映時代劇:剣劇だけでなく文芸作品や江戸時代以外を舞台とするものも多い。
お歯黒、引眉、等、時代考証を重視。

黒澤時代劇:黒澤明の作品群。
リアルな殺陣とヒューマニズム溢れる物語が特徴。

[English Translation]