盆栽 (Bonsai)

盆栽(ぼんさい)とは、草木を鉢に植えて、枝ぶり、葉姿、幹の肌、根及び鉢の総称、もしくはその姿全体を鑑賞する趣味。

また、その植物の、野外で見られる大木の姿を、鉢の上に縮尺して再現することを目指すものである。
そのために剪定を施したり、自然の景観に似せるために枝を針金で固定し時に屈曲させあるいは岩石の上に根を這わせたりと様々な技巧を競うのも楽しみの一つとされる。
施肥、剪定、針金掛け、水やりなど手間と時間をかけて作る。
生きた植物なので「完成」というものがなく、常に変化するのも魅力の一つ。

歴史

中国で唐の時代に行われていた「盆景」が平安時代に日本へ入ってきて始まった。
江戸時代になると武士の副業としても盆栽の栽培が盛んになり、盆栽や園芸は興隆する。
明治以降も盆栽は粋な趣味であったが、培養管理には水やりなど手間と時間が必要なために、生活環境の推移によって次第に愛好者は時間的余裕のある熟年層が多くなった。
そのため、戦後から1980年代ぐらいまでの間は、年寄り臭い趣味とされた。
しかし、1990年代以降盆栽が海外でも注目を集めるとともに見直す動きが高まり、若者の間でも粋な趣味として再認識されるようになってきている。

種類

木を中心としたもの
松柏類(マツ、シンパク、ネズ、スギなど)
実を鑑賞するもの(ウメモドキ、カキノキ、カリン (バラ科)、ヒメリンゴなど)
花を鑑賞するもの(ウメ、ボケ (植物)、サクラ、サツキなど)
葉姿を鑑賞するもの(カエデ、ケヤキ、ハゼノキ、タケなど)
草を中心としたもの
異種の植物や造形物を組み合わせたもの(寄せ植え、彩花盆栽、マン盆栽など)

樹形

直幹(ちょっかん)

幹が上に向けて垂直に一直線に伸びている形を直幹と呼ぶ。
幹が根元から樹芯へ徐々に細くなっていくのが理想である。
これをこけ順がよいと言う。
枝も前後左右に順序よく出ており、枝と枝の間隔も上に行くに従って、狭くなっていくような状態を枝順がよいと言う。
そして根も四方八方に伸びた根張りが理想的である。

模様木(もようぎ)

幹が左右に曲線を描くように曲がっている木を模様木と呼ぶ。
こけ順が素直で、模様が前後左右にバランス良く曲がっていることが重要である。
枝の出し方には注意が必要であり、自然樹のように枝は曲の外側に残して、内側の枝は剪定をする。
根元からの垂直線上に樹芯があると、観る者に安定感を与える。

斜幹(しゃかん)

一方向からの風に晒されていたり、障害物などがあるために根元から斜めに立ち上がり、樹芯にかけて一方向に傾いた樹形を斜幹と呼ぶ。
枝は一方になびかないで、前後左右に伸び出しているのが特徴である。

吹流し(ふきながし)

斜幹よりも、さらに過酷な環境に曝されて、幹も枝も一方向になびき、樹高よりも長く枝が伸びたものを、吹き流しと呼ぶ。
これは、枝先の位置以外は半懸崖と似ている。

懸崖(けんがい)

海岸や渓谷の断崖絶壁に生えて、幹が下垂して生育を続ける樹木の姿を表現したものを懸崖と呼ぶ。
ちなみに、幹や枝が鉢の上縁よりも下に垂れ下がっているものを懸崖、鉢の上縁ぐらいのものを半懸崖、と呼ぶ。

蟠幹(ばんかん)

幹が著しく捩れているもの、または捩れて成長する性質のものを捩幹と呼び、幹が更にネジれた状態、あたかも蛇がとぐろを巻いた様な樹形を蟠幹と呼ぶ。

箒立ち(ほうきだち)

幹の途中から、放射状に細かく分かれてどれが主幹なのか、区別のつかなくなった樹形で、それがあたかも竹箒に似ているので箒立ちと呼ぶ。
枝の素直な分岐と、分岐点と樹高などとのバランスが鑑賞のポイントになる。

根上り(ねあがり)

厳しい生育環境により、地中で分岐した根元の部分が、風雨に晒されて表土から浮き出して露出している状態を根上りと呼ぶ。

多幹(たかん)

根元から複数の幹が立ち上がったもの。
幹が2本のものを双幹、3本のものを三幹、五本以上のものを株立ちと呼ぶ。
幹数は奇数が好まれており、2本以外の偶数は嫌われるので避ける。

根連なり(ねつらなり)

3本以上の複数の同樹種の根が癒着して1つに繋がっているもの、または立木が地面に倒れて地中に埋まり、元は枝であったものが幹として育ち、その枝元からも根を出して、根が一つに繋がっている様な多幹樹形である。
これと似たものに、筏吹きがある。
これも、立木が地面に倒れて、元は枝であったものが、幹として育ち多幹樹形となったもので、根連なりと違う点は、根が1ヶ所にある。
多幹樹形と同様に、幹数は偶数を避ける。

寄せ植え(よせうえ)

複数の木を一つの鉢や石に植え付けたものを寄せ植えと呼ぶ。
同樹種だけの物や、異種の植物を組み合わせた物、または造形物などと組み合わせてより創作性を高めた作品もある。

文人木(ぶんじんぎ)

中国の南画に見られる様な樹形が発端。
明治時代の文人達に好まれたのでこの様に呼ぶ。
現在では、細幹で枝数少なく枝嵩も小さいものも文人木と呼ぶ。

神と舎利

枝や幹の一部分が枯れることによって、樹皮が剥がれ白色の木質部分が剥き出しになることがある。
こうなった部分を、枝で起こったものを神(ジン)、幹で起こったものを舎利(シャリ)と呼ぶ。
自然に起こるものだが、盆栽では彫刻刀などで削り人為的に作り出すという技法がある。
主に真柏などの松柏に行うが、梅などにも施すことがある。

その他
埼玉県さいたま市には、盆栽村という地名がある。
これは、関東大震災後に、東京の盆栽業者が盆栽の育成を行なうために集団で移転してきたためである。

EUでの輸出規制
日本の盆栽はヨーロッパでは1970年頃から「enBonsai」として根強い人気があったが、2008年10月15日にオランダ輸出向けの庭木よりゴマダラカミキリが寄生されたものが見つかった事により輸入規制強化の緊急措置が施行された。
ゴマダラカミキリが侵入しない施設で2年間生育されたもの以外は輸入を認めないとする内容であり、2009、2010年度の輸出が事実上不可能となった。

[English Translation]