糠漬け (Nuka-zuke pickles)
糠漬け(ぬかづけ、糠味噌漬け(ぬかみそづけ)とも)とはどぶ漬け、どぼ漬けとも呼ばれ、糠を乳酸発酵させて作った糠床(ぬかどこ)の中に野菜を漬けこんで作る日本を代表する漬物の一つである。
漬け込む方法のことを指す場合もある。
一般に胡瓜・茄子・大根といった水分が多い野菜を漬けこむことが多いが、肉、魚、ゆで卵、蒟蒻などを漬けてもよい。
あまり漬かっていないものは浅漬け、一夜漬けと呼ばれ、漬かりすぎたものは古漬け、ひね漬けなどと呼ばれる。
また、干した大根を糠に漬けたものを沢庵漬けという。
以前はどこの家庭にも糠床があり糠漬けを作っていたが、最近は糠床の手入れの面倒さや臭いの問題からスーパーマーケット等で買ってすませる人がほとんどである。
しかしながら糠漬けは現代でもポピュラーな食べ物であり、ご飯、味噌汁、糠漬けの朝食を日本人の原風景の一つと考える人も多い。
お酒の肴としてもよく食べられている。
歴史
現在の形の糠漬けが出来たのは江戸時代初期と言われている。
もともとは奈良時代に須須保利(すずほり)という漬床として臼で挽いた穀類と大豆を使った漬物があったという。
江戸時代になって精米の際に出る米糠をこの穀類と大豆の代わりに使ったのが糠漬けである。
糠のビタミンB1が野菜に吸収されるのを利用して、当時流行していた脚気の被害をある程度防いだと考えられている。
製法
まず糠床を作る。
適量の糠(炒ってから使う場合もある)に一度煮沸してから冷した15%濃度の食塩水を加える。
水の量は糠床が味噌よりもやや固めになるぐらいである。
唐辛子、昆布とともに壺やタッパー等に詰め、表面を平らにならして糠床の準備ができる。
これに野菜くずを1週間ほど毎日取りかえて漬けると一応、完成である。
しかしこの段階では糠床は熟成していないため、漬物の風味は少ない。
野菜を漬けこみ毎日手入れすることで発酵がすすみ、風味が増していくのである。
夏場なら2ヶ月、冬場なら4ヶ月ほどでおいしい糠床が完成する。
もっとも大型食料品店などで熟成済みの糠床が入れ物ごと売られているので、これを利用すれば手間がかからない。
また、熟成した糠床を少量分けてもらうこと(床分けという)で短期間で熟成した糠床を作ることもできる。
風味付けに果物の皮を漬ける人もいる。
完成した糠床に、よく洗って塩で揉んだ野菜を漬けると糠漬けの完成である。
漬けこむ時間は野菜の大きさや季節によっても変わるが、丸のままの胡瓜なら半日ほどで漬けあがる。
あまり漬かっていなければ醤油をたらして食べ漬かり過ぎている場合は細かく刻んで軽く絞り、お茶漬けやチャーハンの具にしてもよい。
普通は洗ってから切って食べるが、洗わずに糠のついたまま食べる場合もある。
手入れ
糠床の腐敗を防ぐため、毎日底からかき混ぜて空気に触れていた部分を奥へと混ぜ込む必要がある。
温度の高い夏には、1日2度かき混ぜないといけない場合もある。
かき混ぜ終わったら平らにならしてふちについた糠を拭き、蓋を軽く置いておく。
また、野菜を漬けていると糠床が水っぽくなり腐敗しやすくなるので1週間に1度は窪みを作って布巾で吸い取るか、新たに糠と塩を加えて硬さを元に戻しておく。
旅行などでどうしても長期間手入れが出来ないときには、表面に塩を多めに振って冷蔵庫に入れておくとしばらくは腐敗が防げる。
発酵が進み過ぎて糠漬けが酸っぱくなったときは、卵の殻を砕いて入れる。
茄子の皮の色を綺麗に出したいときは鉄釘か専用の鉄製器具が売られているのでそれを入れておく。
鉄釘を入れる場合、先端が尖ったまま入れてしまうとかき混ぜるときに負傷する恐れがあるので、手を傷つけない程度に丸めておく必要がある。
強い刺激臭(セメダイン臭とかシンナー臭とも形容される)がする場合は、塩水を入れてよくかき混ぜるとよい。
なお、きちんと手入れされた糠床は不快ではないが若干独特の発酵臭がするため、冷暗所で換気の良いところに置いた方がよい。
健康上の注意
糠漬けは保存食品であり当然塩分が多いため、塩分の過剰摂取にならないよう気をつけるべきである。
また、米の糠と野菜の皮の部分は農薬がたまりやすいところとされる。
農薬が少ない米糠を使うのはもちろんのこと、糠床に農薬が蓄積することを防ぐために毎年新たに糠床を作りなおしたほうがいいと言う人もいる。
糠漬けされた食品一例
沢庵漬け、へしこ、河豚の卵巣の糠漬け、鰯のぬか炊き