肴 (Sakana)

肴(さかな)とは、酒を飲む際に添えて共に楽しむ対象を言い、これは食品に限らない。
酒肴(しゅこう)、酒にあてがうことからアテと呼ぶ事もある。

語源
「酒菜」から。
もともと惣菜を「な」といい、「菜」「魚」「肴」の字をあてていた。
酒のための「な(おかず)」という意味である。
つまり酒と一緒に楽しめれば魚介類でも野菜類でもよい。
時には食品でなくとも、「上司の悪口」や「ご近所の噂」、あるいは野球やサッカーといったスポーツの話題や、美術品や花(桜など)の鑑賞を目的とするものをサカナに酒を飲んでも、言葉の使用法としてはなんら差し支えない。
「魚」の漢字に「さかな」の読みが当てられるようになったのも魚類(干物が多い)が酒(さか)の肴(な)として特に好まれていたからである(魚類の項目を参照)。

概要

酒を嗜む事は娯楽の一とされ、その生成が比較的楽な事から古来から広く一般に楽しまれてきた。
アルコール(エタノール)を摂取すると人はその麻酔作用により酩酊を得、抑制を引き起こすためにストレス (生体)から開放され、様々な快楽に対し抵抗感を無くす。
その際に提供される娯楽を一般に肴と呼ぶ。
そのため、酒の肴は酒だ、と酒豪(呑兵衛)によって使われる言葉はあながち間違いでもなく、またその者の酒への耽溺さを端的に表していると言える。
観劇や噺などの日常娯楽に浸る事に併せ酒を呑むという、娯楽が食文化を発展させ、また食文化が娯楽を発展させてきた歴史は世界各地に存在する

とはいえ、いくら酒豪であってもビールであれ日本酒であれウイスキーであれ、それだけを飲み続けるというのは難しいものである。
また、ある種の食品を酒と共に味わうことで、酒・肴ともにその味を引き立てあって1+1が3にも4にもなる場合がある。
例えばワインとチーズを交互に口にすると、両者の味わいが単独の時よりも格段に増すことがある。
フランスではこのワインとこのチーズ(に限らず他の食品でも)の相性が良い、という組み合わせを「マリアージュ」(結婚)と呼んでかまびすしく取り上げられている。

また、酒だけを飲んだ場合に比べ、何か食べ物を一緒に摂った方がアルコールの吸収を緩和し、悪酔いや二日酔いを防止する効果がある。
酒(アルコール)は生物的的にエネルギーとはなっても栄養学的に有効な「食事」にはならないため、酒だけでは不足する栄養素を補給するため、食品に分類される肴と一緒に飲むことが医学的にも望ましいとされる。

肴の条件
酒飲みにとってはある程度の塩分があるものであればたいていのものは肴となりうる。
落語の「酢豆腐」で、暇人連中が集まって酒を飲むのに何か肴を、というのでどんなものがいいかという段になって、「安くって数が有って誰の口にも合って、腹にたまんなくって見てくれが良くって、しかも衛生にいい」というくだりがある。
この「腹にたまらない」というのがひとつの条件になろう。
肴はあくまで酒に付随するもの、つまり酒が主で肴が従である。
従ってフランス料理のフルコースでワインを飲んでも、料理は「肴」とは呼ばない。
故にあまり量のあるものやご飯、パン、麺類など主食的なものは肴に向かない。
しかし丼物や麺類の種物から飯や麺を除いたものは格好の肴となる場合がある。
前者は牛丼店における「牛皿」、後者は蕎麦屋におけるいわゆる「蕎麦蕎麦屋」といったものがそれに相当する。

日本酒の場合、同じく米を原料とするためか酒に合うものは飯に合い、飯に合うものは酒にも合う場合が多い。

日本酒特有の肴
ビールにソーセージ、シャブリ(辛口の白ワイン)に生カキ (貝)、というように、紋切り型な肴が割り当てられている場合があるが、ここでは主に日本酒の肴に特化したものについて述べる。

枡でのむ場合、枡の一角に盛り上げ、なめながら飲む。
アルコールには水分摂取を促進させ利尿を行うため、塩分が体内から不足する場合があり、そのために酒を呑むと塩が美味しく感じられる時がある。
また塩は糖の吸収を促進し甘味を感じ易くする効果があるため、カクテルにある「ソルティ~」の様に経験的に甘味を引き出すために用いられてきたモノもある。
テキーラでも「肴」として用いられる事がある。

嘗味噌
味噌をそのまま、あるいは調味したり副材料を混ぜ込んだ物(金山寺味噌など)を肴にする。
葱、鰹節、生姜、蕗、蕎麦の実などを用い、直火で炙って供する。

ウメ肉・山葵・もみ海苔
三種を少しずつ混ぜながら酒の合間に口に運ぶ。

個々の料理、珍味やいわゆる「乾き物」とよばれるおつまみ類については個々の記事に譲る。

[English Translation]