能面 (Noh Mask)
能面(のうめん)は、能楽や一部の神楽で用いられる仮面である。
伎楽面や舞楽の仮面などの影響を受けている。
概要
鬼神・老人・男・女・霊の5種類に大別される。
小面は若い女性を象る。
その他多くの能面がある。
特に鬼面の一つである般若の面(はんにゃ)、真蛇(しんじゃ)は有名である。
役者の芸と能面作家の腕によって、一つの面から深く様々な表情を見せることができ、仮面劇としての能を今日までも支えている。
女面、少年面、青年面は一部を除いて何れも白塗りの厚化粧、引眉で、お歯黒を付けており、これらは何れも、能が成立した時代の習慣を残したものである。
なお、『翁』の面は特徴的で、他の能面と異なり、
眼が全てくり抜いてある
ぼうぼう眉(綿や毛が植えてある)
面が口の部分で上下で切り離してあり、後ろのところで結んである(顎が動く)
古式でおおらかな面である。
能面は木(桧が多い)を彫り、彩色して製作するが、この工程を「面を打つ」という。
また、顔に付けることを「面を掛ける」という。
この場合「面(おもて)」と読み、「能」がつくと「能面(のうめん)」と読む。
近年は和紙製の張子面も登場している。
なお現在能(亡霊ではなく現在進行形として演じられる形式の能)の成年男性役には能面を用いないで演じられる。
しかし役者が顔の表情を作って表現することは禁じられている。
この能役者の素顔を「直面(ひためん)」と呼び、その名のとおり自分の素顔を能面と見立てて演ずる。
能のワキはすべて現在成年男性であるために直面で演じられている。
能面の例
女性の面
若い女性
小面(こおもて)、小姫(こひめ) 可憐な娘。
万眉(まんび)、孫次郎(まごじろう)、若女(わかおんな) 小面より若干年上。
増(ぞう)、増女(ぞうおんな)、節木増(ふしきぞう)、増髪(十寸神とも)(ますかみ) 清澄な神女。
中年女性
深井(ふかい) 理知的、都会風。
曲見(しゃくみ) 情感的、田舎風。
老女
姥(うば) 老女。
シテが尉をつけるとき、ツレが使う事がおおい。
痩女(やせおんな)
老女(ろうじょ)
霊女(りょうのおんな)
桧垣女(ひがきおんな)
鬼女
泥眼(でいがん) 眼に金泥がある。
品の良い美女の嫉妬に狂う様。
『葵上』の前シテなど。
鉄輪女(かなわおんな)、橋姫(はしひめ) 更に嫉妬の度が増したもの。
『鉄輪』などに。
般若(はんにゃ) 嫉妬の度が極めて強く、鬼のような形相になった女性。
良く見ると女性的な眉が描いてある。
蛇(じゃ)、真蛇(しんじゃ) 般若より更に鬼度が増したもの。
「もはや聞く耳を持たない」という意味なのか、耳がないのが特徴。
なお蛇は「道成寺 (能)」の専用面である。
若い男の面
少年
童子(どうじ)
慈童(じどう)
青年
若男(わかおとこ)
今若(いまわか)
十六(じゅうろく) 敦盛戦死の年齢に由縁。
盲目の少年
弱法師(よろぼし) やつれた感じ。
蝉丸(せみまる) 盲目の貴公子。
半僧半俗
喝食(かっしき) 『自然居士 (能)』、『花月 (能)』等。
稚児に相当。
武人の面
平太(へいだ) 赤ら顔の壮年武将。
中将(ちゅうじょう) 公達。
老人の面
小尉(こじょう) 品が良く、神体を表すのにも用いられる。
邯鄲男(かんたんおとこ) 『邯鄲』に用いられ、神体を表すのにも用いられる。
皺尉(しわじょう)、石王尉(いしおうじょう)、舞尉(まいじょう) 真ノ序ノ舞を舞う後シテ。
悪尉(あくじょう) 強く恐そうな顔の老人。
『翁』の面
白式尉(はくしきじょう) シテ
黒式尉(こくしきじょう) 三番叟
他の男の面
怪士(あやかし) 『船弁慶』の後シテなど。
黒髭(くろひげ) 龍神である後シテ。
大飛出(おおとびで)、小飛出(ことびで) 眼を剥き、カッと口を開いた様。
大癋見(おおべしみ)、小癋見(こべしみ) 口をしっかと結んだ様。
獅子口(ししぐち) 『石橋』など。
顰(しかみ) 『紅葉狩』など。
痩男(やせおとこ) 恨みのこもった庶民の亡霊。
蛙(かわず) 水死人。