花伝書 (Kadensho)
花伝書(かでんしょ)は能の伝書の一種。
八帖花伝書(はちじょう-かでんしょ)。
室町時代に編纂された世阿弥仮託の伝書。
八巻より成るところからこの通称がある。
本項で詳述。
風姿花伝(ふうしかでん)。
1420年ごろに成立した世阿弥真撰の能伝書。
秘書としてほとんど世上に流布しなかったところから1と混同された。
したがって、戦後しばらくまでは「花伝書」と呼ばれることが多かったが、現在では「風姿花伝」の書名を用いることが一般的。
花伝書(かでんしょ)、一名八帖花伝書(はちじょう-かでんしょ)は室町時代末期に編纂された能楽伝書。
全八巻。
著者・編者不明。
「日本思想大系」に翻刻を収める。
内容は、巻一に能の起源や式三番に関する伝を記している。
内容は巻二以下は位取り・調子・謡・型・囃子・装束などに関する実技的な理論や知識を集成する。
世阿弥に仮託されているが、実際には『風姿花伝』の記述の一部が含まれているにすぎない。
『風姿花伝』のほか、当時通行していた各種の伝書から有益な情報を取り集めて編集しなおしたものと思われる。
江戸時代初期ごろまでに古活字本・板本が版行されていたことからもわかるように、近世期を通じてもっとも流布した能伝書であった。
上記のように世阿弥や金春禅竹の伝書に比べれば全体的な構成を欠き、思想的な深みも見られず、雑多な能の知識を集成した書ではある。
その反面、実際に能を演ずる上での実際的な知識を得るためにはきわめて有意義である。
江戸や京都の能楽師から地方の素人弟子に至るまでひろく享受された背景には右のごとき事情が考えられる。
長らく世阿弥真撰の書と信じられていたこともあって、江戸期には高い権威を認められていた。
しかし、明治時代に入って世阿弥伝書の発見が相次ぐとほとんど顧みられなくなった。
現在ではむしろ、中世後期から近世初期にかけての演能技法を知るための資料として高い価値を持つ。