読本 (Tokuhon/Yomihon)
読本(とくほん)は、語学の教科書や一般向けの入門書。
外国語教育において、文法、会話などと並ぶ、文章を読解することおよびそのための能力を育成することを目的とした課程およびそのための教科書などの名称。
読本(よみほん)は、江戸時代後期の戯作の形式の一種。
本項で記述する。
読本(よみほん)は、江戸時代後期に流行した伝奇小説。
寛政の改革以降流行し、文化文政の頃全盛となり、幕末にかけて衰退した。
概要
口絵や挿絵もあったが、文章中心の読み物であるところから読本と呼ばれた。
史実に取材することがあっても基本的にフィクションであり、勧善懲悪思想などを中心に据えた読み物であった。
娯楽性も強いが漢語が散りばめられ、会話文主体で平易な滑稽本や草双紙などと比べ文学性の高いものと認識されている。
比較的高価である。
印刷技術や稿料制度など出版の体制が整っていたこともあり多くの読者を獲得した。
しかし大衆的で廉価な発行部数などは草双紙に及ばない。
江戸や大阪の町で上田秋成、曲亭馬琴、山東京伝といった作者が活躍した。
歴史
当時の中国文学の白話小説から影響を受けて生まれた。
古典とは違い同時代の中国語で書かれた白話小説は、唐通事という当時の中国語通訳のための教科書として日本に持ち込まれた。
しかしやがてそれらの小説を実用目的ではなく楽しみとして読むものが現れ、影響を受けた創作や翻訳を行うものが現れた。
特に荻生徂徠らに中国語を教えたこともある岡嶋冠山、さらに岡田白駒、都賀庭鐘、沢田一斎らによって出版物や講義の形で一般に俗語小説が広められ、読本が生まれる環境が作られた。
そのため初期読本は古典的知識を持つ知識人層によって書かれた。
白話小説からの翻案が行われ、さらに18世紀の後半には単なる翻案に留まらない『雨月物語』などの代表作が書かれ初期読本が栄えた。
明治時代に入ってからも馬琴の評価は高く、坪内逍遥や二葉亭四迷によって近代文学が打ち立てられるまで日本文学は読本など戯作の影響を逃れなかった。
代表的な読本
『雨月物語』上田秋成
『南総里見八犬伝』曲亭馬琴
『繁夜話』都賀庭鐘
『英草紙』都賀庭鐘
『本朝水滸伝』建部綾足