雲外鏡 (Ungaikyo)

雲外鏡(うんがいきょう) は、特殊な鏡が長い年月を経たのちに変じたという、日本の妖怪の一種。
浮世絵師・鳥山石燕の妖怪画集『百器徒然袋』(天明4年〈1784年〉)に描かれている。

民俗学的知見から、鏡の付喪神(つくもがみ)と見られる。

石燕の雲外鏡

化け物の正体を明らかにする「照魔鏡(しょうまきょう)」と呼ばれる鏡が、長い年月を経た末に妖怪化したものとされている。
『百器徒然袋』(右上の画像がそれ)では、公家の屋敷にある丸鏡として描かれている。
鏡はすだれ御簾(みす)の陰から半面のみ姿を見せており、怪しげな黒雲(あるいは、そのような意匠の鏡立て)を伴っている。
その鏡面には邪(よこしま)な雰囲気を漂わせつつ舌を出してこちらに視線をくれる化け物の顔面が浮かび上がっている。

研究者の分析と知見

妖怪研究家(作家)・多田克己らの著書においては、雲外鏡は、鏡の付喪神と解釈されている。

また、妖怪作品の多い漫画家・水木しげるの説明もある。
8月 (旧暦)の十五夜に月明かりの下(もと)で石英のトレイに水を張り、その水で鏡面に化け物の姿を描くと、鏡の中に化け物が棲みつく。
それが雲外鏡であるという。

デフォルメ

現代的大衆文化に基づいて著される妖怪図鑑や画集では、雲外鏡は腹に鏡をつけた(腹が鏡になっている)化け狸のような姿の妖怪であるとか、自らの体に様々なものを映し出すことができる、などと解説されることが少なくない。
しかし、妖怪研究家(作家)・村上健司の指摘によれば、そのようなデフォルメされた形と能力を持った雲外鏡の原典は特撮映画『妖怪大戦争 (1968年の映画)』に登場する古狸(ふる-だぬき)様の雲外鏡にある。
彼は、以降のイメージをその影響下での二次創作物であるとする。

その他の不可思議な鏡

類似点が多いもの、および、類縁ではないが「不可思議な鏡」という点での相似性が見られるものをここに示す。

照妖鏡(照妖鑑とも称する)は、中国明代の伝奇『封神演義』に登場する、本来の姿を映し出す鏡。
終南山の仙人・雲中子の宝貝(パオペイ。仙術の武具)で、 人に化けた魔物の正体を看破することができる。
妖怪化する以前の雲外鏡(照魔鏡)と類似点が多い。

浄玻璃鏡(じょうはりのかがみ)は、(日本の)地獄 (仏教)の閻魔が亡者の善悪を見極めるのに用いる水晶製の鏡。

ドイツ民話であり童話である『白雪姫』に登場する魔法の鏡は、鏡の精霊が宿ったもの。
しかし、強い自我を持っており、西洋占星術で用いられる水晶球を鏡に変えたようなところもあって、雲外鏡とは大きく異なる。

古代中国や日本に実在する「魔鏡」は、光の屈折で像を映し出す仕掛けを持つ銅鏡(青銅鏡)である。
隠れ切支丹鏡。

[English Translation]