鎮魂祭 (Chinkon-sai Festival (mass or ceremony for the repose of a soul))
鎮魂祭(ちんこんさい)とは、宮中で新嘗祭の前日に天皇の鎮魂を行う儀式である。
宮中三殿に近い綾綺殿にて行われる。
石上神宮でも同日に行われている。
天皇に対して行う場合には「みたましずめ」「みたまふり」と言う。
鎮魂祭はかつては旧暦11月の2度目の寅の日に行われていた(太陽暦導入後は11月22日)。
この日は太陽の活力が最も弱くなる冬至の時期であり、太陽神アマテラスの子孫であるとされる天皇の魂の活力を高めるために行われた儀式と考えられる。
また、新嘗祭(または大嘗祭)という重大な祭事に臨む天皇の霊を強化する祭でもある。
第二次世界大戦以後は皇后や皇太子夫妻に対しても行われている。
宇気槽の儀
鎮魂の儀では、「宇気槽の儀」が行われる。
「宇気槽の儀」とは、宇気槽(うきふね)と呼ばれる箱を伏せ、その上に女官が乗って桙で宇気槽の底を10回突く儀式のことである。
これは日本神話の岩戸隠れの場面においてアメノウズメが槽に乗って踊ったという伝承に基づくとされている。
『古語拾遺』に「凡(およ)そ鎮魂の儀は、天鈿女命の遺跡(あと)なり」とある。
かつてこの儀は、天鈿女命の後裔である猿女君の女性が行っており、「猿女の鎮魂」とも呼ばれていた。
魂振の儀
鎮魂の儀の後、天皇の衣を左右に10回振る魂振の儀が行われる。
これはニギハヤヒが天津神より下された十種の神宝を用いた呪法に由来するとされる。
『先代旧事本紀』には、饒速日命の子のウマシマジが十種の神宝を使って神武天皇の心身の安鎮を祈ったとの記述がある。
「所謂(いはゆる)御鎮魂祭は此よりして始(おこ)れり」としている。