府 (Fu)

府(ふ)

中国
「蔵」
1. 原意は、古代中国で官物や財貨を収蔵した倉庫。

2. 農業が盛んで収穫が高く豊かな土地。
「天府」とも。
四川など。

「政庁」
3. 漢から明代までの中国で、各地に王として封建皇族が軍事と行政の拠点として開いた政庁。
「王府」といった。
政庁には税穀を備蓄するための蔵が並んでいたことが語源。

4. 明代から清代までの中国で、都や主要都市の要所に置かれた皇族の大邸宅。
単なる住居だが、上記 1 の王府の名残りで「王府」といった。
明初南京の永楽帝、清代北京の恭親王など。

「地区」
5. 唐代から宋 (王朝)にかけて各地で軍事権と行政権を掌握した節度使が本拠とした地。
上記の王府からの発展で「使府」ともいった。
広州市、揚州、許昌など「州」がつくものが多い。
これらの多くが 6 の地名に引き継がれる。

6. 唐から清までの中国で、県の上に置かれた行政区画。

7. 宋代から清代までの中国や北方民族国家で、首都や副都として機能した大都市の副称。
北宋の開封、南宋の杭州、遼の大同 (山西省)、明の南京市や北京市、清の瀋陽など。

日本
中国の「政庁」の意味に由来するもの
大宰府: 古代から律令制日本の律令制の時代にかけて、九州・壱岐・対馬を所轄し日本の外交・防衛にあたった機関。

国府: 律令制で、国衙を中心に発達した都市。

内大臣府: 明治から昭和の初めにかけて、内大臣府が執務の拠点とした施設及び組織。

枢府:「枢密院」の通称。

総督府: 明治から昭和の初めにかけて外地の総督が執務の拠点とした施設。
台湾総督府、韓国統監府、朝鮮総督府、関東総督府、関東都督府など。

総理府: かつて内閣総理大臣が主任大臣として所掌していた行政機関。

内閣府: 2001年の中央省庁再編で総理府を改組した行政機関。

大統領府/首相府: 外国の大統領や首相が執務の拠点とする施設の総称。
「世界の官邸」と同義。
ホワイトハウス、連邦首相府 (ドイツ)など。

中国の「政庁」の意味から「統治者」の概念が日本で独立したもの
左府: 律令制の左大臣の唐名。

右府: 律令制の右大臣の唐名。

内府: 律令制の内大臣の唐名。

幕府: 律令制の近衛大将の唐名。
源頼朝は征夷大将軍任官前に右近衛大将だったことから「幕府」と呼ばれた。
後にこれが「将軍の居所」という意味に変遷する。

内府: 明治から昭和の初めにかけてあった「内大臣府」の通称。

中国の「政庁」の意味から「軍事」の概念が日本で独立したもの
近衛兵令制の五衛府: 律令制で、おもに内裏を警護した五つの組織。

近衛兵六衛府: 奈良時代後期に上の五衛府が改組され、左右の近衛府・兵衛府・衛門府からなる六衛府となった。

鎮守府古代 鎮守府: 古代の陸奥国に置かれた軍政を司る機関。

幕府: 鎌倉時代・室町時代には「将軍の居所」を指した。
幕府が「将軍を頂点とする中央政府」を意味するようになったのは江戸時代中頃から。

鎮守府海軍 鎮守府: 明治時代に日本の沿岸を五つの海軍区に分け、各海軍区に軍港とともに設置された海軍の拠点。
横須賀鎮守府、呉鎮守府、佐世保鎮守府、舞鶴鎮守府が終戦まで存在した。

中国の「地区」の意味に由来するもの
江戸:「幕府の所在地」という意味から、江戸に入ることを「入府」、江戸町内のことを「府中」などといった。

府藩県制: 明治維新直後にそれまでの幕府直轄地のうち、京都所司代・城代・奉行が支配していた地を「府」と改めたもの。
箱館府・江戸府・神奈川府・越後府・新潟府・甲斐府・度会府・奈良府・京都府・大阪府・長崎府。
廃藩置県までに六府が廃止され三府が残った。

三府: 明治から昭和にかけて存在した東京府・京都府・大阪府。
1943年(昭和18年)に東京が「都」となり、京都・大阪の二府が残った。

植民地統治下の朝鮮において、主要都市に置かれた行政区画。
内地の市に相当。

[English Translation]