琵琶湖 (Lake Biwa)
琵琶湖(びわこ)は、滋賀県にある湖。
日本で日本一の一覧の面積を誇る。
湖沼水質保全特別措置法指定湖沼。
ラムサール条約登録湿地。
河川法上は一級水系「淀川水系」に属する一級河川であり、正式名称は「一級河川琵琶湖」として扱われる。
地理
滋賀県の面積の6分の1を占め、流れ出る水は瀬田川、宇治川、淀川と名前を変えて、大阪湾(瀬戸内海)へ至る。
また、湖水を京都市や淀川流域の水道水として使用するために、琵琶湖疏水が京都に流れている。
最狭部に架かる琵琶湖大橋を挟んだ北側部分を北湖(太湖)、南側部分を南湖と呼び、水質や水の流れなどが異なる。
琵琶湖を取り巻く各自治体は、大きく湖南・湖東・湖北・湖西に分けられる(湖南から甲賀を分けることもある)。
これらの区分については「滋賀県地域」を参照すること。
湖を取り囲む山地からの流れが源流で、京阪神の水瓶という機能も担っている。
また、古くから水上交通路としても利用されており、明治時代に鉄道が開通するまでは、京都市・大阪市から東山道・北陸地方への物資輸送に利用されていた。
なお「急がば回れ」という諺は、現在の草津市と大津市の間を結んでいた「矢橋の渡し」を詠んだ和歌が語源となっている。
東京湾中等潮位(T.P.)基準で+84.371 m、大阪湾平均干潮位(O.P.)基準で+85.614 mの高さが琵琶湖基準水位(B.S.L.)と定められており、「琵琶湖の水位」とはB.S.L.を±0 mとした水位のことをいう。
B.S.L.は、1874年(明治7年)に鳥居川観測点において「これ以上水位が下がることはない」と判断された点として定められたものであるが、その後、瀬田川の改修によって流出量が多くなったことなどにより、水位がB.S.L.以下になることが多くなった。
現在では、B.S.L.の値がおおむね満水位となるように水位の調整が行われている。
歴史
琵琶湖が形成された時期は、約400万年~600万年前で、現在の三重県伊賀市平田に地殻変動によってできた構造湖であった(大山田湖)。
これが次第に北へ移動し、比良山系によって止められる形で現在の琵琶湖の位置に至ったという。
大山田湖以前、現在の琵琶湖の位置には山(古琵琶湖山脈)があり、鈴鹿山脈は未だ隆起せず、今日の琵琶湖東南部の河川は伊勢湾へ流れていた。
それを裏付けるように、鈴鹿山脈の主要な地質は礫岩である。
また、琵琶湖に流入する最大の川で、東南に位置する野洲川は、当時西方ではなく、東方へ流れていたという。
世界の湖の中でも、バイカル湖やタンガニーカ湖に次いで3番目に古い古代湖であると目されている。
縄文時代や弥生時代から交通路としても利用され、丸木舟なども出土している。
古代には、都から近い淡水の海として近淡海(ちかつあわうみ、単に淡海とも。
古事記では「淡海の湖」(あふみのうみ)と記載)と呼ばれた。
近淡海に対し、都から遠い淡水の海として浜名湖が遠淡海(とおつあわうみ)と呼ばれ、それぞれが「近江国(おうみのくに、現在の滋賀県)」と遠江国(とおとうみのくに、現在の静岡県西部)の語源になった。
別名の鳰海(におのうみ)は、近江国の歌枕である。
天智天皇により、一時は琵琶湖西岸に大津京が置かれた。
測量技術が発達し湖の形が琵琶に似ていることが判った江戸時代中期以降、琵琶湖という名称が定着した。
琵琶湖は、若狭湾沿岸からの年貢の輸送路としても利用されており、湖上で賊に襲撃された記録なども残されている。
湖西には、大津から若狭国へ向かう西近江路や若狭街道、京都から琵琶湖などを経て今庄町から北陸道につながる北国街道などの各種交通路が整備された。
湖上交通による荷物の輸送も行われており、大津や堅田などは港湾都市として発達した。
安土桃山時代には、豊臣秀吉は、大津の船持に大津百艘船を整備し、観音寺の船奉行の支配下に置かれ、特権を与えられて保護された。
近世になると、大津は松原や米原市など他の港と対立し、江戸時代には松原、米原、長浜市が「彦根藩三湊」として井伊氏の保護を受けた。
琵琶湖が淀川となって大阪湾に流れる位置から、京都が首都だった時代には、若狭湾で陸揚げされた物資が、琵琶湖の湖上交通で京都や大坂に輸送されていた。
湖上を介した水運は陸上交通の発達によって斜陽となったが、高度経済成長期には琵琶湖から運河を掘削して日本海や太平洋・瀬戸内海を結ぶ運河構想が持ち上がった。
当初は、琵琶湖から日本海と瀬戸内海を結ぶ阪敦運河構想を北栄造福井県知事が調整し始めたが、当時の平田佐矩四日市市長が熱心だったこともあり、福井県・滋賀県・岐阜県・愛知県・三重県、名古屋市・敦賀市・四日市市の間で、自民党副総裁の大野伴睦を会長に、総工費2500億円~3500億円に及ぶ若狭湾~琵琶湖~伊勢湾を結ぶ運河の建設期成同盟が結成された。
しかし、大野自民党副総裁、平田四日市市長の死去と、北福井県知事、畑守敦賀市長が相次いで落選するなど、推進の中心人物を失い、1970年には中部圏開発整備本部が調査の打ち切りを発表した。)。
1890年(明治23年) - 京都市へ水を供給する琵琶湖疏水開通。
1950年(昭和25年)7月24日 - 琵琶湖国定公園が指定される。
1964年(昭和39年)9月28日 - 琵琶湖大橋が開通。
1974年(昭和49年)9月26日 - 近江大橋有料道路が開通。
1980年(昭和55年) - 琵琶湖条例(滋賀県琵琶湖の富栄養化の防止に関する条例)が制定される。
1985年(昭和60年)12月 - 湖沼法における指定湖沼に指定される。
1993年(平成5年) - ラムサール条約登録湿地に認定される。
2003年(平成15年) - 琵琶湖のレジャー利用適正化条例が施行される。
生物相
琵琶湖の生態系は多様で、1000種類を超える動・植物が生息している。
長い期間自立したためその中には琵琶湖にのみ生息する固有種も数多く確認されている。
その規模も大きく、独特の漁業が発達した。
その一方で、オオクチバスやブルーギルをはじめとする外来種の侵入や1992年の琵琶湖水位操作規則の改訂、内湖の消失、水田とのネットワークの分断等によって固有の生物相が大きく攪乱を受け、漁獲高が激減した種も多い。
それらへの対抗策も講じられ、外来種駆除や生態系に配慮した水位操作、内湖の再生など様々な取り組みが行われているが、まだ十分な効果をあげられていない。
また、琵琶湖産の稚アユは日本各地へ放流され、そのために琵琶湖固有種が各地で繁殖するという、移入種を生み出す元ともなっている。
魚貝類
固有種(魚)ビワコオオナマズ(ナマズ科)、イワトコナマズ(ナマズ科)、ホンモロコ(コイ科)、ビワヒガイ(コイ科)、アブラヒガイ(コイ科)
固有亜種(魚):ビワマス(サケ科)
固有種(貝)ビワコミズシタダミ(ミズシタダミ科)、セタシジミ(シジミ科)、ビワカワニナ類(カワニナ科ビワカワニナ属)、オウミガイ(モノアラガイ科)、カドヒラマキガイ(ヒラマキガイ科)、ヒロクチヒラマキガイ(ヒラマキガイ科)
外来種(魚)オオクチバス、コクチバス、ブルーギル、カムルチー(ライギョ)、レンギョ
水草
固有種:サンネンモ(ヒルムシロ科)、ネジレモ(トチカガミ科)
その他
固有種(プランクトン):ビワクンショウモ、ビワツボカムリ
流入する主な河川
(自治体名は主な流域)
野洲川(やすがわ、甲賀市、湖南市、野洲市、守山市)
日野川 (滋賀県)(ひのがわ、蒲生郡、近江八幡市)
愛知川(えちがわ、愛知郡 (滋賀県)、東近江市)
安曇川(あどがわ、高島市)
鴨川(かもがわ、高島市)
宇曽川(うそがわ、愛知郡、彦根市)
犬上川(いぬかみがわ、犬上郡、彦根市)
芹川 (滋賀県)(せりがわ、犬上郡、彦根市)
姉川(あねがわ、東浅井郡、長浜市)
余呉川(よごがわ、伊香郡、東浅井郡)
真野川 (滋賀県)(まのがわ、大津市)
港
大津港 (滋賀県)
長浜港 (滋賀県)
彦根港
竹生島港
今津港
沖島漁港
おごと温泉港
草津烏丸半島港
琵琶湖大橋港
湖面の島
竹生島(面積0.14km2)、沖島(面積1.5km2)、多景島、沖の白石、矢橋帰帆島がある。
矢橋帰帆島は、下水処理場のために埋め立てて造った人工島である。
琵琶湖八景
1945年6月に公募によって選ばれた。
暁霧 - 海津大崎の岩礁(高島市)
涼風 - 雄松崎の白汀(大津市)
煙雨 - 比叡の樹林(大津市)
夕陽 - 瀬田・石山の清流(大津市)
新雪 - 賤ヶ岳の大観(木之本町)
深緑 - 竹生島の沈影(長浜市)
月明 - 彦根の古城(彦根市)
春色 - 安土・八幡の水郷(近江八幡市・安土町)
琵琶湖の環境保全
高度成長にともなって湖水の水質汚濁や富栄養化がすすんだ。
このため滋賀県は独自に工業排水と家庭用排水を規制する、いわゆる琵琶湖条例(滋賀県琵琶湖の富栄養化の防止に関する条例)を制定した。
このほかに、琵琶湖に関しては、滋賀県琵琶湖のレジャー利用の適正化に関する条例や、滋賀県琵琶湖のヨシ群落の保全に関する条例、また景観を守るためのふるさと滋賀の風景を守り育てる条例などがある。
また、周辺の工場は地下水をくみ上げ、さらに汚染水地下水浸透禁止の水質汚濁防止法が改正されるまでは、汚染水を意識的に地下に浸透していた工場も多く、琵琶湖周辺の工場地帯の地下水汚染は進んでおり、世界一の閉鎖性水域の琵琶湖の水環境を守るために、早急の対策が必要と言われている。
沿岸自治体
琵琶湖に接する自治体は以下の通り(北から時計回り)。
西浅井町
高月町
木之本町
湖北町
長浜市
米原市
彦根市
東近江市
近江八幡市
野洲市
守山市
草津市
大津市
高島市
境界の設定
琵琶湖の市町境界については、今までどの市町にも組み入れられていなかったが、沿岸の各自治体で行う共同会議において2007年5月8日に境界の設定に合意し、各自治体の議会の同意を得た上で総務省に届け出を行い、9月28日付で官報に確定が公示された。
境界確定の目的は主に地方交付税交付金の増額である。
また、増額された交付金の半分は琵琶湖の保全に使われることが発表されている。
その他
表記
「琵」「琶」が当用漢字・常用漢字外であることから、滋賀県内では平仮名書きにした「びわこ」「びわ湖」という表記も数多く見られる。
かつては「びわ町」という自治体も存在した。
「びわこ」の例
びわこ銀行、びわこ競艇場、大津びわこ競輪場、MIOびわこ草津、びわこ成蹊スポーツ大学、東びわこ農業協同組合など
「びわ湖」の例
びわ湖放送、南びわ湖駅(仮称、旧仮称は「びわこ栗東駅」)など