紀伊山地の霊場と参詣道 (Sacred Sites and Pilgrimage Routes in the Kii Mountain Range)
紀伊山地の霊場と参詣道(きいさんちのれいじょうとさんけいみち)は、和歌山県・奈良県・三重県にまたがる3つの霊場と参詣道(熊野古道、大峯奥駈道、高野山町石道)を登録対象とする世界遺産(文化遺産_(世界遺産))。
2004年7月7日に登録された。
遺産の種別
文化遺産
記念工作物
遺跡(文化的景観)
登録基準
具体的には、(2) 紀伊山地の文化的景観を形成する記念碑と遺跡は神道と仏教のたぐいまれな融合であり、東アジアにおける宗教文化の交流と発展を例証する。
(3) 紀伊山地の神社と仏教寺院は、それらに関連する宗教儀式とともに、1000年以上にわたる日本の宗教文化の発展に関するひときわ優れた証拠性を有する。
(4) 紀伊山地は神社・寺院建築のたぐいまれな形式の創造の素地となり、それらは日本の紀伊山地以外の寺院・神社建築に重要な影響を与えた。
(6) と同時に、紀伊山地の遺跡と森林景観は、過去1200年以上にわたる聖山の持続的で並外れて記録に残されている伝統を反映している。
遺産
以下に登録資産の一覧を示す。
登録資産のうち、「吉野・大峯」、「熊野三山(補陀洛山寺除く)」、「参詣道」の一部(大峯奥駈道および熊野参詣道の一部)は吉野熊野国立公園に含まれる。
また、「高野山」、熊野参詣道の一部は高野龍神国定公園に含まれる
地権者との対立
三重県尾鷲市で遺産登録地域の地権者が抗議の意を込めて参道の樹木などに落書きをしており問題になっている。
一般的ないたずらの落書きとは違い抗議が目的であるために強硬な措置は取られず話し合いにより解決する方向である。
これは、地権者に対する事前説明がなされずに遺産登録されたため、地権者の職業である林業ができなくなったためである。
観光地化による影響
遺産本体部分やその緩衝地帯、さらには(世界遺産には含まれないが)その周辺地域での損壊が絶えない。
特に、参詣道跡である熊野古道周辺でそれが著しい。
また、世界遺産登録後、観光客の殺到によって一部の遺産では荒廃が進んでいるとの指摘もある。
関西電力の風力発電計画
2005年1月、関西電力は果無山脈に風力発電のための風車を建設する計画を発表した。
果無山脈は遺産にも緩衝地帯にもあたらないが、熊野古道から容易に眺望しうる
このため景観に悪影響を与える恐れがある。
また、果無山脈それ自体が近隣の河川(熊野川、日置川、富田川、日高川)の分水嶺となっており、工事による河川への悪影響が懸念されている。
古道の「整備」
中辺路・大辺路を中心に2002年頃から数度にわたり、地元自治体の公共事業(古道の整備を目的とする)、古道とその周辺での植生の刈り払いが何度か行われたが、
景観の悪化や、貴重な照葉樹林の損失など、むしろ弊害が大きく批判の対象となっている。
加えて、いくつかの事例には和歌山県が関与している他、国の緊急地域雇用創出特別基金事業の下で行われた県の公共事業「緑の雇用事業」の一環であるものもあるなど、行政当局の遺産保護に対する姿勢や「縦割り」の弊害を問う声があがっている。
世界遺産を守る取組み
2005年7月、世界遺産条例が施行された。