大津市 (Otsu City)
大津市(おおつし)は、滋賀県の南西端に位置する都市で、同県の県庁所在地である。
中核市に指定されている。
概要
天智天皇が近江宮に遷都して以来の歴史を持つ古都であり、世界文化遺産の比叡山延暦寺や園城寺(三井寺)、日吉大社などの神社仏閣をはじめ史跡が多く点在する。
琵琶湖の重要港湾かつ東海道53番目の宿場だった大津宿を中心に、膳所藩の城下町だった膳所、比叡山の門前町坂本 (大津市)、湖上交易の拠点だった堅田などからなる。
滋賀県の県庁所在地ではあるが、県の南西端に位置し、また京都市に隣接し京都の衛星都市として発展してきたことから、滋賀県の中核都市としての性格は弱い。
地理
位置
大津市の市域は、琵琶湖の南西岸から南岸にかけて南北に細長く広がっている。
その名の通り、琵琶湖の水上交通の要衝であった。
西隣の京都市との境には比叡山が南北に走り、山を挟んで向かい合う同市との関係が深い。
なお、県庁所在地同士が隣接している例は日本では両市のほか、山形市と仙台市、福岡市と佐賀市の計3例がある。
が、この中でも格段に近接しており、両市の中心部からの距離が約10kmしか離れていない(山形市と仙台市の中心部の距離は約62km、福岡市と佐賀市は約53km)。
地形
湖:琵琶湖
川:淀川・大戸川
山:比叡山・長等山(ながらやま)・音羽山・田上山(たなかみやま)
気候
内陸性気候、それに併せて市南部は瀬戸内海式気候、市北部は日本海側気候を示す。
豪雪地帯の旧堅田町は冬季雪が多い。
歴史
縄文時代以前 瀬田川西岸に石山貝塚が築かれる。
667年(天智天皇6年) 天智天皇が近江大津宮に都を定める。
672年(弘文天皇元年) 壬申の乱。
瀬田川の橋(後の瀬田の唐橋)をめぐって戦闘が発生、弘文天皇(明治3年(1870年)に弘文天皇の諡号を贈られる。)は自決し近江大津宮は廃絶。
奈良時代には瀬田に国府が置かれ、田上山など湖南の山々は平城京造営の木材を搬出する場となる。
747年(天平19年) 聖武天皇の発願により瀬田川沿いの石山に堂宇を建立、後に石山寺となる。
788年(延暦7年) 最澄が比叡山に堂宇を開き、後に延暦寺となる。
山麓の坂本 (大津市)がその門前町として繁栄。
794年(延暦13年) 近江大津宮廃絶後、その跡地は「古津」と呼ばれていたが、平安京遷都を機に大津に復する詔が出される。
平安時代の大津は、平安京から東国・北国へと向かう人や物を扱う港となる。
延暦寺と園城寺(三井寺)の抗争が激化し僧兵が登場する。
石山寺は多くの平安文学の舞台となる。
1096年(嘉保3年) 永長東海地震。
瀬田の橋が落ちるなど大きな被害。
1184年(寿永3年) 木曾義仲、今井兼平主従、源義経、源範頼らとの粟津の戦いに敗れる。
室町時代に入ると延暦寺の勢力はますます大きくなり、足利義教や細川政元ら権力者による焼き討ちが相次ぐ。
大津や坂本、堅田などが物資の水上運送で繁栄、堅田水軍が活躍。
1571年(元亀2年) 織田信長、比叡山焼き討ち (1571年)。
明智光秀に坂本城を造らせ、琵琶湖の守りとする。
1586年(天正14年) 豊臣秀吉、坂本城を廃城にして現在の浜大津の場所に大津城を造らせる。
1600年(慶長5年) 関ヶ原の戦いと同じ頃、大津城の戦いが起こり大津城下は全焼する。
1601年(慶長6年) 徳川家康、大津城を廃城にして大津と瀬田の間に膳所城を造らせる。
江戸時代に大津は再興。
琵琶湖を往来する船業者の組合・大津百艘船の本拠が置かれ琵琶湖水運の拠点となる。
また東海道の宿場である大津宿(天領)は、物資運送と人々の往来で繁栄。
大津絵、大津算盤などが名物となる。
膳所城下は膳所藩のもと、しじみ採りや膳所焼が有名になるが藩財政は常に逼迫していた。
1662年(寛文元年) 琵琶湖西岸地震。
琵琶湖沿岸から京都にかけて倒壊建物・死者多数。
膳所城で建物の倒壊。
1698年(元禄11年) 堅田藩が立藩、1826年まで続く。
1868年(明治元年) 大津県が置かれる。
1869年(明治2年) 大津〜海津間に汽船航路が開通。
1870年(明治3年) 膳所城取り壊し、翌年膳所藩は膳所県になる。
1872年(明治5年) 滋賀県成立、大津は県庁所在地に。
1880年(明治13年) 逢坂山トンネル開通、京都と鉄道が繋がる。
1889年(明治22年) 大津〜長浜間の連絡汽船に代わる鉄道が完成、東海道本線開通。
1890年(明治23年) 琵琶湖疏水完成。
琵琶湖沿岸から京都への水運が通じる。
1891年(明治24年)5月11日 大津事件。
1898年(明治31年)10月1日 市制施行により大津市となる。
1905年(明治38年) 南郷洗堰(現在の瀬田川洗堰)完成。
1932年(昭和7年)5月10日 滋賀村を編入合併。
1933年(昭和8年)4月1日 大津市(旧制)、膳所町、石山町の1市2町が新設合併し、新制の大津市となる。
1951年(昭和26年)4月1日 雄琴村、坂本村、下阪本村、大石村、下田上村を編入合併。
1967年(昭和42年)4月1日 瀬田町、堅田町を編入合併。
1994年(平成6年) 「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」(世界遺産条約)に基づいて、延暦寺が金閣寺、清水寺などと共に世界遺産に登録される。
(12月登録)
2001年(平成13年)4月1日 特例市に指定される。
2003年(平成15年)10月10日 古都保存法に基づき、全国で10番目の古都に指定。
2006年(平成18年)3月20日 志賀町 (滋賀県)を編入合併。
2008年(平成20年) 3月18日 源氏物語千年紀in湖都大津開催。
2009年(平成21年)4月1日 中核市に指定される。
産業
伝統産業として、大津絵・大津算盤・松本瓦(桟瓦、簡略瓦)・膳所焼・湖南焼などがあるほか、以下の特筆すべき品目がある。
膳所茶
- 黒船来航時、船上でマシュー・ペリーに供されたさいに気に入られ、のち対米輸出品目第1号となった。
海外
ランシング (ミシガン州)市(アメリカ合衆国ミシガン州)
1969年10月1日姉妹都市提携
インターラーケン市(スイスベルン州)
1978年10月1日姉妹都市提携
ヴュルツブルク市(ドイツ連邦共和国バイエルン州)
1979年2月13日姉妹都市提携
牡丹江市(中華人民共和国黒竜江省)
1984年12月3日姉妹都市提携
亀尾市(大韓民国慶尚北道)
1990年4月12日姉妹都市提携
近江舞子
- 白砂青松100選。
びわこ文化公園
なぎさ公園 (大津市)
皇子が丘公園
長等公園
膳所城跡公園
博物館・ホール
滋賀県立琵琶湖文化館
滋賀県立近代美術館
大津市歴史博物館
三橋節子美術館
木下美術館
大津絵美術館
淡淡美術館
近江神宮時計博物館
膳所焼美術館
大津市科学館
水のめぐみ館アクア琵琶
滋賀県立芸術劇場 びわ湖ホール
田上郷土史料館
田上鉱物博物館
比叡山国宝殿
建部大社宝物殿
立木音楽堂
延暦寺
- 天台宗総本山。
山号は比叡山。
最澄開山。
園城寺(三井寺)
- 天台寺門宗総本山。
山号は長等山。
西国三十三箇所第14番札所。
円満院
- 近畿三十六不動尊第25番。
石山寺
- 西国三十三箇所第13番札所。
正法寺 (大津市)
- 西国三十三箇所第12番札所。
西教寺
- 伝聖徳太子創建。
聖衆来迎寺
義仲寺
- 源義仲・松尾芭蕉の墓がある。
長安寺 (大津市)
- 恵心僧都源信縁の寺。
坂本 (大津市)
- 重要伝統的建造物群保存地区。
延暦寺坂本本坊庭園
- 以下の10箇所の庭園が国の名勝に指定。
雙厳院庭園
宝積院庭園
滋賀院門跡庭園
佛乗院庭園
旧白毫院庭園
旧竹林院庭園
蓮華院庭園
律院庭園
実蔵坊庭園
寿量院庭園
浮御堂
明王院 (大津市)
地主神社
- 信興淵大明神(摂末社、七シコブチのひとつ)
建部大社
- 近江国一宮
日吉大社
- 西本宮と東本宮の本殿は国宝、重要文化財建造物14棟3基。
日吉東照宮
- 権現造の発祥、関西の日光。
本殿、唐門、透塀が国の重要文化財。
唐崎神社
- 近江八景のひとつ。
高穴穂神社
天孫神社
- 祭礼は大津祭と呼ばれ、湖国三大祭のひとつ。
長等神社
三尾神社
近江神宮
- 天智天皇が日本で初めて水時計(漏刻)を設置した故事に因み、時計博物館を併設。
近津尾神社
- 松尾芭蕉ゆかりの神社。
篠津神社
- 表門は膳所城から移築されたもので国の重要文化財。
佐久奈度神社
- 祓戸大神を祀る名神大社
春日神社 (大津市)
- 本殿は国の重要文化財。
関蝉丸神社
- 音曲諸芸道の神。
謡曲蝉丸で有名。
小椋神社
神田神社 (大津市真野)
還来神社
小野神社 (大津市)、小野篁神社、小野道風神社
八所神社 (大津市伊香立)
八所神社 (大津市八屋戸)
樹下神社 (大津市木戸)
樹下神社 (大津市北小松)
唐臼山古墳
- 小野妹子墓とされ、小野妹子公園が整備される。
坂本城跡
- 明智光秀が築いた城。
大津城跡
膳所城跡
- 膳所藩本多氏の居城。
逢坂関跡
琵琶湖クルーズ
- 琵琶湖汽船が大津港 (滋賀県)などから運航。
大津港マリーナ
雄琴温泉
びわ湖温泉
大津びわこ競輪場
びわこ競艇場
びわ湖バレイ
比良げんき村
祭り
山王祭(中心神事:毎年4月12〜14日)
びわ湖大津夏祭り
びわ湖大花火大会(毎年8月8日)
船幸祭(船上渡御:毎年8月17日)
大津祭(本祭:毎年10月体育の日の前日)
イベント
びわ湖毎日マラソン
関西学生対校駅伝競走大会
朝日レガッタ
高松宮記念杯競輪
その他
日本の音風景100選:三井の晩鐘