典薬寮 (Tenyakuryo)
典薬寮（てんやくりょう）は、律令制により制定された機関で、宮内省律令制度下に属する医療・調薬を担当する部署。
職掌
典薬寮は宮廷官人への医療、医療関係者の養成および薬園等の管理を行った。
天皇への医療を行う内薬司と対を成す。
896年に内薬司を併合して朝廷の医療を掌握した。
長官は典薬頭で、典医、針師、按摩師、呪禁師で構成されていた。
また、医博士、針博士、按摩博士、呪禁博士、薬園師がおり、その下には学生である医得業生が学んでいた。
内薬司併合時には侍医・薬生・女医博士も移管された。
平安時代後期以降、和気氏と丹波氏による世襲となり、典薬頭は専ら丹波氏の小森家が独占した。
小森家は六位蔵人を兼ねたため、典薬頭であっても実際の天皇の拝診には携わらない事務職的存在となった。
また、典薬権助の地位は賀茂別雷神社の社家である藤木家が世襲したが、こちらは実際に鍼を行い、天皇の診察もする家系であった。
江戸時代に至っては、京都や諸国の優秀な民間医が官位を与えられて典薬寮医師（御典医）に登用されるケースが多くなり、典薬大允以下の役職は、典医の中から技術の優劣や年功の長幼によって選ばれた。
江戸時代の後期になると、伝統的な漢方医学に加え、伊良子光顕などオランダ医学の流れを汲む者も登用されるようになった。
明治2年（1869年）、明治維新に伴う官制改革によって廃止されたが、律令制に基づく機関の中では、最後まで設置当初の職掌を名実ともに保った稀有の存在であった。
乳牛院
乳牛院は典薬寮に付属した機関の一つ。
平安時代に設置された。
別当が総監し乳師長上に統轄された品部の乳戸が乳牛の飼育、牛乳の採取を行って皇室に供御した。
牛乳や蘇・醍醐は薬としても使われていた。
職員
頭（従五位下）
助（従六位従六位） 権助
大允（従六位従六位） 少允（従六位従七位）
大属（従六位従八位） 少属（従六位大初位）
史生 新設
寮掌 新設
使部
直丁
医師（従六位従六位） 医療
針師（従六位正八位） 鍼灸施療
按摩師（従六位従八位） 按摩施療
呪禁師（従六位正八位） 呪文等によって治療・陰陽寮に職掌を奪われて消滅
薬園師（従六位正八位） 薬園の管理
医博士（従六位正七位） 医師の養成
医生 学生
医得業生 上級学生
針博士（従六位従七位） 針師の養成
針生 学生
按摩博士（従六位正八位） 按摩師の養成
按摩生 学生
呪禁博士（従六位従七位） 陰陽寮に職掌を奪われて消滅
呪禁生 陰陽寮に職掌を奪われて消滅
女医博士（従六位正七位） 産科医養成・内薬司より移管
侍医（従六位正六位） 天皇の直属医・内薬司より移管
薬生 薬の調合・内薬司より移管
薬戸 品部・薬の栽培
乳牛院
別当
乳師長上
乳戸