吉備大臣入唐絵巻 (Kibi no Otodo Nitto Emaki)
吉備大臣入唐絵巻(きびのおとど にっとう えまき)は、日本の絵巻物の一つである。
所蔵者は、アメリカ合衆国のボストン美術館。
成立は、平安時代の後半、12世紀末頃、後白河天皇のもとで製作された絵巻の一つと考えられている。
嘉吉元年(1441年)に小浜藩の新八幡宮に疎開していたが、その後、江戸時代に小浜城主の酒井家のもとを離れ、1932年にボストン美術館に所蔵されるに至る。
概要
絵巻の内容は、大江匡房の『江談抄』に記される物語と一致しており、遣唐使の吉備真備が在唐中に幽閉され、鬼(幽霊)となった安倍仲麻呂に導かれて、皇帝による『文選 (書物)』や囲碁による無理難題を解いて、遂に帰国を達成する、というものである。
但し、現存の絵巻は、冒頭の真備が入唐して幽閉される詞書および、後半部分である「野馬台詩」の解読に成功して帰国を果たす場面は欠いている。
史実においては、真備と仲麻呂は、養老元年(717年)に共に入唐するも、仲麻呂は唐に残留し、宝亀元年(770年)に唐で没する。
真備の方は、天平7年(735年)に帰国し、天平勝宝4年(752年)に再度入唐しており、鑑真らと共に帰国している。
よって、仲麻呂存命中ではあるが、真備の2回目の入唐時のこととして描かれているものと考えられる。