康暦の政変 (Koryaku Coup)
康暦の政変（こうりゃくのせいへん）は、南北朝時代 (日本)の天授 (日本)5年/康暦元年（1379年）に室町幕府の管領・細川頼之が失脚した政変である。
室町幕府の2代将軍足利義詮の頃には守護同士が対立し、執事の細川清氏などは失脚した後に吉野朝廷に属して京都を奪還するなど幕政は不安定な状態にあった。
清氏失脚後には斯波高経、斯波義将親子が政権を持つが、佐々木道誉との対立などから貞治の政変で失脚する。
義詮死去の直前には四国地方、中国地方で南朝側と戦っていた細川頼之が佐々木など反斯波氏派の支持を得て管領に就任する。
頼之は義詮の子で幼少の足利義満を補佐し、半済令の試行や南朝との交渉などの政策を実施するが、旧仏教勢力の比叡山と新興禅宗の南禅寺との対立においては南禅寺派を支持していたため叡山派と対立し、南禅寺の住職春屋妙葩が隠棲して抗議するなど宗教勢力とも対立していた。
1376年には紀伊での南朝方の活動に対して頼之は弟の細川頼元を総大将とし派遣するが鎮圧に失敗し、成長した3代将軍義満は反頼之派の山名氏を派遣させ、また大和での軍事活動には復帰した斯波義将や土岐頼康ら反頼之派に軍勢を与える。
翌77年（天授3年/永和 (日本)3年）には義将の所領内の騒動が頼之の領地であった太田荘（現富山県富山市）に飛び火すると、頼之と斯波派、土岐、山名氏らの抗争は表面化し、頼之派から斯波派に転じる守護も現れた。
反頼之派は義満に対して頼之の排斥、討伐を要請し、近江で反頼之派に転じた佐々木高秀が挙兵すると、鎌倉公方の足利氏満が呼応して軍事行動を起こそうとし上杉憲春に諌死される事件も起こる。
義満は義将らの圧力で高秀や頼康らを赦免すると、義将はじめ反頼之派が軍勢を用いて将軍邸の花の御所を包囲して義満に頼之の罷免を迫る。
頼之は出家し、自邸を焼いて一族を連れて領国の四国へ下る。
後任の管領は義将で、春屋妙葩らも復帰する。
四国へ下った頼之は幕府から頼之追討令を受けた伊予の河野氏らと戦い、年末には赦免をうける。
弟の細川頼元は管領に就任し、頼之自身もその後幕政の中心に復帰していることから、この政変は頼之からの自立を望んだ義満の提唱によって起こされたものと考えられる。
斯波氏・細川氏両派の抗争を利用し、相互に牽制させて強大化を防いだとも考えられている。
義満はこの後には将軍直轄の軍事力である奉公衆を整備し、1391年の明徳の乱においては山名氏を、1397年の応永の乱においては大内氏を追討して有力守護を弱体化させ、幕府の支配体制を固めていく。