下人 (Genin (Low ranked people))
下人（げにん）とは近世以前の家内隷属民に対する呼称。
概説
平安時代中期以降、貴族、寺社、田堵らの家内で使役された私的隷属民の呼称として現れる。
「下人・所従」と併称されることが多い。
しかし、一般的に下人の方が所従よりも家への隷属性が強く、また、所従の称は武家においてよく利用された。
「奴婢雑人」などとも称され、売買、譲渡、相続の対象であった。
下人の子孫もまた代々主家に仕えた。
その職務は耕作、雑務、馬引きなどであり、合戦にも駆り出された。
武家の奉公人は上層を郎従（郎党、郎等）、下層を下人や所従と呼んだ。
下人所従は武士身分でないため、戦場において首を取っても手柄になることはなかった。
南北朝時代 (日本)以降、土地を与えられ自立する下人が現れるなど身分環境に変動が起こってくる。
従来譜代であった下人の奉公形態も、年季契約をもって行うものが現れた。
こうして、従来の家内従属性が薄れていった。
近世にはいると刀狩りによる名主層の否定など、農地に対する重層支配が否定されていった。
代わりに、農地の小規模独立経営を推し進める政策が採られていく。
このため、譜代相伝の下人である譜代下人は次第に姿を消していった。
替わって年季奉公を中心としたものに変わり、「下男、下女」という呼称が定着してくる。
江戸時代にも名主（なぬし）、庄屋、商人、武家において存在した。
その多くは出替奉公であったが実質的には譜代であることも多かった。