唐物語 (Tale of China)
「唐物語」(からものがたり)は、中国の故事を翻案し歌物語の形式にした説話物語集。
作者は藤原成範(~1187)である蓋然性が高く、成立は12世紀後半とされる。
内容
『唐物語』は以下の人物を主人公とする二十七の短い物語を集成したものである。
一 王子猷
二 白楽天
三 買氏
四 梁鴻・孟光
五 司馬相如・卓文君
六 石季倫・緑珠
七 宋玉
八 眄々
九 張文成・則天皇后
十 徐徳言・陳氏
十一 簫史・弄玉
十二 石と化した女
十三 娥皇・女英
十四 陵園妾
十五 武帝・李夫人
十六 武帝・西王母
十七 呂后・四皓
十八 玄宗・楊貴妃
十九 朱買臣
二十 杵臼・程嬰
二一 平原君
二二 楚荘王
二三 隠瑜の妻
二四 上陽人
二五 王昭君
二六 潘安仁
二七 犬と契った娘
『蒙求』『白氏文集』などを主要な出典とし、多くは有名な故事を題材としたものである。
なお「唐(から)」は中国を意味し、唐代以外の故事も多い。
文章は『源氏物語』や和歌の影響の強い優雅な和文体で、内容的にも原典とは細部でかなりの違いが見られる。
また、張文成(「遊仙窟」の作者)が則天皇后の愛人であったという第九話と、結婚を拒否して山中に逃れた娘が犬と交わるという第二七話は中国の原典が発見されておらず、文学史上注目すべき問題を提起している。
講談社学術文庫から全訳注(小林保治編著)が出ている。