桐壺 (Kiritsubo)

桐壺(きりつぼ)は、平安御所の後宮の七殿五舎のうちの一つ。
正式には淑景舎(しげいさ、しげいしゃ)という。
天皇の日常の御座所となる清涼殿から(後宮の内では)最も遠く、北東の方角にある。

『源氏物語』五十四帖の巻名のひとつ。
第1帖。
本稿ではこれについて詳述する。

冒頭
いづれの御時にか、女御・更衣 (女官)数多さぶらひ給ひけるなかに、いとやむごとなき際にはあらぬが、すぐれて時めき給ふありけり。

あらすじ
どの帝の御代であったか、それほど高い身分ではないのに帝(桐壺帝)から大変な寵愛を受けた方(桐壺更衣)がいた。
二人の間には、輝くように美しい皇子が生まれた。
しかし、他の妃たちの嫉妬や嫌がらせが原因か病気がちだった更衣は、3歳の皇子を残して病死してしまう。
これを深く嘆く帝を慰めるために、先帝の皇女(藤壺)が入内した。
亡き更衣に生きうつしの彼女は、新たな寵愛を得た。
一方で更衣の遺児は帝のもとで育てられた。
そして、亡き母に似ているという藤壺を殊更に慕うようになる。
帝は元服した彼を臣籍降下させ源氏姓を与えて、左大臣家の娘・葵の上の婿とする。
彼はその光り輝くような美貌から光源氏と呼ばれた。

後挿入説・後記説

本巻は源氏物語の首巻であり、源氏物語年立の上で最も早い時間軸の部分が描かれているが、続く巻である「帚木」とのつながりが悪い。
こうしたことを理由として古くは室町時代の注釈書である『源氏物語聞書』、近代に入ってからは与謝野晶子により、さらには池田亀鑑らによってしばしば後挿入説・後記説が唱えられている。
本巻と帚木との間の不整合については両巻の間に輝く日の宮の巻の存在を想定して解決しようとする説もある。

[English Translation]