羅生門 (小説) (Rashomon (Rashomon Gate, a novel))

『羅生門』(らしょうもん)は、芥川龍之介による初期の小説。
『今昔物語集』の「羅城門登上層見死人盗人語第十八」を題材にした短編小説。
羅生門とは、朱雀大路にある平安京の正門のことである。
正しくは羅城門であるが、人間の生を意識してあえて「羅生門」にしたと考えられている。
高校教科書などでも採用され、広く知名度がある。

概要

東京大学在学中の無名作家時代である1915年(大正4年)11月に雑誌「帝国文学」へ発表された。
同年には『新思潮』に処女作短編「老年」を発表しており、翌大正5年には同時期に構想した「鼻」を同誌に発表している。
1917年(大正6年)5月には「鼻」「芋粥」の短編とともに阿蘭陀書房から第1短編集『羅生門』として出版、1922年(大正11年)に改造社から出版された選集『沙羅の花』にも収録されている。
生きるための悪という人間の利己主義を克明に描き出し、又、作者の解釈を加えた作品として著名である。

最後の結びの一文はたびたび変更されている。
上述『帝国文学』の初出では「下人は、既に、雨を冒して、京都の町へ強盗を働きに急ぎつつあつた。」になっている。
短編集では「下人は、既に、雨を冒して京都の町へ強盗を働きに急いでゐた。」となっている。
現在では、「下人の行方は、誰も知らない」となっている。

なお、黒澤明により映画化された『羅生門』(1950年)は、1922年(大正11年)に発表した短編小説『藪の中』(1922年)を原作としているが、映画は本作品から舞台背景、着物をはぎ取るエピソード(映画では赤ん坊から)を取り入れている。

あらすじ

主人に暇を出されたある下人が、雨の降り頻る荒廃した羅城門の下で途方にくれていた。
いっそこのまま盗賊になろうかと思いつつも踏み切れない。
羅生門の上の樓へ入ると、人の気配がする。
それは悪事であると認識してはいるが、生活の糧を得るために死人の髪を抜く老婆であった。
彼女はそれを、自分が生きるためであり、この死人も生前、生きるための悪を働いたから、髪を抜く事は許されるであろうと言う。
老婆の行為に対し正義の炎を燃やしていた下人だったが、その言葉に決心し、老婆の着物をはぎ取る。
そして「己(おのれ)もそうしなければ、餓死をする体なのだ。」と言い残し、漆黒の闇の中へ消えていった。
下人の行方は誰も知らない。

[English Translation]