若紫 (Wakamurasaki)
若紫(わかむらさき)は、『源氏物語』五十四帖の巻名のひとつ。
第5帖。
光源氏が北山で幼い紫の上を垣間見てから二条院に迎えるまでを書く。
紫の上の少女時代を「若紫」と呼ぶことがあるが、作中でこう記されることはない。
『紫式部日記』では紫式部のこと。
「左衞門のかみあなかしこ此のわたりにわかむらさきやさふらふとうかゝいたまふ」(藤原公任が酔って紫式部のいるあたりを「私の若紫おいでですか?」といいたまう)とある。
あらすじ
光源氏18歳3月から冬10月の話。
瘧(おこり、マラリア)を病んで加持(かじ)のために北山を訪れた源氏は、通りかかった家で密かに恋焦がれる藤壺(23歳)の面影を持つ少女(後の紫の上。10歳ほど)を垣間見た。
少女の大伯父の僧都によると彼女は藤壺の兄兵部卿宮の娘で、父の正妻による圧力を気に病んだ母が早くに亡くなったそうだ。
その後、祖母の尼君(40歳ほど)の元で育てられ10余年たったという。
源氏は少女の後見を申し出たが、結婚相手とするにはあまりに少女が幼いため、尼君は本気にしなかった。
4月、病で藤壺(23歳)が里下がりし、源氏は藤壺の侍女王命婦(おうのみょうぶ)の手引きで再会を果たした。
その後藤壺は源氏の文も拒み続けたが、既に藤壺は源氏の子を妊娠していた。
一方、北山の尼君はその後少女と共に都に戻っていた。
晩秋源氏は見舞いに訪れるが、尼君はそれから間もなく亡くなってしまう。
身寄りのなくなった少女を、源氏は父兵部卿宮に先んじて自らの邸二条院に連れ帰る。
そして恋しい藤壺の身代わりに理想的な女性に育てようと考えるのだった。