鈴虫 (Suzumushi)

鈴虫(すずむし)は、『源氏物語』五十四帖の巻名のひとつ。
第38帖。
横笛の並びの巻とされている。

あらすじ
光源氏50歳の夏から8月中旬までの話。

その年の夏、蓮の花の盛りに、女三宮の持仏の開眼供養が営まれた。
飾りつけもすっかり整った御堂で、源氏は尼姿の女三宮に後に残された悲しみを訴えるが、宮はつれなく言葉を返すだけだった。
朱雀帝は、女三宮に譲った三条宮に彼女を移らせることを勧めるが、源氏はまだ若い妻を手放すのが惜しく首を縦に振らない。

秋には、女三宮の部屋の前庭を野の風情に造りかえて鈴虫(現在のマツムシ)などの秋の虫を放した。
宮は源氏の熱心な気配りを鬱陶しく思うが口に出せない。

八月の十五夜の頃、源氏が女三宮のところで古琴を爪弾いていると、蛍兵部卿宮や夕霧 (源氏物語)がやって来て、そのまま管弦の宴となる。
そこへ冷泉帝から誘いがあり、馳せ参じた源氏ら一同は明け方まで詩歌管弦に興を尽くす。

翌朝秋好中宮を訪れると、亡き母六条御息所が今も物の怪となり彷徨っていることを嘆き、出家したいと源氏に漏らす。
源氏はこれを諌め、追善供養をなさるようにと勧めるのだった。

備考
現在発行されている日本銀行券の裏の左側に描かれているのは、『源氏物語絵巻』の「鈴虫」その二の絵の一部(左が冷泉院で右が光源氏)と詞書の上部(「十五夜の夕」暮れに仏の御前「に宮おはしては」し近く…)。
二千円札では縦書きの詞書の上半分でカットされているため、文章が読めなくなっている。
(参照:)

『源氏物語』の英訳本The Tale of Genjiにおいて、訳者アーサー・ウェイリーはこの「鈴虫」だけ翻訳を抜かしている。
理由は不明。

[English Translation]